巨大なドォーモを囲む広場から、北東へ向かう道、ヴィア・デイ・セルヴィ(Via dei Servi)を歩いて広場に突き当たると、右側にあるのが、かつて「赤ちゃんポスト」のあったことで知られる、捨て子養育院(L’Ospedale degli innocenti)。ドォーモのクーポラと同じ、ギベルティ(Ghiberti)の設計で、シンプルな正円のアーチのポルティコ(柱廊)が、ファサード横いっぱいに連なる。
広場正面にあるのが、サンティッシマ・アンヌンチャータ聖堂(Basilica-santuario Santissima Annunciata)。もともとは1250年に、聖母の僕修道会(frati dell’ordine dei Servi di Maria)により祈祷所として建てられ、その後数回にわたって拡張された。
日曜日に聖母被昇天の祭日(Ferragosto)が重なった今日、8月15日は、聖母に捧げられた教会はどこも特別なミサが行われる。
ここ、アンヌンチャータ(受胎告知)教会も例外ではなく、通常ならお昼休みの時間だったが、これから始まるミサのために開いていたので、そろっと入って、さくっと見学させていただいた。
本堂内は意外にも、フィレンツェでは珍しいバロック風。だが、それよりももっと珍しかったのは、ミサを待つ信者の方々が、正面、中央祭壇に背を向けて座っていたこと。入口すぐ脇に、やはり聖母に捧げられた豪華な礼拝堂があり、そちらを向いていたのだった。
教会のベンチ型で固定の椅子は、中央祭壇を向いており、その間にうまく、ふつうの椅子が反対向きに並べられていた。おそらく今日だけ特別用意されたものと思われる。
もう1つ、興味深かったのはその本堂入口前にある回廊。初期キリスト教時代の聖堂ではよく見られるパターンだが、ここは信者たちが奉納物を収める(展示する?)ために設けられたスペースらしい。そのまま「奉納の回廊(Chiostro dei voti)」と呼ばれている。
四方の壁を彩るフレスコ画は、1966年の大洪水のあと、修復のため一度剥がされ、直されて再びまたもとの場所に納められた。
ロッソ・フィオレンティーノの「聖母被昇天」(Assunzione, 1517年)、
ヤコポ・ポントルモの「マリアの訪問」(Visitazione, 1514-16年)、
アンドレア・デル・サルトの「聖母誕生」(Natività di Maria, 1514年)、
など、フィレンツェのマニエリスムを代表する画家たちの絵が並ぶ。
美術館で見るこれらの画家の絵はあまり好きではなく、正直のところほとんど興味もなかったのだが(おそらくそのために、今まで一度も来たことがなかった)、ここで見て初めて、きれいだと思った。もともと油彩よりもフレスコ画が好きだということもあるが、食わず嫌いもほどほどにしよう・・・。
(写真下は、教会から見た「捨て子養育院」。空腹のため、教会の外観写真は撮り忘れました・・・)
15 agosto 2010