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ヴェネツィア ときどき イタリア

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ヴェネツィア映画祭67・6~それぞれの歴史

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Promises Written in Water(米、75’)
監督 Vincent Gallo
出演 Vincent Gallo, Delfine Bafort, Sage Stellone

昨日紹介したEssential Killingで逃げるタリバンを演じたギャロの、こちらは監督・主演作品。 "Essential...” がとてもよかったので、続けて見たこちらも、ついつい期待してしまったのだが・・・。
まあ、内容もわかりやすく映像の美しい "Essetntial..." がいわば「大衆的」なのだとすると、こちらはアーティスティックなもの(をめざした映画)、ということになるのだろうけど。
だが、全体に中途半端だし、芸術的に優れているかというと、・・・うーん。
自演している役そのもの同様、ひとりよがりな感は否めない。



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Noi credevamo(伊、仏、204')
監督 Mario Martone
出演 Luigi Lo Cascio, Valerio Binasco, Toni Servillo

イタリアよ、きみたちが複雑な歴史をたどってきたことはわかる。でも、映画なんだから、きっかり2時間以内、とは言わないけれど、せめて2時間強くらいにまとめたほうがいいのではないだろうか?
セリフは棒読みだし、カメラ・ワークも単調で全然なってない、これは映画じゃなくてテレビ・ドラマだ、というのは私のセリフではなく、そのあとで他の映画を見るときに、後ろに座ったイタリア人の言葉。
でも、私もほぼ同じことを思った。イタリアでは、なぜか時代もののちょっとお金をかけたドラマは、たいてい日・月のゴールデンタイムに2晩連続、合計4時間くらいの枠で放映される。204分、3時間24分というのはちょうど、その長さ。こうやって、だらだら、ずるずると無駄に引き延ばすのに、制作側も慣れてしまっているのではないか?
1861年イタリア統一、そして70年ローマ併合までの、リソルジメントに焦点をあてた物語。「ご維新」のあった日本の歴史と時代的にちょうど重なるのだが、「藩」に分かれていたとはいえ、あくまでも幕府による中央集権が徹底していた日本と、5世紀に西ローマ帝国が崩壊して以来、半島の中がいくつもの別の国に分かれていたイタリアとでは、その中身はずいぶん違う。そして、イタリア統一が悲願となったのも、そもそも、半島各地が外国、欧州列強に占領・支配されていたためであることも違う。
ドキュメンタリーではないが、史実に基づいた話で、映画の中の一言一言も、現在に残される関係者たちの手紙や日記を徹底的にあたり、実際にその中から拾ったものだという。ヒーロー賛歌ではない、美化されたリソルジメントではない、その裏の部分に光をあてたところは評価できる。だからこそ、やりようによっては、もっといい映画になたのではないかと思うと残念。言いたいことがたくさんあるのはわかるが、詰め込みすぎ。

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Le fossé (The Ditch)(香港、仏、ベルギー、109’) (Hong Kong, Francia, Belgio)
監督 Wang Bing
出演 Lu Ye, Lian Renjun, Xu Cenzi, Yang Haoyu, Cheng Zhengwu, Jing Niansong, Li Xiangnian

同じく自国の歴史を顧みて、現存する体験者の証言を徹底的に集めて、あまりにも苛酷で悲惨な事実に正面から向き合った作品、中国のWang Bing監督のLe fosséが、今年のサプライズ上映に選ばれた。
果てしないゴビ砂漠で、道路工事に従事する男たち。それは、政治犯などのかどで捕えられた囚人たちの強制労働所だった。労働そのものも、苛酷であることは疑いない、だが、ここでは、寒さと飢えという苦しみにフォーカスをあてている。広大な砂漠の風景と、狭く暗く不衛生な収容所の中の生活との対比。家族や残してきたものへの思いと、仲間が次々に、あっけなく死んでいく恐怖。
そしてまた、出てくる唯一の女性である、上海から夫を訪ねてやってくる妻の姿が、感情も乏しく、人間の尊厳すら失われた生活を強いられている彼らとの対比として効果的に扱われている。
政治批判をするものではない、あくまでも、史実に向き合うこと、そしてそれが将来のためだというWong監督。だが、中国の監督による、中国を舞台にした作品にも関わらず、プロダクションがフランスなのが、何よりその現状を物語っている。
(余談だが、昨日、朝リドに向かう水上バスで、私の目の前に立っていた中国人のおじさんがその監督だったことにあとから気がついた・・・。)

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Balada triste de trompeta (スペイン、仏、107')
監督 Alex de la Iglesia
出演 Carmen Maura, Carolina Bang, Santiago Segura
モノクロの映像。1937年の内戦で始まるこの映画もまた、自国の戦争の歴史を語るものか、と思った。「悲しいピエロ」の父を、目の前で不条理に殺されたハビエル。
父と同じ「悲しいピエロ」でのデビューは、好調かとみえた。芸は一流の「笑わせるピエロ」は、私生活では毎晩酒にあかせて暴力をふるう。
アクロバティック芸人の金髪美女をめぐって一波乱、二波乱、いや、三波乱、四、五・・・。
それにしてもこの映画、途中で何度も何度も裏切られる。つまり、いい意味で、先が全然読めない。はらはら・どきどき、後半はアクションもたっぷりで、映画自体がサーカスのようでもある。
愛と狂気と暴力、笑いと涙。・・・そして、見た目の衝撃(笑劇?)。
「終わらない」のが最近の映画の主流のようだが、この映画は、終わりもいい。

7 set 2010
by fumieve | 2010-09-08 06:35 | 映画
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