ルクセンブルグ、ポルトガル、スロヴェニア、エストニア、キプロス、イラン
ルクセンブルグ(Lussemburgo)
Ca’ del Duca
San Marco 3052
テーマは、Collision Zone。ブルーのモノトーンによる映像を、数室に分けて展示。
欧州と、アフリカ大陸との衝突を表現しているそうなのだが・・・。
ポルトガル(Portogallo)
Fondaco dell’Arte
San Marco 3415 (traghetto S.Angelo)
サンタンジェロ(Sant’Angelo)の、トラゲット(Traghetto, 渡し船)乗り場の横にある建物。水上バス(Vapoletto)の停留所とは別なので注意。
テーマは、Eperiments and Observations on different kinds of AIR.
こちらも、いくつかの映像を、いくつかの部屋で見せる仕組み。まっ暗闇の中、部屋から部屋へと移っていかねばならない展示というのは、どうもそれだけでガッカリしてしまう。
親切心で置いてあるはずのベンチも、見えないからかえってそこにつまづいたりして(・・・私だけ???)。
スロヴェニア(Slovenia)
Galleria A+A
San Marco 3073
ふつうのギャラリーを使った、Miha Štrukeljという作家の個展。なので、企画展というよりは、ギャラリー展示、といった趣。ふつうと違うのは、ギャラリーの壁に直接、えんぴつで作品を描きこんでいるところ。(ただしこれ、昨年の建築展での日本館のアイディアと一緒。)
作家やテーマについての説明がどこにもなく、パンフレットや紹介文のコピーも全部なくなってしまった、と言われると、せっかく見ても途方にくれてしまう。直観だけで、好きか嫌いかというものもあるが、もう少し知りたい、ということもあるのに・・・。
エストニア(Estonia)
Palazzo Malipiero
S. Marco 3079
Kristina Normanという作家による展示、テーマはAfter-War。
2007年4月、エストニア政府は、タリンの町の中から「ブロンズの兵士」という像を撤去した。これは、第二次世界大戦中に戦った解放軍に捧げるという名目で1947年に作られたものだが、多くのエストニア人にとってはむしろ、ソヴィエト支配の象徴であった。
政府は、跡地に花を植えた。だが、この、「心理・地理的」撤去は、ロシア人コミュニティの反発を生み、タリンの町で2晩にわたる暴動のきっかけとなった。
タイトルの通り、戦争は終わっている、だが、対立は続いている。
・・・と解説にある。
問題の「ブロンズ像」の等身大の、ただし金塗りの兵士。花を植える少女たち、一方で、暴動の様子。先日のメキシコ館がこれ以上ないほどの、沈黙によるメッセージだとすると、こちらは、そのまま、わかりやすいといえば、わかりやすい。だが、あのメキシコ館を見た後では、それ以上のインパクトを受けづらくなってしまった。
キプロス(Cipro)
Palazzo Malipiero
San Marco 3079
エストニア館と同じ建物(だと思う)が、入口があっち側とこっち側で、まったく別。
Socratis Socratousによる、Rumours。
入ったところでいきなり目に飛び込んでくるのは、そこに横たわった巨大なやしの木が3本。そして、その木を、ヴェネツィア内で運んできたときの映像が映し出されている。
近年、美観のために、北キプロスに大量のヤシの木が輸入され、植えられてきた。
問題は何か?それは、この木の根っこはコブラの卵を隠し、それが孵化するということ。
ヤシの木は、しかし、一方で古来よりさまざまな宗教、神話において象徴的な存在であった。
ここに運ばれてきたヤシは、もう一度、もっとも適切な場所に植えられて欲しい、そういう願いがこもっている、という。
現在、キプロスでは、ギリシャ系、トルコ系と2つの民族が、それぞれ当人たちの意思に関わらず、外部からの力によって、無理やり2分させられている。
その象徴としてのヤシ。
そして今、「ヘビを隠れたところが呼び出すことができるヘビ使いたちが、町の中をさまよっている。ざわめき(rumours)が始まった。ヘビは町の中にいる」。
イラン(Iran)
Palazzo Malipiero
San Marco 3198
キプロス館と建物も、入口も全く一緒なのがイラン館。こちらは、同国の若い作家3人展。
Hope for the Futureというテーマは、まず何よりあまりにも直接的でドキリとさせられる。
特に、 Hamid Reza Avishiの彫刻は、建物の入口に置かれているものが「文明同士の対話(Dialog among Civiliations)」、2階入ったところにあるのは、(すべての人間の祖先の象徴としての)「アダムとイブ」。もう1点が、5つの卵=5大陸を抱える、「フェニックス(不死鳥)」、とくると、何やらできすぎというか、そのテーマの大きさにちょっと面映ゆいような気がしてしまう。確かに、ふだん私たちがひょっとしたら忘れかかっていること、なのだが・・・。
だが、実はそのフォルムの美しさ、表面の加工などの細やかさに、魅了される。
Iradj Eskandariは、ペルシャ神話のテーマだという、人間(良)と想像上の動物(悪)との戦いの図を8枚、同じ構図で色を変えて描いた。
Sedaguat Jabbariは、アラブ文字のカリグラフィーを絵画化したもの、と言えばいいだろうか。アラビア語が読める人には、もちろん書いてある内容もわかるらしい。
無題の、18枚組の作品などは、絵画というよりは何かモダンな家具のデザインのようだ。
正直のところ、政情などから想像していたものとは全く違う、むしろ非常に現代的なスタイルの作品を作っていることに意表を突かれた。そして、3人3様ながらも、実は3人とも、特に手仕事の力、仕上がりへのこだわりに共通するものがあって、それはひょっとすると、はるか昔ペルシア時代からの、工芸・装飾美術の伝統が、綿々と受け継がれてきているのだろうか、と思った。
25 giugno 2009