(この原稿は、数年前にまとめたものに、加筆・訂正を加えています)
「モザイクの旅」シリーズ
初夏~イスタンブール[回想]
1:
導入編
2:
聖ソフィア大聖堂
3:
聖イレーネ教会
春~ラヴェンナ
1:
サン・ヴィターレ教会
2:
ガッラ・プラチディア廟
3:
サンタアポッリナーレ・イン・クラッセ
4:
サンタンドレア礼拝堂
5:
ネオニアーノ洗礼堂
6:
サンタポッリナーレ・ヌオーヴォ
7:
アリウス派礼拝堂
モザイク・マニアにとって、イスタンブールで欠かすことができないのが、サン・サルヴァトーレ・イン・コーラ(コーラ救世主)教会。ここも、例にもれず一度はモスクになっていたが、外国の資本が入って修復され、現在は元教会の美術館として一般に公開されている。
教会としてのの起源は11世紀にさかのぼるとされるが、現在残る構造は14世紀前半に再構築されたことがわかっている。
本堂内はがらんとして、わずかにいくつかもモザイクが残るだけ(写真上は、「聖母マリアのお眠り」。ちなみに、正面で見守るキリストが胸に抱いている赤ちゃんのようなものは、マリアの魂。まるで聖母子像が逆転したかのような構図が面白い)。ところが、それと対照的に、本堂前の2重になった柱廊の天井全てが、美しいモザイクで埋められている。
聖母マリアの物語(写真は「国税調査に赴くマリアとヨセフ(ジュゼッペ)」)。
キリストの一生のうち、写真は「悪魔の3つの試み」。
この場面は、ヴェネツィア、サンマルコ大聖堂でもこの場面は大きく扱われているので、比べてみると面白いだろう。次は「ヘロデ王の前の東方の3賢士」。
奉献者である神学者テオドーロ・メトキテスが、聖堂の模型を玉座のキリストに捧げる図。
そして、クーポラ中央から見下ろすのは、万能の神キリスト、もう1つのクーポラの中央は聖母子像。
あまり大きくないクーポラは、カンキツ類のふさ状の形で、たいへん装飾的。
が、それまでの時代のモザイクに比べて物語部分が多く、絵に流れがあるのが特徴と言えるだろう。絵そのものも、表現が細かくなっているだけでなく、色彩の幅がぐっと広がっていることにも注目したい。このころには、原色ばかりでなく、淡いピンク色などの中間色も出せるようになったのだった。
柱廊下はL字型になっていて、本堂前だけでなく、本堂に向かって右側にも延びている。そこには、同時期に描かれた美しいフレスコ画が残っている。
正面の1/4円蓋は、anastasis(アナスタシス)と呼ばれる場面。
すべての人間の先祖でありながら、キリストより早く生まれてしまったためにキリスト教徒ではなかった、アダムとイブを、天国に送るために、キリストがその墓から引っ張り出しているところ。ヴェネツィア、トルチェッロのサンタ・マリア・アッスンタ教会に、同じ場面の大きなモザイクがある。
下に並ぶのは東方教会の聖人たち。
見るものがいっぱいあって、大学のツアーだから見る時間が限られていて、どこから見たらいいのか、自分は何をより時間をかけて見たいのか、うわーっと頭に血が上ったことを覚えている。
全体に、写真が暗く小さくピントが甘いのがなんとも残念。写真撮影も兼ねて、やっぱりもう一度ゆっくり行きたい・・・。
(続)
19 ottobre 2010