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ウィーンの香りに酔う、「シーレとその時代」展

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ミラノ、パラッツォ・レアーレ
6月6日まで

SCHIELE e il suo tempo
Milano, Palao Reale
24 feb – 6giugno 2010
www.mostraschiele,it

「世紀末」のあとのウィーン。
たった28歳であっけなく人生を終えた画家の回顧展を、無理やり作った空き時間を利用して、駆け足で見に行く。




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エゴン・シーレ(Egon Schiele, 1890-1918) と言われて、あの独特の自画像の表情などは思い浮かぶものの、そういえばほかの作品をあまり知らない気がする。
入ってすぐ、田舎の風景を描いた2点。厚紙に油彩+鉛筆の小品、なんてことはないような作品なのだが、ああ、いいな、(これなら欲しいな)と思う。なんだろう、構図がいいのだろうか。それと色。

その後はすぐに、同時代のほかの画家の作品が並ぶ。それぞれ、大きなパネルに写真やプロフィール、解説が紹介されている。
そしてあのクリムトも、年齢はかなり上だが、シーレと同時代を生きた画家の1人。
「嵐の到来」(L’arrivo del temporale (Il grande pioppo II)(1903)、題材といい、絵そのものといい、不安や恐れを喚起しつつ、同時に非常に安定のとれた、落ち着いた絵のようにもみえる。
油彩はさすがにこの1点だったが、その代わりというのか、まとまった数のデッサンが公開されている。形式美を追求し、完全に平面的な構成の中で絵を描いたクリムトだが、デッサンはふつう、と言ったら語弊があるだろうか。すなわち、オーソドックスに、やっぱりうまい。

各々の画家の紹介のほかに、シーレ含む、彼らを取り囲む時代背景や文化的背景の解説ボードが充実している。これらを全部読んでいったら、相当いいお勉強になるだろう。だが、残念ながら時間がギリギリ、オベンキョウはあきらめて、ともかく今日はホンモノの作品たちを見ることを優先した。

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そして再び、何人かの同時代の画家をはさんで、本日のテーマである、エゴン・シーレが登場する。まずは自画像。
ひと目でそれとわかる、独特のタッチのデッサンに、効果的に載った鮮やかな色。確認していないが、そしておそらく前述のクリムトもそうだろうと思うが、これらのデッサン(素描)は何か大きな作品のための構想やスケッチ、習作というわけではないだろう。デッサンをデッサンとして、つまり売れる小さめの作品として描かれたものと思われる。
絶妙なラインと、見事な色差し。実は計算され尽くしたに違いない構図。
そしてヌード。
男女の体を、一糸まとわぬ姿どころか、さまざまなポーズで描くのは現代ではちっとも珍しいことではなくなったが、当時は相当のスキャンダルとなったことだろう。事実、1912年、住んでいた田舎町で、幼児性愛のかどで逮捕されている。
真偽のほどは定かでないとされるが、このときの牢獄体験と第一次大戦が彼の創作活動に影響を与えているとされる。

重く塗り込められた絵の具は、すっきりと簡素で思いきりのよいデッサンとまた全然違う。むしろこちらのほうが、描きながら延々と逡巡を重ねていたように見える。
28歳の死はあまりにも若い。仮に私の年まで生きていたら、彼は何を描いていたのだろう?

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(写真はすべて、http://foto.ilsole24ore.com から拝借した)

13 aprile 2010
by fumieve | 2010-04-14 08:57 | 見る・観る
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