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ヴェネツィア ときどき イタリア

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2009年 08月 19日 ( 1 )

Lemon Tree

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Il giardino di limoni(イスラエル、独、仏、106’、2008年)
監督 Eran Riklis
出演 Hiam Abbas, Ali Suliman, Doron Tavory, Rona Lipaz-Michael, Tarik Kopty

金網のこちら側と向こう側。防衛という名の(罪のない人への)攻撃。囲い込んだ側、上に立っている側のはずの人間が、強い規制の下に置かれ真実に近付けない。友達になれるかもしれない、同性の同世代の2人。
奇しくも、先日の「縞模様のパジャマの少年」と非常によく似た設定。ただし、ここで金網をはさんでいるのはパレスチナの一女性と、彼女に興味を持つ、そこに引っ越してきたイスラエル防衛相夫人。そういえば、引っ越してきた、という設定も一緒だ。

イスラエルの映画らしいということくらいしか知らずに、ああ、でもこれは見ておきたいな、と思ったのは、実のところ単純に、実のなる木、果物の木という絵が好きだから、そのタイトルに惹かれたから。
その期待は裏切られない。初盤は黄色いレモンの実の揺れる木々が、対立する2つの世界のあたかも「干渉」剤となっているかのようにスクリーンを埋める。ほかに取り立てて財産もない、早くに夫を失って苦労して子どもを育ててきた女性が、父親から譲り受けた思い出のレモンの畑。愛情をこめて育てた木には、大きなレモンがたくさん実る。だが、そのレモンの木こそが、ここでは対立の根源となってしまう。
幸いここでは、表立った殺傷は出てこない。それどころか、武器も敵意も持たない人間を前に、一方的に武装する側は、ほとんど滑稽にすらみえる。

「縞模様・・・」は一直線な展開それ自体がファシストっぽくて怖いぐらいだったが、こちらは、映像の美しさもさることながら、ことの発端から周りの反応、敵対や困惑、とくにモスリム世界での女性の立場の難しさ、と、話の展開にも無理がなく、ありえそうな話としてついていきやすい。
どちらかを選べと言われれば、断然こちらをお勧めする。なぜなら、これは今現在起きている(かもしれない)できごとであること、いや、どちらかというと、イスラエルとパレスチナでなく、敵対する国境付近ならばいつどこで起きてもおかしくないような、そんな話であること。そして何より、政治的な信条を一切抜きにして考えても、映画としての面白さが数段上。

見終わったあとには、うんとおいしいレモンをぎゅっと絞って、ぐぐぐっと飲みたくなる(サブリミナルに弱いので・・・笑)。それはさておき、そんな内容にも関わらず、タイトルやタイトルロールの処理がなかなかおしゃれなのも心憎い。
(その雰囲気は公式サイトでも。 http://www.lemontreemovie.com/lemontree_en.html
ベルリン映画祭観客賞も納得できる。

それにしても、どうしてイタリア語のタイトルを原題通り「レモンの木(Albero di limone)」でなくて、わざわざ微妙にニュアンスの違う「レモンの庭(Il giardino di limoni)」としたのかいまひとつ不明だが・・・。

18 agosto 2009
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by fumieve | 2009-08-19 09:13 | 映画