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ヴェネツィア ときどき イタリア

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カノーヴァ彫塑館、ポッサーニョ

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Museo Gipsoteca Canoviana
Possagno
www.museocanova.it

期待通り、光にあふれていた。
どうしても、一度は見に来なくては、と思っていた。

先日のクイズの答えは、ここ。ヴェネト州の「珠玉の町々」、バッサーノ・デル・グラッパやアーゾロに近い丘陵地帯の小さな町、ポッサーニョ(Possagno)。
遠くても不便でも、バスを間違えても、やっぱり来た甲斐があった。

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「スカルパ窓」と私が勝手に命名した、建物の角のキューブ型に切り取ったようなガラス窓から光がさしこんで、中の空間を明るくしている。静かに並ぶ彫刻たちに、命を吹き込むように、やわらかな光が当たる。その角度が少しずつずれていき、冷たいヴィーナス神が、砂浜で日光浴をする若き女性へと、彫刻たちの印象もまた変わっていく・・・。


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ヴェネツィア、ローマで活躍し、ナポレオンにひいきにされた、ネオクラシックを代表する彫刻家、アントニオ・カノーヴァ(1757-1822)。ポッサーニョに残るカノーヴァの生家が、絵画館(ピナコテーカ、pinacoteca)ならぬ彫塑館(ジプソテーカ、gipsoteca)になっている。彼の作品の多くは半透明に輝く白大理石の彫刻や浮彫だが、それらの作品の石膏による制作前のモデル、あるいは制作後のコピーなどを所蔵する。
この博物館は、もちろんそれだけで十分な資料的価値を持つが、さらにその存在を有名にしているのは、ヴェネツィア出身の建築家カルロ・スカルパ。

20世紀のイタリアを代表するカルロ・スカルパは、もちろん建築史的にみて、イタリアにおいて欠かせない名だが、美術史サイドから見ても重要なのは、イタリア全国、数多くの美術館・博物館の増築・改築を手掛けていること。よく知られる、ヴェローナのカステルヴェッキオ美術館とともに、イタリアの博物館学には必ず、この彫塑館が出てくる。
そのためか、ここはスカルパが一から設計したもの、と私は勘違いしていたのだが、彼が携わった他の多くの美術館と同様、既存の建物、特にこの場合は既にカノーヴァの彫塑館としてあったところの、増改築だった。


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1836年、カノーヴァー彫塑館として最初に完成した展示室(Sala Basilicale)は、バジリカ風に壮大で威厳のある空間。縦に長く、高い天井。両側に巨大な彫像が並ぶ様子は壮観である。・・・が、文字通り「古典的」だ。



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一方、右手にある「スカルパ翼」(Ala Scarpa)に目を移すと、そこにはモダンで明るい世界が広がる。天井も低く、そう広くもない空間の中で、彫刻たちが光に包まれている。
同じ彫刻家の作品、すぐ隣に接しているからこそ、スカルパの天才ぶりがより際立つ。「スカルパ窓」をはじめ、ひし形に切った階段の断面やガラス・ケースの足など、細かいところまでこだわったスカルパらしい建物でありながら、それはあくまで、彫刻作品という主役を引き立てるためにある。ここでは、彫刻たちがなんと静かで美しく見えることか。カノーヴァーの、優雅で軽やかな彫像たちの美を、最も多く引き出しているのではないか。

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ただし、庭に向けて全面ガラス張りのはずの部分が、工事のために完全にふさがれていた。そこからも当然光が差し込むはずで、その効果を味わえなかったのは残念だった。9月ごろには取っ払われるかも?・・・とのことだったが、疑わしい。

カルロ・スカルパの正方形や正円といった、幾何学的な形をモチーフに、無駄のないすっきりと明るくモダンな空間は、実は我々日本人にもっともなじみやすいのかもしれない。それでいて、縁取りや段差など、ちょっとしたところに「遊び」を取り入れていたり、コンクリート、鉄、ガラスに大理石や木材など、異質な材料を取り入れてアクセントをつけていたりするのが特徴。階段のあしらいなど、21世紀現在はバリアフリー規制にひっかかって、実現できないであろう箇所もいくつかあるが、50年たった今でも「モダン」に見えるから不思議。
スカルパについては、今までにもう何度も書いているつもりでいたが、そうでもなかった。
辛うじて写真を載せていたのは、トリエステ・レヴォルテッラ美術館と、ビエンナーレ会場のヴェネズエラ館(上から3番目の写真。緑の見えているところが窓)。
そのうち一度まとめて紹介できれば、と思う。

館内撮影禁止だったため、写真はここからお借りした。 www.cisapalladio.org/

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16 luglio 2008
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by fumieve | 2008-07-17 07:38 | 見る・観る
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