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ヴェネツィア ときどき イタリア

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広場の調べ

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Note in Campo
Venezia, Rio Terà del Forner

Trio Malibran
Igor Delaiti, fagotto
Francesco Socal, clarinetto
Alessandro Toffolo, clarinetto

W.A. Mozart

Divertimenti in Trio
(Detti anche serenate) KV 439b
per due clarinetti (corni di bassettto) e fagotto
2つのクラリネット、ファゴットのためのディヴェルティメント(またはセレナーデ)LV439b
N°3 変ロ長調
N°4 変ロ長調
N°5 変ロ長調

Variazioni potpourri sulle arie dell’Opera “Cosí fan tutte”
オペラ「コジ・ファン・トゥッテ」のアリアより、木管3重奏のためのヴァリエーション

ヴェネツィアで、夏の間いろいろ企画されている、「広場で○×」というシリーズの一環。
広場での演奏、というのでてっきり立ち見かと思っていたら、ちゃんと椅子が並べられていてびっくり。ビエンナーレ、ジャルディーニ会場のすぐそば、旧温室の裏にあるここは、Campo(広場)といっても、少し広い通路、といった感じ。
ところがところが、音響的にはこれ以上はそうそう望めないのではないか、というくらいよかった。後ろはレンガの壁、前は4,5階建てのアパートに挟まれているから、多少は響いているのだろうが、それがほとんど気にならないくらい。よくある、教会でのコンサートはエコーがききすぎてワケがわからなくなることが多いが、ここは完璧。弦やほかの楽器ではまたどうなるかわからないが、この木管のやわらかい響きを、吸収しすぎず、跳ね返しすぎず、やさしくそっと包んでいるよう。耳と体にほんとうに心地よかった。もっとも、演奏しているほうは、最初は暗闇(途中で、照明にあわせて向きを変えた)、後半は楽譜を吹き飛ばすほどの風に苦労していたようだが。

曲名のディヴェルティメント、というのは本来「楽しみ」といった意味だが、プログラムによると、モーツァルトはまさに、友人や家族、親しいものたちの間で楽しみに聴く(演奏する)音楽として作ったのがこのシリーズだそう。いずれも、アレグロ、メヌエット・・・など5つの小さな楽章からなる。確かにモーツァルトらしい軽くて心地よいメロディーに、アドリブっぽい遊びがあったりする。
全て変ロ長調なのは、まさにクラリネットやファゴットでの演奏を簡単にするため。

こうして聴いていると、つくづくクラリネットの音ってやっぱり好きだと思うが、そういえばファゴットをこんなにまじまじと聴いたのは生まれて初めてかも。正直のところ、オーボエの音というのはちょっと意地悪っぽくてあんまり好きではないけど、ファゴットの深い音はなかなかいい。こういう、地味な(かつ難しい)楽器は、誰がどういうきっかけで始めるのだろう?と思っていたが、こんな曲を楽しそうに吹いている姿を見たら、興味を持つ人もいるだろう。これからしばらく、オーケストラでもファゴットに注目してしまうかもしれない。

通路みたいな広場だから、時折人が通る。そのまま足をとめる人。そうでなくても、足音をひそめる人。すぐ上の窓から顔を出して聴いている人。窓をいっぱいに開け放した家。イタリアではたいてい、住宅地の中を通ると、開け放された窓からボリュームいっぱいのTVの音が聴こえるのだが、今日は事前に了解を求めたのだろうか。不思議なくらい、静謐な空気を保っている。
30席ほどあった椅子もいっぱい、いつのまにか地べたに座り込んで聴いているグループの輪がたくさんできていた。

22 lug 07
by fumieve | 2007-07-23 08:36 | 聞く・聴く
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