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ヴェネツィア ときどき イタリア

fumiemve.exblog.jp

「モードな劇場 ビッグ・デザイナーたちの衣装」展、ローマ

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ローマ、フォンダツィオーネ・ローマ・ムゼオ
12月5日まで

Il teatro alla moda. Costume di scena. Grandi stilisti.
Roma, Fondazione Roma Museo
5 nov – 5 dic 2010

アルマーニにフェンディ、ロメオ・ジリにアンドニオ・マラス。ミッソーニにヴァレンティノ。

イタリアを代表するファッション・デザイナーたちによる、舞台、おもにオペラやバレエのための衣装展。デザインと衣装そのものと、ところどころに映像が入っていて、それらが実際に舞台で動いている様子が映し出されている。
ファッション・デザイナーなら、衣装をデザインするのはお手のもののはず、だが、実際はそう多いほうではない(と思う)。オペラ歌手、それもプリマドンナともなると、それはもう当然、気位も高いし、主張も強い。時代や土地柄に忠実に、あるいはよかれと思ってデザインした衣装も、簡単に、やれこれはダメ、ここはこう変えろ、とどんどん勝手に指示を出してしまい、そこを何とか引いてもらうのは大変なこと・・・と舞台衣装家の方に聞いたことがある。総合芸術とはいえ、オペラはやはり歌手あってこそ。なるほどそれでは、たとえこちらがトップ・デザイナーであっても、あっさり拒否されることだってあり得る。それではいつもは王様のようなデザイナーにとって、面白いはずがない。
もちろん、ギャラ(予算)の問題だってあるだろう。




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が、一旦プロとして仕事をしたときの、彼らの力に、会場に入った途端に圧倒される。

彼らにとって、いつもならその服を着せる相手も含めて、すべて自分の創造の一部にできる普段の仕事と違うのは、それぞれの衣装は、「性格」から「環境」まで、すでに確固とした「役柄」を持った人に着せるということ。そして、その役を演じるのは、これまた世界レベルで著名な歌手である場合もある。さらに舞台美術は舞台美術で、また別の美術家が担当していることがほとんどで、衣装はあくまでも、その中に絵的に収まるものでなければならない。
だから、大物の競演というよりは、(通常のファッション・デザインに比べると)かなり窮屈なものに違いない・・・と思ったのは大きな間違いだった。

さすがトップ・デザイナー、彼らは彼らで、その決まった条件の中にぴたりと、だが堂々と自分のスタイルを打ち出している。
もちろん、それを期待して、あえてそのデザイナーを指名しているということもあるだろう。だが、その期待にしっかり応えるどころか、あっさりと、それ以上の仕事をしているのだった。これらを最初に、発表したときの、観客よりも前にまず、関係者一同の驚きが目に浮かぶようだ。

そして、シルクにカシミヤ、ビーズに毛皮。使っている材料もすべて妥協なしの一流だから、舞台の上での遠目にも、またこうして近くに寄ってみても、細部まで美しい。

ジャンニ・ヴェルサーチによる、Helga Derneschのためのヘロディアス(「サロメ」、R.シュトラウス)は色を押さえつつもゴージャスでエレガント。

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一方、「火の鳥」はコケティッシュなほどカラフルに。

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ミッソーニの、お得意のニットによる幾何学模様を生かした1990年サッカー、イタリアW杯開幕式の際の「アフリカ」。

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ジョルジョ・アルマーニの、Joaquín Cortésのためのフラメンコ衣装には思わず、「うーん、なるほど」。

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アントニオ・マラス、「真夏の夜の夢」のティタニア。

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ふつうはロングが多い、「魔笛」の夜の女王。幻想的だが若々しいドレスは、ロメオ・ジリによる。

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カール・ラガーフェルドの「カルメン」。

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プレタポルテでもオートクチュールでもない、舞台での衣装だからこそ、より自由に遊べる面もあるだろう。
そしてやはり、個性豊かな登場人物それぞれに、個性豊かな衣装を与えつつ、全体をきちんと見事に調和してみせるのはさすが。考えてみれば、毎年新しいコレクションを発表するファッション・ショーだって、そういえば立派な1つの舞台。だから彼らにとっては、総合的に演出することなど、朝飯前なのかもしれない。

この規模の企画展にしては期間が短く、今週末、5日(日)までなので、ローマの方はお早目に。ミラノその他の方には幸いなことに、このあとブレシャに巡回することが決まっている。

ちなみに、タイトルの”Il teatro alla moda”は、ヴェネツィアの作曲家、ベネデット・マルチェッロの書いた小冊子のタイトルと同名なのだが、この冊子についてはまたそのうち。

(写真はすべて、www.corriere.it より拝借)

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1° dicembre 2010
by fumieve | 2010-12-02 07:59 | 見る・観る
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