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未消化・未吸収に終わった、「初期ルネサンスにおけるシエナ」

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「ヤコポ・デッラ・クエルチャからドナテッロへ
初期ルネサンスにおけるシエナの美術」展
シエナ、各地

Da Jacopo della Quercia a Donatello
Le arti a Siena nel primo rinascimento
Siena
26 mar- 11 luglio 2010

Complesso Museale Santa Maria della scala
Opera della Metropolitana
Pinacoteca Nazionale
www.rinascimentosiena.it

正直のところ、よくつかみきれない展覧会だった。
後期ゴシックから初期ルネサンスにかけての、とくにトスカーナの美術は好きな方だし、それでいてシエナについてはあまりよく知らないから、もう少し何かわかるかと期待していたのだが。
まず、会場はと見ると、いつもシエナで大規模な企画展を行うときに使われるサンタ・マリア・デッラ・スカラ美術館を筆頭に、大聖堂、首都大司教博物館、クリプタ(聖堂の地下祭室)と洗礼堂、司教区博物館、国立絵画館、とある。・・・それって、シエナにある主な博物館全部じゃないの、とても1日では全部回りきれない・・・と迷い、とりあえず、月曜日は午前中しか開いていない、国立絵画館(Pinacoteca Nazionale di Siena)へ。
すると、大聖堂脇のチケット売り場で、共通券(12ユーロ)をゲットしてから行ったのに、ここは別で、そのチケットがあると割引とはいえさらに2ユーロのチケットがいる、という。
たかが2ユーロ、だが、それなら先に共通券に含まれるところから行ったのに・・・とケチっぽく思ってしまう。






絵画館自体は悪くなかった。シエナには何度か来ているにも関わらず、今回初めて入った(と思う)のだが、シエナを、いや13世紀のイタリア美術を代表するドゥッチョから始まり、シモーネ・マルティーニ、リッポ・メンミ、アンブロージョ&ピエトロ・ロレンツェッティ、と大物の作品の合い間に、私はあまり知らなかったが、シエナでは大切らしい画家たちの作品が並んで、当時のシエナの勢いというか賑わいを彷彿とさせる。
そしてやがて、ルネサンスからバロック・・・と時代が下るにつれ、大家の追随であったり、著名な作品の模倣のようであったり、と、明らかにその輝きと面白みを失っていくのがはっきりと見てとれる。
なるほど・・・。
いや、だが、肝心のその企画展との関連はいったい?
・・・もちろん、ここには13世紀から18世紀までのシエナの美術が勢ぞろいしているのだから、企画展テーマの「初期ルネサンス」をカバーしているのはわかる。だが、特別にそのための部屋が用意されているわけでもなければ、関連作品をちょっとマークして注意を喚起するとか、できれば何らかの補足説明などがあってもいいのではないだろうか?
「企画展」で呼び込んでおきながら、実はまったく常設のまま、ビジターの意識や知識に完全にお任せというのはどうなのだろう???

気を取り直して、メイン会場であると思われる、サンタ・マリア・デッラ・スカラへ向かう。
と、今度は、建物に入ってから、「企画展順路」の矢印に従って歩くのだが、実際の企画展入口、つまりチケットもぎりのいる場所まで、妙に遠回りさせられる。どうやら、近年修復が終わってようやく一般の見学が可能になった、同名の旧病院部分を回るようになっている。病院といったって、さきほど見てきたシエナの画家たちが腕をふるったフレスコなど、もちろん、見るのは見たい。だが、とりあえず今日の第一の目的は企画展である私としては、じっくり見るべきなのか、ここはまたいつでも見られるのかよくわからずジレンマに・・・。
あとから改めてパンフレットをよく見たら、ここはちゃんと見るべきだったのがわかったが。

チケットをもぎられてからは、お、やっぱりいいかも!・・・と思った。
まず私たちを迎えるのは、タイトルにもなっている、ヤコポ・デッラ・クエルチャの大理石の聖母子像。
そして、ヤコポと、ドナテッロの、同じ構図、同じ技法(テラコッタ)、ほぼ同じ時代(1420年ごろ)の聖母子像の対比。初期ルネサンスらしい、ドナテッロらしい正確で精密で「理想的」なドナテッロの作品と、やわらかく温和なヤコポの違いが、はっきりと表れている。
圧巻は、同じシエナの、やはりほぼ同時代の、4つの「受胎告知」像。マリアにお告げをする大天使ガブリエルと告知を受けて驚くマリアとのペアだが、3人の彫刻家による4つの像は(ヤコポが2つ)、木彫り彩色という技法に騙されるせいもあるが、まだゴシックの残り香があるよう。
・・・というわけで、大満足でスタートしたのだが・・・
2階へ上がるとヤコポもドナテッロもすっかり姿を消して、シエナの絵画のオンパレードになった。ふだんは彫刻よりも絵画のほうが好きだし、それでいて下がいい感じだっただけに、なんだか不意打ちをくらった気分。これって看板に偽りあり、では?と思って、パンフレットをよく見ると、実は「ヤコポ・・・からドナテッロまで」の文字は、「初期ルネサンスにおけるシエナの美術」」より小さく書かれていた。・・・なるほど・・・

結局、時間が足りず、首都大司教博物館、司教区博物館には行けなかったので、ひょっとしたら、そちらにすばらしい展覧会の続きがあったのかもしれないが、なんとなく、未消化・未吸収のまま、シエナを後にしてしまった。
ポスターの絵は、好きなタイプなのだが・・・。

フォレンツェからの日帰り・半日旅行で終わってしまわれがちなシエナが、その魅力をなんとかアピールしたい、全部盛り込みたいと思う気持ちはわかる。だが、それならば、今回のような展覧会の場合はとくに、外での宣伝ばかりに力を入れるのではなくて、もう少し実際に来た人が「やっぱり、あれもこれも見たい」と思えるように各ポイントを回りやすく、わかりやすくする工夫が必要なのではないだろうか?
全部の美術館の地図だけ渡して、内容は丸投げというのはあまりにも不親切だと思う。

大聖堂、洗礼堂およびクリプタについては、また次回。

17 maggio 2010
by fumieve | 2010-05-18 08:45 | 見る・観る
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