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ヴェネツィア ときどき イタリア

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「/italics/1968-2008年、伝統と改革のはざまのイタリア美術」展

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パラッツォ・グラッシ、ヴェネツィア
3月22日まで

/italics/
Arte italiana fra tradizione e rivoluzione 1968-2008
Palazzo Grassi, Venezia
27 set 08 – 22 marzo 2009
www.palazzograssi.it

この展覧会は逃せない、これは絶対見なきゃ、とイタリア各地のイベント情報をチェックしていながら、ヴェネツィアでやっている展覧会はいつでも行かれるから・・・とついつい後回しになって、いつのまにか見ないうちに終わっていたりする。
1968年から2008年までの40年間の、イタリアの「アート」を見ようというこの企画展も、昨年9月からやっていたというのに、はっと気がついたら明日までになっていた。

開幕当初、いや、開幕前からかなり話題になっていた。詳しくは忘れたが、要するに、イタリア現代アートの40年史を語る上で、なぜこの作品が入っていてあの作品が入っていないのか、とか、なぜ、彼が登場しないのか・・・などなど。
もちろん、おおまかな流れというか、(学会)一般の定説というのはあるのだろうが(ちなみに、私はこのあたり全く無知)、美術家だって美術品だって無数にある中で、何をどう選んで、ひとつの「企画展」として見せるのかは、それぞれのキュレター(または企画者)の判断であって、それは古典であろうが、現代作品であろうが変わらないはず。が、それだけ物議をかもしだすのはやはり、現存の作家であったり、そのすぐ次の世代の家族が権利を所有したりしているために、展覧会に出すにも出さないにも、あれこれ具体的かつ巨大な損得が発生するからなのだろう。
・・・などと余計な推察をして、アートは順列をつけるものでも、ましてやお金で計るものではない、キレイゴトを思ったりして、開幕当初はなんとなく冷めてしまったこともある。

そうしてようやく最終2日前、それも閉館間際にあわてて飛び込んだ。
現代美術展で起きるのはいつも同じこと。この作品は何なのか?作者は何を言いたいのか?・・・言いたいことがあるのか、ないのか?・・・しばしば、わけのわからない物体を前にして、無言でうなずきながらそれを「すばらしい」と思わなくてはいけないような、変なプレッシャー。
久しぶりに迷い込んだ、思索の森。
だがそういえば、ここの展覧会はいつも、オドロオドロしいものや、ブキミなものはしばしばあれど、「静か」だ。聴覚的にも、それから、視覚的にも。
音が出る作品が少ないというのもあるが、また壁の解説なども最低限にとどめられていて、特に知らない作家、作品が続くと物足りない、不安な感じにも襲われるが、でも実はより作品に集中できる。それも、難しいことはすっかり放棄した私の悩みは単純。
何だろう、これは?
と、
好きか、嫌いか。

ほとんど駆け足で会場をまわりつつ、今さらながら、あらためて第一印象の重要さを思った。そもそも、くだくだと説明を読まないとわからないような作品は、好きじゃない。
そして、映像や音楽、パフォーマンスなどはもちろん、じわじわっとあとから盛り上がるのでいいが、いわゆるヴィジュアル・アートの場合は、絵だろうがオブジェだろうが、美しかろうがおどろおどろしかろうが、ともかく一瞬で注意をひかなくてはだめ。そうやって惹きつけておいてこそ、じっくり見られて、あれこれ評価の対象になる。
だからもちろん、アイディア勝負みたいなところもある。
だが、まず、見てもらわないことには、どうにもならない。
会場入ってすぐ、そこのホール中央に展示された、Maurizio CatelanのAllという作品がまさにそれだった。シーツにくるまれた、9つの遺体がそっと並ぶ。男女も、年のころも、人種もわからないが、明らかに遺体らしいことはわかる。いや、遺体を模して大理石を彫ったものだが、イタリア伝統の墓碑彫刻そのもので極めて写実的な姿を見せている。
偉人でも聖人でもない、無名の人々の遺体は、現代においてもなお、私たちのすぐそばにある不条理な死に抗議する、作者Catelanのメッセージであった。

現代美術の壁は、やはりまだまだ高かった。
今年はまたビエンナーレの年でもある。「面白い」と思える作品に、どれだけ出会えるのか楽しみにしたい。

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21 marzo 2009
by fumieve | 2009-03-22 18:56 | 見る・観る
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