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ヴェネツィア ときどき イタリア

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プロセッコの里で

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ヴェネツィアから50kmほど北へ上がると、それまでのだたっ広い平野部から、やがてアルプスへと向かう間の辺り、緑に覆われたゆるやかな丘陵地帯になる。その緑の多くはぶどう畑。辛口の発泡白ワイン、プロセッコ(Prosecco)の産地の中でも特にDOCG(原産地認定)の「コネリアーノ・ヴァルドッビアーデネ(Conegliano Valdobbiadene)」として知られる地域である。ヴェネト州トレヴィーゾ県、合計で約20,000ヘクタール、15市がその中に含まれる。
ちなみに、今年、同じイタリアでピエモンテ州のランゲ、ロエロ、モンフェッラート(Langhe-Roero e Monferrato)という地域が、ユネスコ世界遺産に認定されたが、このプロセッコ地域も公式サイトによると、ユネスコ登録を目指しているらしい。



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確かに風光明媚なそのエリアの中で、ほぼ中央部にあたるレフェントーロ市(Refentolo)で、8月2日(土)夜、雨のために土砂崩れが発生。「人々の祭り」で地元民が集っていた大きなテントを濁流が襲い、4名が犠牲に、20人近くが負傷する惨事となった。

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今年はともかく、雨が多い。
まず冬も、あまり冷え込まず暖冬だった割にひたすら雨が多かった。早く春がきたと思ったらそのあともまた雨が多くて、いつもならすぐに初夏から真夏になるのに、少し暑くなったと思うとまた大雨で気温も下がる・・・冷夏で、素人としても、トマトや野菜、果物、そしてブドウの収穫が心配になるほどだった。

今回の直接の原因は、近郊の山間部での集中豪雨。だが、この土地の代名詞でもあるプロセッコが、事故の間接的要因になっているのではないか、と現在捜査が進められている。

口当たりがよく、どんな料理にも合いやすい上、上質なものでも比較的リーズナブルな価格のプロセッコは、地元関係者の努力もあり、近年、世界的なレベルで人気と需要が高まっていた。不況不況と嘆くイタリア経済において、ワインは数少ない期待産業だが、その中でも間違いなく牽引役の1つとなっている。

作付け面積と、製造者が増えているのはなんとなく聞いていたが、改めて数字を見て驚いた。
ヴェネツィアの地方紙、ラ・ヌォーヴァ(La Nuova)によると、
2003-2012年の10年間で、作付け面積は50%増(15市)、
生産量(瓶詰め)で74.2%増、
とくに、DOCG(産地指定品)はほぼ倍増の98.6%増、
関連農業従事者は、2013年が3,238人で、2011年との比較で10%増。

「コネリアーノ・ヴァルドッビアーデネ」プロセッコDOCG組合における昨年2013年の実績は、
生産量で、75mln 本
生産者、164社
作付け面積、5,896ヘクタール

とある。
同紙によると、DOCG組合会長のイノチェンテ・ナルディ氏は、標高50-500mの丘陵地帯である同エリアでのぶどうの作付け、栽培、収穫はすべて昔ながらに手作業で行なうため、工業生産のそれとは比べ何倍も手間とコストがかかること、一旦何か起こればその全てが失われる危険があり、従って、新たな作付けも厳しく管理していること、・・・と主張している。が、このあたりは、粘土地が砂地で覆われた地質のため、もともと大雨などにより地滑りなどが起こりやすいという。同じ生産者の中からも、開発がやや行き過ぎたのではないか、という声も上がっているほか、開墾時の必要条件である水路の整備などが行なわれていなかった可能性などもあるらしい。

その昔、古代ローマが地中海の覇権を手中にしたとき、主食である小麦粉は「穀倉地帯」エジプトから届くようになったため、ローマに近いシチリアでは、小麦よりもお金になるワイン、つまりぶどうの生産にシフトしていった。その結果、数世紀の間にシチリアはすっかり「乾いた」土地になってしまった、と、どこかで読んだことがあるような気がする。植生にも、地質学にもまったく疎いので、それが事実なのか何か私の勘違いだったかも定かでない。

だが、たとえ直接の原因はやはり天災だとしても、そこに人災が加わってはいないのか、ぜひともきちんと、捜査というよりは調査を実施してほしいと思う。太陽の光と水に恵まれた、ぶどうの生産に適した緑の地を、目先の利益に捕われて枯らしてはならない。

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事故の起きたレフェントーロは、クローダの小水車(Molinetto delle Croda)と呼ばれる、16世紀の水車で知られ、また、この地で作られるパッシート(passito di Refentolo)というデザート・ワインは、モーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァン二」にも登場するらしい!
今回の惨事が起きたのは、町のシンボルでもある、この水車を見渡す一角だった。

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犠牲者の方の冥福を祈りつつ、同じ過ちを繰り返すことのないよう、公正な判断を心より望む。

一番下の写真、および地図は、http://www.prosecco.it/ より、残りは、www.repubblica.it より拝借した。

5 agosto 2014
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by fumieve | 2014-08-06 06:49 | ほかのイタリア
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