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ヴェネツィア ときどき イタリア

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シュナーベルと、イタリア統一@コッレール美術館

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サン・マルコ広場にあるコッレール美術館(Museo Correr)で開催中の2つの企画展を見た。

「ジュリアン・シュナーベル」展
Julian Schnabel Permanently becoming and the architecture of seeing
Museo Correr, Venezia
4 giu – 27 nov 2011
www.museiciviciveneziani.it

アーチストで、近年は映画監督としても知られるジュリアン・シュナーベルの作品展。
ナポレオンが作らせた、広い舞踏の間に置かれた巨大な作品。
階段の、壁の隙間を利用して展示された、うっかりすると見逃してしまいそうなところにある作品。顔のない肖像画、割れたお皿を貼りつけたキャンバスの上に絵を描いたシリーズ。
なるほどねーと思える作品もあるし、限られた展示空間をうまく生かしたいい展示だと思う。だが、特に抽象絵画を含むこうした前衛的な作品の場合、作家の略歴も、個々の作品の説明も一切ない展示は少々乱暴ではないだろうか?
作品はそれ自体が独立したものであって、くどくどと説明が必要だとは思わない。それでも、あまりにも情報が少なすぎるのはいかがなものか。




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好きだったのは、「海」という作品(The Sea, 1981)。
同じ皿割作品でも、これは天使や壺などの形を残したテラコッタを貼りつけたもので、その前に、ヴェネツィアでブリコラ(bricola)と呼ばれる木の杭を置いてある。シュナーベルには珍しいほうにあたる具象画といえ、いかにも「海」っぽくて楽しい。
立体作品の魅力は、写真ではなかなか伝わらないのが残念。


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「イタリア統一を待つヴェネツィア(1859-1866)」展
Venezia che spera L’unione all’Italia (1859-1866)
Museo Correr, Venezia
16 mar – 31 dic 2011
www.museiciviciveneziani.it

1861年に「統一」を果たした近代イタリアは、今年150周年。その時点で最初に首都になったトリノ、ローマを中心に、全国でそれに関するイベントや展覧会が行われている。
・・・といっても、ヴェネツィアはその「イタリア王国」に併合されたのが1866年だから「150周年」と言われても「まだだもんね・・・」という感じだし、そもそも全国統一というよりはどちらかというと独立の機運が強いと言おうか、中央(ローマ)を全く信用していないヴェネツィアでは、お役所的上からの行事はともかく、市民の間で祝祭的な雰囲気は全く感じられない。(どこかでお祝いしている人はいるのかもしれないが。)そもそもローマの併合はさらに遅れて71年まで待たねばならないから、ローマだって市民的にはどうなの?ってとこだと思う。
そんな市民的には盛り上がらない、だが、お役所的には一応やっている企画展の1つ、「統一イタリアを待つヴェネツィア」展は、私も個人的にあまり興味がなかったのだが、まあせっかくなので一応行ってみた。
当時の地図や、オーストリア占領下のヴェネツィアの写真、また、その時期に建造された本土とヴェネツィア本島を結ぶ鉄道橋を描いた絵など、まあその頃の歴史に興味のある人には、それなりに面白いであろうものが並ぶ。
ところが、私のツボにはまったのは、1866年の「新写真」というタイトルのアルバム。
名刺よりちょっと大きいくらいのカードサイズの写真がずらりと貼られたアルバムなのだが、いわゆる職業別服装一覧、と言ったところか。
最初のほう、お張り子や麻糸紡ぎ、レース職人(と思われる)など、働く女性がいろいろと登場しているのもなかなか興味深いし、ダンサーや喜劇役者など、お約束の服装をした男女もいるし、ヴェネツィアのことだからもちろん、漁師や船漕ぎもいる。ところがびっくりしたのが、物売りの数と種類の豊富なこと。それも、ほうき売りや(今も見かけるような)傘売りなど、生活雑貨を売る人もいるのだが、それ以上に圧倒的に食べ物が多い。きのこ売り、水売り、いちじく、チーズ、かぼちゃ、すいか、牡蠣、シャーベット(!)、かに、貝、たこ、トマト、オレンジ、メロンにマカロニ・・・。おどろくべきことに、フリトレ(fritole、フッリッテッレfrittelleのこと)という今はカーニバルの定番となっている揚げ菓子を売る母娘もいた。
そういえば、江戸の物売りもこんな風に豊富だったのではなかったか。

ほかに、写真のような絵で知られるイッポーリト・カッフィのデッサン帳、「ヴェネツィア駅のオーストリア兵たち」のスケッチなども目にするのは貴重な機会だが、もう1つ、ヴェネツィアならではの楽しい展示は、1866年統一時に、国王のムラーノのガラス工房訪問を歓迎して用意されたという品々。細かい、赤・白・緑のイタリア国旗の色のビーズを使ったベルトやピン、小さな旗。
そしてこれは確か、ふだんはムラーノのガラス博物館に展示されているものだと思うが、ガラスで作った超ミニチュアの、国王ヴィットリオ・エマヌエーレ2世らの顔。ムッリーネ(murrine)と呼ばれる、金太郎飴方式に作ったわずか数ミリの「顔」は、その技に感嘆するしかないのだが、その仕組みを見せるためなのか、金太郎飴より少し太めに作ったそのかけらをわざわざ斜めに切ったものがあって、当然のことながらその「顔」がびよ~~~んと横に伸びている・・・。(これこそ、写真が見つからないのが残念・・・)
全体にいかめしい「国家称揚」的展示の中の「びよ~ん」に笑ってしまった。

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(まんなか2枚の写真は公式サイトより拝借。上下の2枚は、美術館入り口の踊り場に展示されている、シュナーベルの作品。)

17 agosto 2011
by fumieve | 2011-08-18 17:12 | 見る・観る
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