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ヴェネツィア ときどき イタリア

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カテゴリ:ビエンナーレ2009( 24 )

ひさびさ・・・ビエンナーレ・22~町中編17、サンテラズモ島

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並行展 Krossing- Isola Mondo

つい先日まで、昼間照りつける太陽を見ると、なるべく外に出るのを避けるようにしていたのに、いつのまにか、青空を見たらともかく外に出なきゃ!という気分になっていた。
その青空も、真夏のギラギラとは変わって、うっすらと白い雲のたなびく、やわらかい青に変わっている。

そうこうしているうちに、ビエンナーレを全部回るのが難しくなってきた。
今日はとりあえず、先日の期間限定・週末限定の水上バスに乗って、サンテラズモ島、トッレ・マッシミリアーノ(Torre Massimiliano)へ。
緑の畑の島、サンテラズモ島はヴェネツィアのラグーナの中でもずいぶん大きい方で、ふだん、水上バスで行ける3つの停留所は島の反対側にあるから、確かにここへは、この特別バスがないとかなり寄りづらい。
降りるとほぼ目の前にどーんと現れる、まんまるなレンガの建物は、トッレ(Torre、塔)というよりも、ルネサンス時代の「理想都市」の絵みたい。
18世紀後半、港の防御のために建てられたものだが、今はすっかり修復され、二重ガラスのきれいな窓がついて、ちょっとおしゃれな空間になっている。

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Isola Mondo(島 世界)というタイトルで、これはKrossingという企画展、4カ所に分かれた展示のうちの1カ所。円筒型の建物の中、放射状に仕切られた小さな部屋にそれぞれ、ヴェネツィアゆかりの作家やヴェネツィアをテーマにしたらしい、大御所と呼べる年代からかなり若い世代までの作品が展示されている。ビデオ・アート、写真などが中心。

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1つ1つがバームクーヘンの1切れのような変な形だし、天井の低い狭い部屋だが、現代アートの展示会場としてはなかなか面白い。とくにこういった、あまり大掛かりでないビデオ・アートなどにもよく合っていると思う。会場と作品が一体化した、そういう意味でも興味深い展示だった。

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2階へは、森の小人の家のような階段で。

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1番気になったのは、パドヴァ出身、Michele SambinのSoloという作品。

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レンガの壁に、チョークで自動的にするすると人の形が描かれていき、そのうち1人の男が浮かびあがってくる。うーん、コワイ!(笑)。

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最近、時間の都合で配達野菜を頼めないので、今日は何か野菜を仕入れて帰りたいと思っていたのだが、この周りでは直売所などが見つからなかった。どこにあるのか、ちゃんと調べて来るべきだった・・・。

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ちょっと意外なことに、猫の額ほどだが砂浜があって、どうみても地元の人たちが海水浴をしていた。

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期間限定水上バスは、こんな、プライベートのモーターボートのような舟。

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爆走する帰路、途中に見えるのは、元・要塞のサンタンドレア島(Isola di Sant’Andrea)。

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先日見た、元・修道院のチェルトーザ島(Isola di Certosa)に立ち寄り、

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リド島を見ながら・・・鐘楼のあるところは、サン・ニコロ教会(Chiesa di San Nicolò)。

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本島のはしっこ、サンテレナ(Sant’Elena)の脇を通って、

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あっという間に終点、ジャルディーニ(Giardini)に帰ってきた。
本日の水上の旅はこれにて終了。

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19 settembre 2009
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by fumieve | 2009-09-20 08:38 | ビエンナーレ2009

まだまだ!?ビエンナーレ・21~町中編16、チェルトーザ島

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並行展:John Gerrard “Animated Scene”, La Città Ideale
その他:naturasnaruran


先日、国別の紹介を終えて、ビエンナーレも一段落した気がしたが、実際は、並行展やいわゆる公認でない展覧会なども数え上げれば、まだまだ見ていないところはたくさんある。

ヴェネツィア本島のほぼ東端、サン・ピエトロ教会からさらに東へ250m弱のところにある、チェルトーザ島(Isola di Certosa)。
もともとは運河をはさむ2つの島から成っていたこの島は、1199年にアゴスティーノ会修道院とその教会を建設するため、運河を埋められて1つの島となった。1419年にアゴスティーノ会がこの地を放棄したあと、1424年からは、カルトゥジオ会(Padri Certosini)の修道院となった。
1806年、ナポレオンがヴェネツィア占領時に施行した宗教施設の強制撤廃を免れず、修道会解散のほか、美術品などはすべて接収されたあと、軍用地として利用された。
その後は、イタリア軍の射撃練習場などになっていたが、それも1960年前後に次々に施設が閉鎖され、廃墟化が進んだ。1968年の歴史的なアックア・アルタでは、それまで唯一残っていた16世紀の建物も被害を免れることができなかった。
再開発への動きが始まったのは1985年。
それも、町の一部として具体的に機能し始めるのは今世紀に入ってからで、現在はVeneto di Veneziaというプロ・アマの集う海洋愛好会の本部があるほか、2007年には著名なデザイン学校IEDのヴェネツィア校(www.ied.it/Network/Venezia/ )もオープンした。
www.parcolagunavenezia.it/certosa 抜粋要約+補足)

どんなところか一度は見に行こうと思いつつ、今日になってしまった。
水上バスに乗って、着いたところは、長―――い橋の手前。水上バスのすべての停留所の中で、もっとも島(目的地)から離れた停留所であることに間違いない。
いかだ式のぶらぶら揺れる橋を渡り終えて振り返ると、その橋の向こうにサン・ピエトロの鐘楼と、スタジアムが見える。

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前述の、Veneto di VeneziaとIEDの看板のある入口を入ると、いきなりビエンナーレの展示が目に入る。

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左手に、John Gerrardの “Animated Scene”。だが、3D映写のインスタレーションであるはずの作品は、どこにどう展示されているのか、よくわからなかった。こういうのが、屋外展示(でかつ誰もいないところ)の困ったところ。

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一方、右手はLa Città Ideale(理想都市)展。

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手前にある氷を積み上げたような作品は、Shan Shan ShengによるIl Progetto della Muraglia aperta – Venezia(長城開城プロジェクト)。これは、ガラスのブロック2,208個から成っているが、それは、実際の長城が建造されてから今までの年数(中国陰暦?)を表している。

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ブロック1つ1つに、年号を表していると思われる文字と、活字体で作家の名前とMURANOという文字が入っているから、どうやらムラーノ島で作ったガラスらしい。確かに、一見同一に見えるガラスのブロックは、よく見ると中に微妙に色が散っていたりして、それが全体で不思議な効果を生み出している。

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奥にある小さな建物では、ビエンナーレ公認展ではないが、やはり現代作家による小さな美術展、naturasnaturanが開かれていた。写真家の伊島薫さんや、ミラノ在住の彫刻家・永沢英俊さん(だと思うが・・・)の’80年代の絵画作品も展示されていた。

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ヴェネツィア本島からすぐそこのチェルトーザ島には、ムラーノ島に行くときにも利用する水上バスの41, 42番で行くことができる。

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だが、ちょっと不便な気がするために寄る人が少なかったのだろうか、ビエンナーレ見学のための特別路線が期間限定・土休日限定で登場した。
ジャルディーニ(Giardini)~チェルトーザ島(Certosa)~サンテラズモ トッレ・マッシミリアーノ(Sant’Erasmo Torre Massimiliano)~トルチェッロ(Torcello)で、ジャルディーニを11:30, 13:30, 15:30, 17:30発、トルチェッロを12:30, 14:30, 16:30, 18:30発。ビエンナーレ専用というわけではなく、ふつうの水上バス・チケットで誰でも利用可能。ただし10月25日までの週末のみ。


実は今日は、チェルトーザのあとサンテラズモまで行くつもりでいたが、照りつける太陽のあまりの暑さに2時間後の水上バスまで待てず、ヴェネツィアに引き返してしまった。

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16 agosto 2009
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by fumieve | 2009-08-17 08:26 | ビエンナーレ2009

ビエンナーレ・20~町中編15、かけこみ

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並行展:考古的めまい(Archeovertigo)、クリスティアーノ&パトリツィオ・アルヴィーティ

ヴェネツィア国立古文書館
本日まで

Meglio tardi che mai. (まったくやらないよりは、遅くてもやったほうがまし。)

ビエンナーレ自体は、11月22日まで開催しているし、国別展示に関しては原則、町中展でも同期間ずっとやっているはずなのだが、並行展や公認以外のものに関してはその限りではなく、少し早めに終わってしまうもの、または、先日のサン・セルヴォロ島のように、そろそろ会期が終了してしまうものもある。
行かなければ・・・と気になっていたのが、この、古文書館内にて行われている企画展。
ポスター等には8月9日まで、となっていたが、日曜休館で実質は今日8日まで。それも、昨日の午後行くつもりでいたら、金・土は午後閉館で、結局、今日、いよいよ閉展1時間前くらいのところで、ギリギリ飛び込んだ。

フラーリ教会にくっついた古文書館、受付(?)のある入口ではなく、左側の扉のところに展覧会の案内があり、入ってすぐの、その前庭とでもいうべき空間が会場。

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ローマの若い作家兄弟、クリスティアーノは1968年生まれ、パトリツィオが71年生まれ。

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8月の直射日光をまともに浴びたブロンズたちは、暑さにその体をくゆらせているかのようにも見える。

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そのクリスティアーノのブロンズ彫刻が、すべて男性をモデルにしているのに対し、パトリツィオの作品はすべて女性がモデルになっている。そして、どちらも同じように、Vertigo(めまい)というタイトルをつけているが、その表現方法がずいぶん違うのは興味深い。

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木板の上にセメント、あるいは金属板の一部を腐食させたような作品など、技法をミックスしたパトリツィオの絵画的作品が、個人的にはより気に入った。だが、それぞれ完成した作品、独立した作家でありながら、まるで補い合っているかのよう。

ふだんは入れない、美しい回廊にも展示があるのかと思っていたが、残念ながらそちらは門に鍵がかかっていて入れなかった。

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展覧会とは無関係だが、面白いものをみつけた。開いた本を示す、翼のはえたライオンは、かつてのヴェネツィア共和国の(平和時の)シンボルであり、また今でもヴェネツィアやヴェネト州の旗に使われるおなじみの図像だが、ここにはめこまれた(おそらく前の時代のものの再利用と思われる)プレートは、彫りの浅さと非常に形式化された顔が、中世前~中期っぽい。

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もう1つ、3頭のライオンが勢ぞろいの図も、これまたちょっと珍しい。何か特別な意味があるのだろうか?

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8 agosto 2009
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by fumieve | 2009-08-09 08:05 | ビエンナーレ2009

ビエンナーレ~国別展示・目次

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やるべきことと、やりたいことが山積みになっていて、ちっとも片付かない。
・・・といって、がむしゃらに忙しくしているのかというと、時間の決まった仕事や予定の合間にふと時間があくと、つい昼寝をしたり(最近は夕食後に横になってしまうことも)、なんだかただぼんやりしたりして無為に過ごしてしまい、またあとでバタバタになったりしている。
やりたいのにできていないことの1つが読書で、あっちこっち読みかけの本が散らかっている。
ビエンナーレを回って、このブログで1つ1つ紹介し始めてみて、途中から実に苦しくなってきたのは、日本語の不足。今の生活では、日本語を話す機会はたくさんあるのだが、読む量がどう考えても足りないせいなのか、表現力がないというか、つまり、言いたいことがうまく表現しきれていない。

そんなわけで、ごまかしでいっぱいのビエンナーレ紹介だが、国別展示については、間違いがなければ、先日ようやく最後までたどり着いた。とりあえず、国別を全部見る!という第一目標は達成したものの、回り始めると欲が出てくるもので、できれば並行展も制覇したい。といっても、すでに会期が終了しているものもあるから、100%はすでに無理。
こうなったらせめて、公認・非公認とも、大型の企画展は全部回りたい。だが、評判のいいものも含め、まだまだたくさん残っていて、いったいどこまで行けることやら。
・・・日本語能力の充電の必要性を強く感じつつも、ついつい「期間限定」に追われてヴェネツィアを徘徊することになるのだろう。

第53回 ヴェネツィア・ビエンナーレ紹介

町中編・国別(斜体は、並行展の実質地域館)
アルゼンチン:10~町中編5、サン・マルコ~スキアヴォーニ河岸
アルメニア:12~町中編7、パラッツォ・ゼノービオ
オーストラリア(サテライト):11~町中編6、アルセナーレとジャルディーニの間
アゼルバイジャン:16~町中編11、ジュデッカ島
中央アジア(カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン):13~町中編8、旧ソ連の強烈な個性
キプロス:9~町中編4、サント・ステファノ近辺
コモロ:17~町中編12、知られざるアフリカ
コスタリカ:14~町中編9、カンナレージョ地区
クロアチア:7~町中編3、クロアチア、ラトヴィア
エストニア:9~町中編4、サント・ステファノ近辺
ガボン:17~町中編12、知られざるアフリカ
グルシア:10~町中編5、サン・マルコ~スキアヴォーニ河岸
パレスチナ :16~町中編11、ジュデッカ島
イラン:9~町中編4、サント・ステファノ近辺
アイルランド:10~町中編5、サン・マルコ~スキアヴォーニ河岸
北アイルランド:10~町中編5、サン・マルコ~スキアヴォーニ河岸
アイスランド:5~町中展示編、シンガポール、アイスランド
ラトヴィア:7~町中編3、クロアチア、ラトヴィア
ルクセンブルグ:9~町中編4、サント・ステファノ近辺
マカオ:10~町中編5、サン・マルコ~スキアヴォーニ河岸
マケドニア:12~町中編7、パラッツォ・ゼノービオ
モロッコ:10~町中編5、サン・マルコ~スキアヴォーニ河岸
メキシコ:6~町中展示編2、メキシコ What else could we talk about?
リトアニア:14~町中編9、カンナレージョ地区
モナコ:10~町中編5、サン・マルコ~スキアヴォーニ河岸
モンテネグロ:19~町中編14、その他
ニュージーランド:14~町中編9、カンナレージョ地区
ポルトガル:9~町中編4、サント・ステファノ近辺
サンマリノ:18~町中編13、サン・セルヴォロ島
シンガポール:5~町中展示編、シンガポール、アイスランド
シリア:12~町中編7、パラッツォ・ゼノービオ
スロヴェニア:9~町中編4、サント・ステファノ近辺
スイス:19~町中編14、その他
台湾:10~町中編5、サン・マルコ~スキアヴォーニ河岸
タイ:19~町中編14、その他
ウクライナ:13~町中編8、旧ソ連の強烈な個性
米国:8~金獅子賞の米国館 Topological Gardens

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ジャルディーニ会場
第53回ビエンナーレ国際現代美術展「世界をつくる」・1~ジャルディーニ会場
第53回ビエンナーレ国際現代美術展・3~展示館(ジャルディーニ内)
第53回ビエンナーレ国際現代美術展・4~日本館「老少女劇団」

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アルセナーレ会場
第53回ビエンナーレ国際現代美術展・2~アルセナーレ会場

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6 agosto 2009
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by fumieve | 2009-08-07 07:45 | ビエンナーレ2009

ビエンナーレ効果

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このブログでも延々と紹介し続けている第53回「ヴェネツィア・ビエンナーレ」(国際現代美術展)だが、今年は例年になく好評で、どうやら記録続きのビエンナーレとなる模様。

ちょっと古くなってしまったが、7月25日(土)付コリエレ・デッラ・セーラ紙によると、
7月24日までの合計入場者数 92,000人(うち25,000人が学生)、これは前回(2007年)比で8%の増加。ちなみに2007年は最終入場者数320,000人で、これも2005年の260,000人を大幅に上回った。これはすでに、今年のイタリア中の特別展で最大観客数となる。
成功の理由は、
現代性と過去の交錯、町との融合
そしてもちろん、プンタ・デッラ・ドガーナや、ヴェドヴァ美術館など、話題性の高い新しい美術館が同時期にオープンしたことも、相乗効果を上げている。

ラ・レップブリカ紙には毎週月曜日に、特別展の週間入場者ランキングが出るのだが、実際、ここ数週間続いて、トップは必ずビエンナーレになっているほか、例えば27日(月)付の発表では、
1位ビエンナーレ13, 335人、
2位がMapping the studio、つまりプンタ・デッラ・ドガーナの8,166人、
3位はRobert Rauschenberg: Gluts、つまりグッゲンハイム美術館の7,258人、
とトップ3位をヴェネツィアが占めている。
もちろん、この時期、現代美術を好む人がビエンナーレ見学のためヴェネツィアを多く訪れているとはいえ、特にこの3つはそれぞれ入場券が別で10ユーロ以上することを思うと、それなりに結構大変だ。
ちなみに、ここでいう「ビエンナーレ」は、ジャルディーニアルセナーレの有料入場者数のことで、このブログでちょろちょろ紹介している町中展示はすべて無料なので、このカウントには含まれていない(と思う、数えようがないから)。

が、実は、諸手を挙げて万歳するばかりではない。
さもありなん・・・な分析記事が出たのは、ちょうどその1カ月前、6月25日の日刊紙コリエレ・デッラ・セーラのヴェネト州版だった。
ビエンナーレは、開幕以来2週間で33,000人の入場者数を記録。これは対2年前比+7.5%だが、皮肉なことに、パラッツォ・ドゥカーレ(=市立博物館)の、同時期、-7.4%にほぼ対応する。

早い話、なんらかの美術鑑賞をしようと思ってヴェネツィアに来た人々が、従来の観光定番コースであるパラッツォ・ドゥカーレに行くのをはしょって、ビエンナーレや目新しいプンタ・デッラ・ドガーナに走っているわけで、市立博物館としては由々しき問題。
同じ市立博物館群でも、ビエンナーレ関連の公認・非公認の企画展を各館で行っているが、残念ながらランキングに顔を出すほどではないから、それはさぞかし歯ぎしりする思いだろう。

こちらが、ある程度は予測できたことだとするならば、よりショッキングなニュースは、コッレール美術館で予定されていた「未来派展」のキャンセル。イタリアで「未来派」が誕生してちょうど100周年にあたる今年、ローマ、ミラノをはじめ、あちこちで未来派展が開かれており、ヴェネツィアもその一角をなすはずだった。
中止の直接の理由は、なんと悪天候。先月、ヴェネト州内で悪天候により家屋倒壊の上住民が死亡するという不幸があったが、州は、展覧会の支援に拠出するはずだった予算を、災害復興にあてることにしたため。
その250,000ユーロは、展覧会予算の1/2に相当し、美術館はその企画のキャンセルを余議なくされた。
もちろん人命や生活の保護、復旧は最大優先であるべきだし、そう言われると誰も何も言えなくなってしまう。それでも、それでいきなり文化予算がばっさり削られて、それでいいのか、なんだか腑に落ちない。変な話、ではあと1回、大きな災害があったらいったいどうなるのか・・・???

救いは、今ここにある、大小各種さまざまな展覧会の中に、まだまだたくさん、見るべきものがあることだろう。
8月1日付のコリエレ・デッラ・セーラでは、地方面に「見逃さざるアート」として、この期間の数多くの展覧会のうち、圧倒的な宣伝攻勢の影に隠れて目立たないものの中にも、良質な企画展がそれこそ紹介しきれないほどある、と特集を組んでいた。
私がとても気に入った、カ・ペーザロ美術館のBernardí Roig – Shadows must dance展は、実は作家自ら2年かけて準備したものだという。もう1つ、先日紹介したばかりのMona Hatoum展(クエリーニ美術館)も好意的に取り上げられていて嬉しかった。
まだまだほかに、紹介されている中にも見てないものもたくさん。いいと言われるとやはりぜひ見たくなるもの。この8月、少しは時間を作ってまたあちこち回れるだろうか・・・。

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3 agosto 2009
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by fumieve | 2009-08-04 07:39 | ビエンナーレ2009

ビエンナーレ・19~町中編14、その他

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タイ、スイス、モンテネグロ

ビエンナーレ町中編・国別展示は、先日のサン・セルヴォロ島にあった、イタリア半島の中の小国、サン・マリノ共和国館できれいに終わるつもりだったのだが(そして見に行ったのは実際最後だったのだが)、写真を整理していたら、まだ紹介しきれていないところがあったのに気がついた。
よりによって、国の地域も、展示場所も、内容も全く違う3つ・・・。強いていえば、この多様性こそがヴェネツィア・ビエンナーレの面白さだと、無理やりまとめてみるくらい。

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“Art is rice and Watermelon”(アートは米とスイカ)という、わけがわからないけどなんだか魅力的なポスターが気になったタイ館は、鉄道駅のほぼ対岸(ダジャレではなく)。
Gondola al Paradiso CO.,Ltd.(天国のゴンドラ株式会社)というタイトルの展示は、夢のタイ観光を勧める旅行会社のパロディーといったところ。

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ふだんは倉庫ではないかと思われる建物の、ちょっと薄暗い中に、絵ハガキやカタログ、ポスターなどが雑然と積んであったり、どこからどこまでが展示なのか、よくわからないところが、いいんだか悪いんだか・・・。

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同じサンタ・クローチェ地区(Santa Croce)、同じカナル・グランデ沿いをリアルト橋方向にちょうど半分くらい下ったところにある、サン・スタエ教会(Chiesa di San Stae)のスイス館。ちなみに、先日紹介した、大城章二さんの個展はこの隣。

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スイスは、ジャルディーニ会場内にも専用の建物を持っているのだが、毎年ここも定番の会場にしている。間に柱のない1廊式の広々とした空間を生かした、面白い展示をしていることが多いので楽しみにしていたのだが・・・

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空の棚をその空間いっぱいに設置した、インスタレーションは、Gygi Economatの作品。

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・・・んーーー・・・これだけ???

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そして、ユネスコ事務所の中庭に展開しているモンテネグロ館は、エリアとしては、サン・マルコ~スキアヴォーニ河岸なのだが、確かその日は、行ったときにはもう閉まっていて見学できず、あとからここだけ見に行ったのだったと思う。

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Dado Đurićによる、The Zorzi Elegies。ちなみに、Zorziはこの建物の名前。
廃品利用の血みどろ(ペンキだが)のメッセージといったらいいだろうか・・・

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世にはびこる悪を追及するのがミッションだという作品は、見るからにおどろおどろしく、強烈な太陽の光の下でかえって異様さを際立たせている。

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Thailandia(タイ館)
Santa Croce 556

Svizzera(スイス館)
Chiesa di San Stae

Montenegro(モンテネグロ館)
UNESCO, Palazzo Zorzi
Castello 4930

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30 luglio 2009
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by fumieve | 2009-07-31 08:07 | ビエンナーレ2009

ビエンナーレ・18~町中編13、サン・セルヴォロ島

サン・マリノ
公認並行展:La Casamata, Mercury House One – Save the Poetry
(A Gift To Marco Poloはすでに終了)


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日曜日の夕方、うっかりすると暑さと人の多さを言い訳に、1日中、家でダラダラしてしまうところを、重い腰を上げてサン・セルヴォロ島へ向かったのは、ただ写真を撮るためだけではなく、もちろん猫を見るためでもなかった。
ただ、空があんまり青かったから、「島」の写真を撮るのは絶好のチャンス、と思ったのは事実だが。

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ほんとうの目的は、終わりそうでなかなか終わらない、ビエンナーレ巡り。

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まずは島の一番奥、サン・マリノ館。タイトルの43° 56’11, 77’’ Nordは、イタリア半島の中にある独立共和国の地球上の位置を表しているのだろう。切り立った山(丘?)の上に城が聳えるらしい、いつか行ってみたい国の1つ。

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国際大学の施設の1つだろう、仕切りのない、ちょっとした会議室程度の部屋、インスタレーション2つを含む、多数の作家による合同展。違う作家が、同じフォーマット、同じ大きさに、違うテーマ、異なる手法で描いた絵を、床に並べるという展示方法は意外と斬新で、案外、かえって絵をよく見てみたりする。ただし、両側の窓から強い日差しが直接入り込んでいて、光を受けて、かなり見えづらくなっているものもあった。

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バールの前の広場にある、Mercury House One – Save the Poetry。消えゆく言葉、あるいはその民族そのもののメタファーとしての詩を宿す「家」、だというMarco Nereo Rptelliの作品。

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一方、建物内中庭は、Piergiorgio ColombaraのLa Casamata展。

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人間の体でなく、あえて洋服をモチーフにした作品はある意味、女性独特の表現のようでもある。もうちょっと他の作品も見てみたい、と思った。

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27 luglio 2009
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by fumieve | 2009-07-28 08:17 | ビエンナーレ2009

ビエンナーレ・17~町中編12、知られざるアフリカ

コモロ連合、ガボン

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今回おそらく、多くの人が1番最初に目にしていながら、それと気づかずに見逃してしまっていたであろう作品。かくいう私も、だからこうして、いまごろになって改めて写真を撮りにいく羽目になった。

77カ国の参加国リストを見て、地理に弱い私は確かに、アゼルバイジャンやタジキスタン、あるいはラトヴィアやアルメニアがどこにあるのか、まったくわかっていなかったが、ともかく、少なくとも名前だけはどこも聞いたことがあった。ところが・・・

コモロ、と、ガボン。

・・・この2つに関しては、お恥ずかしながら、ほとんど全く初耳といった状態で、何か架空の国か、あるいはどこかの「地域」なのかと思ったくらいだった。だが、どちらも、はっきりと「国別参加」のリストに名を連ねている。

それはどちらも、アフリカの小国だった。
アフリカ大陸と、マダガスカル島の間にある小さな島々の国、コモロ連合「館」は、主に大国の固定の建物があるジャルディーニ会場内でもなく、固定の会場を持たないほかの国々のような町の中でもなく、ゆらゆらと水の上に浮かんでいた。

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Paolo W. Tamburella によるDjahaziという作品。
ジャルディーニ会場入り口前、このジャルディーニに通った最初の数日は、バタバタとあわただしくて、ちらりと横目で見ただけで流していた作品、コンテナの乗った舟を改めてよく見る。コモロの海はきっと、このヴェネツィアのラグーナとは比べものにならない美しさだろう、と思いつつ。
ほとんどの人に気づかれずに、そこにぽつんと放置されたような作品は、だが、サン・ジョルジョ・マッジョーレ島の鐘楼とクーポラ、プンタ・デッラ・ドガーナとサルーテ教会のクポラ、そしてサン・マルコ大聖堂の鐘楼とクーポラ・・・と、おそらくヴェネツィアでもこれ以上は望めない、もっとも美しいシルエットを背景にしていた。

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一方、リアルト橋のすぐ近く、サン・サルヴァドーレ教会にくっつく形の、現テレコム・センターの柱廊では、ガボン共和国の展示が行われている。Go nogé mènè、フランス語っぽいタイトルから、アフリカ?と辛うじて想像した通り、同じアフリカの小国でも、こちらは、ギニア、カメルーン、コンゴに挟まれた西海岸にある。

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1953年パリ生まれの作家、Owantoは、フランス人を父、ガボン人を母に持ち、幼年期をガボンで過ごした後、人生の大半はヨーロッパ、すなわち、英国、フランス、スペインで暮らしている。

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アフリカとヨーロッパという2つのほぼ相反する世界の間を浮遊するOwantoの作品の中で、ヨーロッパ、すなわち「技術」と「都市」に代表される「西洋」世界のイメージが、ロンドンと並んで東京(渋谷)であるところは意表をついていて興味深い。

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国別展示・町中編も、ようやくあと少し・・・。

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Comore(コモロ)
Spazio acqueo antistante,
l’ingresso dei Giardini della Biennale

Gabon(ガボン)
Telecom Italia Future Centre
San Marco 4826

24 luglio 2009

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by fumieve | 2009-07-25 08:22 | ビエンナーレ2009

ビエンナーレ・16~町中編11、ジュデッカ島

アゼルバイジャン
公認並行展:Palestine c/o Venice, Liu Zhong.Praise of Nature, John Cale: Wales at Venice


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宴のあと、のジュデッカ島は、またいつもの静かなジュデッカに戻っていた。

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本島のザッテレ(Zattere)から2番の水上バスに乗ると、ジュデッカ島で3つめの停留所、ジテッレ(Zitelle)を降り、アゼルバイジャン館の垂れ幕のある入口をくぐってまっすぐいた左側。ここジュデッカの市民会館というか、こういうちょっとした催しもの会場である、CZ95は、れんがの新しい建物。会場全体を使い、複数の作家が紹介されていた。

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真ん中の、ちょっとしたコンサートなども開かれるホールには、Naika Sultanという作家によるアゼルバイジャン式少女マンガの挿絵ともいうべきファンタジーなシリーズ(しかも若干ヘタウマ系・・・)と、一方、人間の生活の場面や、それをちょっとシュールに描いたNiyaz Nakafovという作家の油彩など。

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奥の小さな部屋は「カーペット」の間。右側のPCは、Khatt Art Groupによる作品で、各自がそれぞれ好きなようにカーペットをデザインする、というものなのだが、使い方がいまいちよくわからなかった。

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ジュデッカ島、パランカ(Palanca)停留所から右に少し行ったところ、ピストル通り(Calle del Pistor)を入って細い道をずっと行った奥の突き当たり、そっけない建物の入口を入ると、奥に明るい回廊が広がっている。
展示は2階。
Palestine c/o Venice(ヴェネツィアのパレスチナ)展は実質、ヴェネツィア・ビエンナーレ第53回にして初の「パレスチナ館」と自ら名乗っている。

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Emily Jacirによるstazione, 2008-2009。「ご自由にお取りください」のヴェネツィアの地図を取ると、なんと、おなじみヴェネツィアの水上バスの路線図が全部アラビア語表記になってる上、停留所がイタリア語・アラビア語併記になっている写真がずらりと並んでいる。かつて、アラブ世界の文化や物資を、欧州に紹介する窓口であったヴェネツィアで、その意味を再考する、という作品。実際に、バス1番の路線の停留所に、アラビア語表記をするはずだったのが、そのプロジェクト(作品)はどういうわけだか中止になったらしい。

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次の一風変わった「作品」は、Khalil Rabahによる3rd Riwaq Biennale 2009, A Geography : 50 Villages。Riwaqビエンナーレという美術展の会場に選ばれた50カ所の町や村の、絵ハガキと全体の詳細を記した地図が置いてあり、これも「ご自由にお取りください」。
行ったことのないはるか遠くの国、悲惨なニュースばかりを目にするけれども、ほんとうは歴史と文化の詰まった土地に、いつか旅をすることができるだろうか・・・と思いをはせつつ気に入ったハガキを手に取る。

もちろん、そんなドキュメンタリー・タッチのプロジェクトだけではなく、現代アートらしい作品も。

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ガザ出身、Taysir BatnijiのHannoun。下に散っている花びらのように見えるのは、実は赤い色鉛筆の削りかす。

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運河に面した道に戻って、そのままずっとヒルトン・ホテル方向に歩いていった先、小さなギャラリーで開催しているのが、Liu Zhong. Praise of Nature展。
ちなみに、私はまだ見ていないが、同展は、本島内にもう1カ所展示している。
作品は、うーーーん・・・正直、特別好きではない(特別に激しく「嫌い」というほどでもないが)。動物をモチーフにした絵なのだが、コメントが難しい。玄人と素人の違いはどこにあるのか、というのか・・・。

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そのまま、運河沿いの道をさらに進み、もうヒルトンへ渡る橋の直前。アーチ型の門をくぐると、モダンな長屋アパートが並ぶ。付き当たりを道なりにちょっと左へ向かったところが、John Cale: Wales at Venice展。これも実質、ウェールズ館と言ってよいだろう。
まず、映像作品で上映時間40分、開始は1時間おき、との表示を見て、これがジャルディーニのメイン会場内だったり、オープニング期間の忙しい時期なら、くるりと踵を返していたかもしれない。
だが、今日はせっかくここまで来て、しかもこれを見にきたのだから、やっぱり見ないと帰れない。急ぐ旅でもなし、最後の18時の回を待つことにした。
平日のそんな時間、1人だったらどうしよう?と心配したが、案外何人も待っている。が、全員英語で、しかもおそらく英国人だ。いまごろ関係者でもないだろうが、それでも、ある程度はこれをお目当てに来ているのかもしれない。
倉庫状の細長い空間に、白いスクリーンが6つ(5つだったかも?)並んでいる。映像と音と言葉。待ち時間に読んだパンフレットによると、「ウェールズの文化的歴史を支える吟遊詩人的な伝統と共鳴」し、かつ、「Caleの個人的なウェールズ語とそれを取り巻く環境との関わり」を表現した、ということのようなのだが・・・
正直のところ、もしこれがウェールズの文化をなんらかの形で現わしたものだとすると、まず最初にそこから学んだのは「忍耐」の一言だった。

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まず、あまりのテンポの遅さ。(加えて、英語のナレーションのような部分は、私はほとんど聞き取れなかった)ウェールズの美しい自然や、伝統音楽、そして未知のことば(詩)がどういう形で出てくるのかとずっと待っていたのだが、40分という時間をフルに使って、それは最後まで、少なくとも期待していたような形では出てこなかった。

イギリスという国の中で、イングランドとは違う文化、違う国としてアイデンティティーを主張するはずのウェールズ館が、複数スクリーンの同時上映で主だった起承転結はなく、疑問符を抱いたまま時間が流れていく・・・という、英国館と全く同じタイプの作品を展示しているのは偶然なのだろうか?
時間決めで入れ替え制の方式にすると、入るのに待ったり並んだりしているために、「せっかく入ったんだから最後まで見なきゃ」という心理が働くが(実際、そうでなければ、せっかちな私はどちらもあっと言う間に外に出てしまっていただろう)、最後まで見ても、やっぱりわからないものはよくわからない。

Azerbaijan(アゼルバイジャン館)
CZ95 Centro Civico Zitelle
Giudecca 95

Palestine c/o Venice
Convento dei santi Cosma e Damiano
Giudecca 619 (Campo San Cosmo)

Liu Zhong. Elogio della natura / Praise of Nature
Giudecca 795 Art Gallery
Fondamenta San Biagio, 795

John Cale: Wales at Venice
Ex birreria, Giudecca 800/G

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(橋、片付け中・・・)

21 luglio 2009
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by fumieve | 2009-07-22 08:35 | ビエンナーレ2009

ビエンナーレ・15~町中編10、スクオラ・デッラ・ミゼリコルディア

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リトアニア(紹介済)
公認並行展:Divano Orientale –Occidentale. / East – West Divan. Arte contemporanea dall’Afghanistan, Iran e Pakistan
その他:Kkann, Illuminazioni


1日、何をどうやっても、何も前に進まないこともある。

・・・というわけで今日は、リトアニア館のあったスクオラ・グランデ・デッラ・ミゼリコルディアの、ほかの展示を振り返ってみることにする。

その名の通り、元はスクオラ・グランデ(一種の地域共済会)の事務所兼集会所だった大きな建物、壁の表示を見ると、どうやら最近は体育館になっている(なっていた?)らしく、脇の入口を入ると、まさに体育館らしいだたっぴろい空間が広がっている。左手に見えるのが、リトアニアの展示の「Tube」、一方、右手側には、その巨大な空間をステンレスで覆ったインスタレーションがすぐ目の前に迫っている。

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イタリアのよくある展示に漏れず、キャプションが非常にわかりづらいが、どうやら、D Taoという作家(本名はDario Milana)の、Kkannという作品、らしい。そして、Kkannは中国語で「水」を意味するとか。
ごわん、ごわんと音を立てるステンレスの上を歩く。意図するところも、わかるような気がする。

面白いのは、大きな空間の中に置かれたほぼモノトーンの大きな作品、いずれも上、または中を歩いてみることのできるという共通点を持ちながら、その実、全く違う2つの作品がこうして対峙していること。リトアニアのTubeは中を歩くと、これが「トンネル」というものの特性なのだろうか、その一部閉じた空間の中で、何か未来を予感させるような効果があるのに対し、このKkannは、完全に開いた空間であるにも関わらず、深海や胎内を思わせ、むしろ原始への回帰をほうふつとさせる。
偶然の産物なのだろうが、2つの作品が張り合い、がちんこ勝負をしているようで、興味深い。

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工事現場のような階段を上がって、中2階の小さなスペースを使っているのは、Luigi VoltolinaのIlluminazioniと題された個展。
一見抽象画のような、だが、よく見るとそれはシンプルな線に究極に凝縮された具象であり、そのフォームは力強く、また、不思議と色っぽい。

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だが、この建物の中で、一番興味深かったのは、やはり、上階を使った、Est – West Divanだろう。アフガニスタン、イラン、そしてパキスタンと、「西」側からはテロリストの国、イスラム過激派の国として(のみ)知られている国から、10人のアーチストによる作品を集めた。
戦争中の国や、最貧国からの出展というと、現状を生々しく訴えるルポルタージュ的な作品、あるいはプリミティブなアートを、想像(期待)してしまうのは、たまたま恵まれた立場にいる我々の悪い癖ではないだろうか?

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それをあざ笑うかのような、アメリカ館のナウマンを思わせるネオンの光に誘われ、階段を上がる。アラビア語が読めない、何と書いてあるのかわからないのがもどかしい。

その名も「テロリスト」というタイトルのKhosrow Hassanzadeh(イラン)という作家による作品。

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同じイランのMonir Shahroudy Farmanfarmaianという作家は、鏡を使ったモザイク作品を数点展示。写真はThe Number of Material Orderという作品の一部。

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やはり鏡を使って、不思議な空間を作りだしたのは、Aisha Khalid(パキスタン、Face it)。

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ビエンナーレらしい、「モダン」な作品と同時に、イスラムの細密画の伝統に忠実なMuhammad Imran Qureshi(パキスタン、Moderate Enlightenment)や、

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やはり伝統の技術を生かしつつ、なぜか日本昔話の絵本を思わせるKhdim Ali(アフガニスタン)のRustamという作品たち。

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よく見ると、左の金色の人(天使?)からはセリフが出ている!カワイイ・・・。

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展示パネルの外側で、窓からの光を透かして揺れるインスタレーション、Zolaykha Sherzad(アフガニスタン)のHawa – e Azad (Espace libre)は圧巻。印刷技術の1つとしてのシルク・スクリーンを使って、そのシルクを絵としてではなく、再びシルクという素材として使っているのは、案外盲点のようでもある。カリグラフィーの乗ったシルクの質感で遊んだ美しい作品で、これは個人的にとても好み。

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キャプションに、アフガニスタンの16世紀の詩が添えてあった。
“Weaving in straw or in velvet
All we do is weave a veil
Everything we’ve seen and conceived
All we do is weave a dream.
The so desired lace cannot be found anymore
Upon the waves of the sea all we weave are mirages.”
Abdul Qader Bedel

全体に、赤と白を効果的に使った展示も好ましい。

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この展覧会は、Turquoise Mountainという、カブールに拠点を置き、文化財保護や修復を専門とするNGOが主催している。キュレターは同団体の国際プロジェクト・ディレクターのJemina Montagu。
www.turquoisemountain.org

4展とも、
Scuola Grande della Misericordia
Cannaregio 3599/A
(Fondamenta della Misericordia)

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20 luglio 2009
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by fumieve | 2009-07-21 08:27 | ビエンナーレ2009