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ヴェネツィア ときどき イタリア

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2012年 05月 05日 ( 1 )

理屈でない人の心を描く、廣木隆一監督3作品@ウディネ

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http://river-movie.com

この1年と少し、ほんとうに、嫌でも「死」について、命について考えることになった、と思う。だが「死」はいつも身の回りにある、それがそれぞれの運命なのだとしても。
震災や津波という天災にせよ、病気や事故にせよ、大切な人を失うということは誰にとってもつらく悲しいことだが、それが突然のことであればなおのこと。ましてそれが暴力によるものだったら。

電車に乗って川を渡り、降りる。JR秋葉原駅。ヒカリは歩く。ただ茫然と。
ある日突然、恋人を失った一人の若い女性の喪失感、むなしさ、どうしようもない悲しみ。通勤客や買い物客でにぎわう、何事もなかったかのように日常生活の続く秋葉原の町を、一人、歩く。人にぶつかり、たまに話しかけられながら、それでもヒカリは何か透明な大きな泡につつまれているかのように、ほかに全く溶け込まず、浮き上がっているかのように見える。
事件の直後のショックや動揺ではない、3年経ってなお立ち直れずにいる心。2008年の、秋葉原無差別死傷事件(通り魔事件)で恋人を殺されたという設定の、ヒカリを演ずる、蓮佛美沙子さんの演技とは思えない演技がとてもいい。大袈裟に泣いたり騒いだりするのではない、その微妙で繊細な心の動きが、ちょっとした表情の変化やわずかな体の動きで見事に伝わってくる。
ほんとうにわずかに、少しずつ、それでもなんとか立ちあがろうとするヒカリの心。
そして実は、これが昨年の震災の直後の秋葉原だとわかる。

実際に秋葉原でゲリラ撮影をしたという、ほとんどドキュメンタリーのような作品で、映画としては賛否両論があるだろう。(私も最初の部分で手ぶれ酔いした。)だが、人の悲しみにそっと寄り添うような、こんな映画もあっていい、と思う。

上映に先立ち、舞台あいさつに主演の蓮佛美沙子さんが登場。きれいな女優さんのイタリア語の挨拶に、会場が多いに湧いたことは言うまでもない。上演終了後も蓮佛さんを取り囲んで、写真・サイン攻めにしていた。



続く:ウディネ
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by fumieve | 2012-05-05 16:20 | 映画