駅を降りると、広い芝生の中の一本道の向こうに、城壁があった。
ぼうぜんと見とれて、それから写真など撮っているうちに、同じ電車から降りた数人の人々があっという間に消えていく。・・・壁の間に吸い込まれるような一本道をたどる。
え!?・・・いきなり行き止まり?・・・そんなまさか、あの人たちはどこへ???
右側にぽっかり空いた入口(?)は、私の身長(165cm)ぎりぎりな上に、アーチの頂点部からひっきりなしに水がしたたっている・・・うーん。
まるで、なんとかワールドや○×ランドへ向かうかのような気分にひたりつつ階段トンネルを通って・・・
抜けたところは・・・
またもう1つの入口に向かう一本道だった・・・。
悪い冗談みたい。その階段をもう1つ上って・・・
今度こそ目の前に、町があった。
大聖堂らしき白い教会と、ベージュ色の建物はいかにもトスカーナらしい。が、1つ不思議なのは、城壁の上だから町が一段下に見えていて、両側には広々とした道・・・つまり城壁の上の道が開けていること。それが、城壁の上の「通路」なんてものではなく、車道に歩道もついた立派な並木道になっている。
このルッカの城壁はフィレンツェからの攻撃から町を守るために、1544年から1645年の間に建造された。全4195mがそのまま完全な形で残っており、その上を通って一周することができる。
町の中をふつうに観光しているうちに、朝方のあやしい雲がすっかり消えて(1番上の写真は実は帰りに撮ったもの)、気持ちのいい青空になったので、城壁ウォーキングをしてみることにした。
城壁、といっても内側から見るとそんなものものしいものではなく、ちょっとした土手程度。上に上がるのは簡単で、結構あちこちに階段やスロープがある。そして、歩行者&自転車専用通路かと思ったが、部分的にどうやら自動車も通行可能なよう。
美しい瓦屋根の、建物がびっしり並ぶ壁の内側と、緑の芝生の向こうに、のんびりゆるやかな住宅や、その向こうにやはりゆるやかなトスカーナらしい丘陵地帯が見える壁の外側と、きょろきょろと気が散りながら歩く。
1人、または数人の歩行者たち、犬の散歩、ジョギング。または自転車の人に次々出会う。また、あっちをうろうろ、こっちをうろうろとチドリ足歩行の私は、どんどん後ろから来る人々に追い抜かれていく。ふつうの格好に見える奥様方も、足元はスニーカーだったりする。こんなすてきなコースがあれば、毎日のウォークングやジョギングもやる気が出そうで、この町の人々はきっと健康率が高いのではないか?と思ってしまう。そう、何が面白いって、城壁の「上」であるはずなのに、そこが立派な並木道になっていること。
ところどころにある、元の要塞ポイントは、今は大きな木が植わっていたり、公園になっていたり。
歩いているうちに、そういえばルッカといえば・・・の、塔の上の空中庭園が、遠くに見えた!!!写真中央、レンガの塔の上に、大きな木が2本生えているのがわかるだろうか?
小一時間かかって、ようやく1周したところで城壁を降りる。ここでいったん腹ごしらえをしたあと、やっぱり気になるあの塔に行ってみることにした。下からは見えないのかもしれない、と思ったのだが・・・
あ!あった!!!心配ご無用。
しかも、入場料を払えば、ちゃんと上まで上ってみることができた。
階段を全部で軽く10階分以上は上がっただろう。ただ、下から上まで開口部が多くかなり開放的なので、ほかのイタリアの一般的な塔に比べて、閉所恐怖症の私にはかなり楽だった。逆に高所恐怖症の人にはちょっと怖いかもしれない。
息を切らしながらてっぺんに上がると、そこはもちろん、360℃パノラマの世界が広がっていた。ある意味、イタリアらしい風景。
・・・ただしそこに、木がなければ。どうなっているのかと思ったが意外にも簡単なことで、塔の屋上にレンガで一種の鉢が2つ作ってあり、そこに木が植わっていた。遠くから2本に見えた木は、もっとたくさんあった。
それにしても、やっぱり、変・・・。
不思議な空中庭園の町ルッカ、町の中も実は大変気に入って、とてもとても一度では書ききれないので、また別に紹介したいと思う。
9 marzo 2009