大勢の観光客が押し寄せるヴァチカン美術館。いくつかのガイドツアーの1つに、「トリオンファーレ通りのネクロポリ(necropoli、共同墓地)」がある。
ガイドさんについて、美術館にふつうに入るのと同じ入口から入って、エスカレーターを上がり、そこで案内に従ってテラスから外へ。
ここから、さりげなく、でも実はものものしく、2人の警備員に囲まれながらツアーがスタートする。ローマの町を見渡しながら、ヴァチカン市内の「町」へと坂道を下り、スーパーや駐車場の横を通って鍵のかかった入口へ。
中へ入ると、ほんとにこの地下の空間に、まるまるというのか、延々と発掘現場が広がっている。ここが最初に発見されたのは、さきほど見たなんてことない駐車場の地下で1950年代のこと。このガイドツアーで見学できるのは、ほんとについ最近、21世紀に入ってから調査された部分。地下で雨風にさらされていないということもあるが、一般公開の設備も整えられたのは2013年12月とつい最近のため、明るく、しかもきちんと整理整頓されているのが、予想外でまぶしい。
同じヴァチカン内のネクロポリでも、ここから500mくらい先にあるというサン・ピエトロ大聖堂の下は、そこに聖堂が建つ元となった、聖ピエトロをはじめ、紀元後数世紀の間に殉教した、つまり、キリスト教信仰を貫いたために迫害され、殺された人々の墓地が残っているが、こちらは異教徒、つまりキリスト教徒でない人々の墓地で、紀元後1-4世紀のもの。
死後の復活を信じ、したがって死者をそのまま埋葬するのが習慣となったキリスト教徒と違い、もともとローマでは火葬が主流だったとされる。そしてここでは、火葬して埋葬された人々のいわゆる骨壺と、そのまま埋葬された人の骸骨が、まさに隣り合っている。
1つ興味深いのは、テラコッタで作られた竹筒のようなもの。上に小さな穴がいくつかあいているのだが、これは(私の理解したところ)、なにか流動食のようなもの中に入れ、死者に供えたのだそう。(といって、その「筒」がうまく撮れている写真がない・・・涙)ガイドさんがトゥビルムとかなんとか呼んでいたのだが、自分のメモの字が汚すぎてわからなくなってしまった!どなたかご存知でしたら教えてください。
一種の墓碑。生前の職業がレリーフ、まさに「浮き彫り」になっている。
ローマ(やイタリア)で「集団墓地」というと、カタコンベ(Catacombe)が一般によく知られるが(例、
ナポリのサン・ジェンナーロのカタコンベ)、カタコンベは岩盤の柔らかい土地を利用して、もともと地下に穴を彫って墓地としたもの。お金持ちのファミリー用のアルコソリウムと呼ばれる部屋型埋葬地から、財を持たない人向けの埋葬用の棚が並ぶ廊下まで、すべて地中で、まさに蟻の巣のようにつながっているのが特徴だが、このネクロポリは同じローマ時代でも、町の城壁の外に作られた集団墓地で、やはり同じようにお金持ち用、そうでない人用、いろいろあるもののの、それぞれが小さな小屋のようなものを建てて死者を葬ったらしい。
再現図などで見ると、ちょうど川辺のキャンプ場にバンガローが並んでいるような感じ。お金持ち用の小屋の中はカタコンベ同様、いやそれ以上にフレスコ画や大理石、彫刻などで装飾されており、形も洞窟でなくほんとにレンガを積んで建てた「小屋」なだけに、ローマ時代の家のミニチュアのよう。実際、ここが発見されたときには、ポンペイに匹敵するとも言われたそう。
石棺ほか、ランプなどの埋葬品もいくつか、この中に展示されている。
作業はまだまだ、続いている・・・。
見学は、ガイドツアーのみ。
ヴァチカン美術館のサイトから予約可能。
トリオンファーレ通りのネクロポリ
Necropoli della Via Triumphalis
http://www.museivaticani.va/
11 aprile 2014