Ecce Mater tua.
Ensemble laborintus,
direttore Michele Pozzobon
Basilica Patriarcale di S.Marco, Venezia
Gregoriano
Attende Domine
Giovanni Pierluigi da Palestrina(1524/25-1594)
Veilla Regis
Gregor Aichinger(1564/65-1628)
Virginalia. Laudes aeternae Virginis Mariae
Gregoriano
Christus factus est
Gregor Aichinger
Virginalia. Laudes aeternae Virginis Mariae
カルネヴァーレが終了して、四旬節(quaresima、クアレジマ)に入った。復活祭の前の40日間、復活祭がキリストの死後の復活を祝うもの、ということはその前にあたるこの期間は、すなわちキリストが十字架を背負ってゴルゴダの丘へ上がり、磔刑を受ける「キリストの受難」の時期。カトリックでは、クリスマス、復活祭の間の、祈り・悔恨の大切な期間である。
信者ではないので特に肉断ちもしなければ、最近はミサにもめったに行かないが、サン・マルコ大聖堂でゴレゴリオ聖歌の合唱があるとなれば、聞き捨てならない。
キリストの冤罪からマリアの嘆きまで、聖書の句と、法王の言葉をはさみながら讃歌が歌いあげられていく。
ほんとうは、「ステレオ効果」を狙って作られたという、中央の祭檀上部、左右に分けられたテラス合唱席での歌が聴けるのかと思って期待して行ったら、普通に祭檀前にぞろぞろっと合唱団が出てきてちょっとがっかりしたが、10数人の歌い手さんでは、左右に分けるほどのこともないのだろう。
が、最初の一声を聴いて、飛びあがるほどびっくりした。その音響効果のすばらしさ。歌声が前から届くのでなく、天から降りてくる。まさに天使の声。大きなクーポラできれいに増幅されるのだろう、が、エコーというのとも違う、音が跳ね返るのではなくて、膨らんで空気に溶けて空間を包みこむ感じ。その、とてもこれが同じ人間の声とは思えない「音」は、やはり聖堂の中で荘厳に響くパイプオルガンの音に一番近い。
Ensemble Laborintusというグループ、著名なオペラ歌手の声などとはもちろん全然違うものだろうが、おそらく、このクーポラの下での、声の出し方を心得ているのだろう。決して大きな声でない、むしろボリュームは抑えた声なのだが、ふわりと空気に乗せて浮かべる、そのコツを知っている。
夕方、照明の入った聖堂内は、実は観光で昼間入るよりもずっと明るく、自慢の黄金のモザイクを惜しみなく見せている。ちょうど、「キリスト磔刑」「復活」の絵のモザイクの真下あたりに座って、天使の声にしばし酔った。
(あまりの心地よさに、途中ついウトウトしたことも白状したい・・・)
復活祭までの日曜日の夕方、オルガン・コンサートなどが続くらしいので、ヴェネツィアで都合のつく方はぜひ。入場もちろん無料。ミサではないが、宗教行事の一環だということだけお忘れなく。
8 febbraio 2008