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ヴェネツィア ときどき イタリア

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ヴェネツィアの床

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Pavimento veneziano, “seminato”

私の住むアパート、ほんとに小さな1Kだが、その床の半分は、いわゆる「ヴェネツィア風」。正式にはセミナート(seminato、種をまいた、というような意味)と呼ぶらしい。細かいものを落としたら最後、探すのにかなり難儀するほか、掃除いらず・・・とはいかないが、少々汚れていても気にならないのは、利点というべきか、欠点というか・・・。
一種のセメントというか石の粉を練ったもの(つなぎ、赤茶っぽい部分)を敷き、その上に大理石などの色石の破片をびっしり並べ、乾いてから上を研磨して平らにする。
石の破片を使うから、大きな大理石のタイルを敷き詰めた床に比べ、一見、安上がりに見えるが、実はとてつもなく手間がかかる。
で、なぜそんな手間がかかることを・・・というと、これが実は、ヴェネツィア特有の、耐震構造。ヴェネツィアでは地震はない(ということになっている)が、ここはそもそも泥の中に杭を打ち込んで、人工的に作り上げた土台に、建物を乗っかっている。ちょっとした構造のブレなどに適応しやすい「柔らかい」床、柔よく剛を制す、というわけ。
パラッツォ・ドゥカーレ(総督館)を始め、あちこちの貴族の館などで、建物内外の建築様式は時代によりさまざまななのにも関わらず、この床が使われているのは、好みだけの問題ではない。(ヴェネツィア人の伝統的に色石好みなのも反映されていると思うが。)
ヴェネツィアの建物は、構造を軽くするために、通常、梁は木を使うし、先日伺ったお宅は500年ほど前の建物で、一部「竹」も使われていたことがわかったらしい。外壁にも、「なんちゃって大理石」を使用するなど、特殊事情に対応した特殊工法があちこちに見られるのだが、セミナート床も、その1つ。

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ちなみに、この家の台所部分の床は、似たようで非なるもの。
これはセミナート風だがタイルだから、あらかじめ工場で作ったのもを運んできて貼るだけだから、工事の手間は全然違う。




セミナートは、無造作なようで、色をそろえて模様を作ることもできる。私の家に残っているのは、残念ながらこの縁取りだけ。

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一方遠目には目立たないが、ひびの入ったところもあれば、石が欠けてしまっているところもある。
一度、パラッツォ・ドゥカーレで直しているところを見たことがあるが、その気が遠くなりそうな作業に改めてびっくり。もっとも、修復作業というのは、どんな分野でもおそろしく気の遠くなる作業ばかりだが。


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この建物とこの床が、いつごろのものか詳しくは知らない。ただ、1500年の有名な地図には載っていないし、せいぜい18-19世紀の建物ではないかと思う。ヴェネツィアでは中くらいの古さというべきか。内部は改装されているから、床はひょっとしたらせいぜい数十年前のものかもしれない。
長い長い年月を生き伸びてきた建物に間借りするものとしては、せめてこれ以上破損しないように気をつけて暮らすことと、ときどき水ぶきして、軽くワックスをかけることくらい。

3 luglio 2008
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by fumieve | 2008-07-04 16:43 | ヴェネツィア
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