ヴィスコンティ城、トレッツォ・スッラッダ
8月24日まで
開館は、土・日、および15日(祝・金)
Lo specchio dell’Arte
Castello Visconteo di Trezzo sull’Adda
Rika Akahori, Maiko Asada, Yuka Imai, Kazumi Kurihara, Kaori Miyayama
26 lug – 24 ago 2008
www.trezzoturismo.it
ミラノ、地下鉄B線(緑)の終点、Gessate駅から畑の中をバスで走って30分。
Trezzo sull’Adda、川に面して中世の城が残る小さな町、その城の敷地内で、ミラノ在住、日本人女性現代美術家5人による、小さな展覧会が開かれている。
「芸術の鏡」。
石積みの塔を横に見上げつつ、おそらく18世紀のものという小さな建物に入る。
緑を透かして光の差し込む明るい部屋、同展のポスターと、赤堀里夏さんの作品、Armonia(ハーモニー、の意)の一部に迎えられる。
そのまま左手へ入ると、赤堀さんのインスタレーション。
ほとんどが白の空間の中に、赤、黒、そして緑のアクセント。非対象の中の整然。無の中の遊び。華道のよう、と思ったのは、たまごのように並ぶ陶器が、草月流で使う花器にちょっと似ているから。おそらく西洋人から見ると、非常に日本的な作品に見えるだろう。床に敷かれた白い砂も、こちらでおもちゃ屋などで売っている、「Zenガーデン」を思わせる。
有無を言わさず、全く違和感を感じずに作品の中に入り込める。
同じ1階の、反対側の部屋は、浅田牧子さんによる作品群。フランスのSF作家、ジュール・ヴェルヌの「地底探検」にインスピレーションを受けたという、絵画4点、彫刻1点を展示する。
2階へ上がる。
明るい広々とした部屋、手前が栗原和美さんの作品3点。印象派の静物画を再現したようなテーブル、プラスチックで透明なトルソと、赤い針金で作ったトルソ(心臓部にクリスタルがぶらさがっている!)。
アッカデミア(美術院)を出た後、大学で哲学を学ぶというアーチストは、「現実は、イデアの影である」、というプラトン的哲学を表現した。
奥に漂流する、新型アンテナのような作品は、今井由佳さんによる、La forma della mia vita(私の生活のかたち、の意)。
自らの生活を3つの要素、lavoro(仕事)、studio(学習)、gioia(娯楽)に解析、昨年10月から取り始めた記録をグラフ化したのが壁にかかる作品、そのうちの2枚を立体で表現したのが2つのアンテナ。「目に見えないもの」をどう「目に見える」ようにするか、約1年かけて試行錯誤した結果、今回の作品が実現した。3つの要素がバランスよく入っていれば、この三角は限りなく、地面と平行に近づくという。実際は、シゴトに傾いていたり、ゴラクに傾いていたり。それがそのときの「私」。
のびのびと、野外展示でも見てみたい作品。
隣の暗い部屋の展示は、宮山香里さんによる、Soda。天井から下がる2枚の薄布に、スタンプされた鳥たちが舞う、薄布の間には開いた鳥かごからは、古い本を切り抜いた粒々が降る。夏らしい、幻想的な世界を表現した。これも、日本的情緒を感じさせる作品といえる。
光の関係で写真がうまく撮れず、本来の美しさが写真では伝わらないのが残念。
ミラノ市内からはちょっと不便なのが難点だが、近くには、20世紀初頭の産業都市群として世界遺産指定の町もあるらしい。この8月、もしミラノにいて、週末にぽっかりと時間があったら、ぜひとも訪ねてみてほしい。
2 agosto 2008