ブログトップ

ヴェネツィア ときどき イタリア

fumiemve.exblog.jp

ストラビンスキー「放蕩児の遍歴」@フェニーチェ劇場

a0091348_7195032.jpg


著名なソリストが「太り過ぎ」を理由に降板させられたり、演出で「ヌード」になるというので話題になったり。最近はオペラの歌手といえども大変だなー、なんて思いながら最初は観ていた。地元ヴェネツィア出身のダミアーノ・ミキエロット監督による「放蕩児の遍歴」は、そこまでではないにしても、ごくふつうのクラシック・オペラ好きからすると、十分に過激な演出。確かにリアルではあるけれど、そこまでしなくてもわかるのに・・・。



a0091348_7195360.jpg


マジメに働く気のないトムは雇い主の娘、アンと相思相愛の中。身分違いの恋と言えばそうなのだが、お話はいきなり、不思議な方向へ。突然、ニック・シャドウと名乗る男が現れ、トムの「おじさん」が亡くなって、トムは莫大な遺産を受けつぐことになる、という。手続きのために、今すぐロンドンへ、と言って連れていかれた先でトムは、ニックの導きで享楽の世界へ引きづり込まれていく。
音沙汰のないことを不安に思いアンが探しにきたときには、トムはひげをはやした謎の美女ババと結婚していた。

a0091348_7204198.jpg


そうか、総合芸術とはいえオペラはあくまでも、歌や音楽先にありきで、演出や衣装、演技はそれに付随するものだと思っていたけれど、これは完全にその逆らしい。いっそ、派手でけばけばしいステージに、歌や音がついている、と思ったほうがいいかもしれない。彼らの迫真の演技に関心しつつ、ある意味腹をくくって舞台を「観て」いた。

a0091348_7204441.jpg


それはそれで、だからそれなりに楽しく鑑賞していたのだが、驚いたのは休憩のあと。第3幕、第2場に入って、それが見事に逆転する。最初の出会いから1年と1日後。その時の約束通り、必要なだけの支払いをしてもらうとトムに迫るニック。2人が対峙するのは、さきほどまで享楽の象徴であったプールの底。ニックが欲しいのはトムの魂。ニックは、自分が引くトランプのカード3枚、見事に当てたら命は助けてやろう、と言う。
暗い闇の底での、男二人の掛け合い。絶望と怯え、焦りと怒り。
賭けに勝ったはずのトムを待ち受けていたのはしかし、さらに過酷な現実だった。

すっかり精神を痛め、精神病院に入れられたトム。自らをアドニスと信じ、ヴィーナスを待ち続ける。変わらぬ愛で、彼を訪ねてくるアン。だがもはやその思いが通じ合うことはない。
ここは歌が全て。合唱とトム、監視員とトム、合唱とアン、交じり合うことも、追っかけ合うこともない、二重唱になりきれないアンとトム。そしてアンと父。
そう、歌が全て、だが実はここで、最初はうるさいくらいだった「リアル」な演出が二重に効いている。その場の、精神病院という環境そのものについて、また、記憶に残る過剰なまでに華やかな過去との対比として。

a0091348_7204887.jpg


イーゴル・ストラビンスキー作曲のこの作品、1951年5月11日に、このフェニーチェ劇場で初演された。

(写真はすべて、公式ページから拝借した。)

Rake's Progress

Trulove Michael Leibundgut
Anne Carmela Remigio
Tom Rakewell Juan Francisco Gatell
Nick Shadow Alex Esposito
Mutter Goose Silvia Regazzo
Baba Natasha Petrinsky
Sellem Marcello Nardis

Keeper of the Madhouse Matteo Ferrara
指揮 Diego Matheuz
監督 Damiano Michieletto
舞台 Paolo Fantin
衣装 Carla Teti
照明 Alessandro Carletti

フェニーチェ劇場管弦楽団および合唱団
合唱指揮 Claudio Marino Moretti
www.teatrolafenice.it

3 lug 2014
[PR]
by fumieve | 2014-07-04 07:25 | 聞く・聴く
<< ここはローマ!?・・・〜クロア... 第14回建築ビエンナーレ〜14... >>