スプリッツ(Spritz)。
ヴェネツィアをはじめ、パドヴァ、トレヴィーゾなど、ヴェネト州一帯に見られる(そしてほかでは見られない)赤~オレンジ色の飲み物。日本や、イタリアでも別の地域からきた目ざとい人によく「あれ何?」と聞かれる。
そんなローカルな飲みものながら、ヴェネツィアでは若い学生たちから年配の方々まで、あらゆる人々があらゆる時間に、このオレンジ色の液体のグラスを握っているから、外から来ると確かに不思議な光景なのかもしれない。
スプリッツと呼ばれるこのカクテルは、水、プロセッコ(prosecco、トレヴィーゾ県産の発泡辛口白ワイン)に赤いリキュールを混ぜた、食前酒。リキュールは、アペロール(Aperol)が一番一般的だが、好みにより、セレクト(Select)、ビッテル(Bitter)など。そこにレモンが1切れ、そしてオリーブの実が1つ入っているのが標準。
食前酒の扱いで、食事のときは飲まない。基本的にはバール(bar)で飲む。だから、コーヒーか、水か、ジュース、またはスプリッツ・・・そんな位置づけか。
飲むのはだいたい午前中からお昼前までと、(食後すぐにはやはり飲まないから)午後3時過ぎくらいから夕食前までが原則。
たまに、バーカロ(立ち飲み屋)で、おつまみを片手に、もう片手にスプリッツのグラスを持っている若者などを見かけることがあるが、スプリッツは、一緒に出てくるポテトチップやスナック、せいぜいピーナツぐらいをつまむぐらいがいい。というのも、この味、なぜか「おかず」にはあまり合わないから。
夕食を取らずにだべっている学生たちなどは、これを遅い時間までチビチビ飲む。
ワインは、イタリアではちょっとオヤジっぽい。それに、食事なしで杯を重ねるには、酔いすぎる。ビールのほうがカッコいいけど、胃がタプタプになるし、ちょっとオトコくさい。食事には合わないが、逆にそれ以外ならいつでも飲んでいい、安上がりで気楽なスプリッツは、わいわい、がやがや、だらだら・・・と、とりとめもないおしゃべりのおともにちょうどいい。
スプリッツのないところでは、そんなとき何を飲むんだろう???
26 febbraio 2008