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ヴェネツィア ときどき イタリア

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第68回ヴェネツィア映画祭・2 まずは笑って

Carnage
Roman Polanski、仏、独、スペイン、ポーランド、 79’
Jodie Foster, Kate Winslet, Christoph Waltz, John C.Reilly


わーーーっはっはっは!!!
いやあもう、最初から最後まで80分、ほぼ笑い通し。子ども同士のけんかのカタを(穏便に)つけるために、話し合いを設ける2組の夫婦。なにしろ話が途中から始まるので、まずその事情がわかるまでにちょっと時間がかかる。暇を告げる夫婦、最初は、イタリア人にもありがちな「さようなら」のあとの話が長いだけなのかな~と思って見ているのだが、押したり引いたり、泣いたりわめいたりで結局そのまんまずーーーっと。
たずねて来た方はちょっとスノッブな夫婦、美しく決めたケイト・ウィンスレット、弁護士の夫にはひっきりなしに携帯に電話が。一方、迎え入れたほうはいかにも中流アメリカ家庭、といった風情だが、奥さんであるジョディー・フォスターはアフリカ事情などに詳しい作家で、夫は金物屋(といういい方が現在も存在するのかわからないが、鍋や水道栓を売っていると言っていた)。夫婦対夫婦の言い争いのはずが、話題が飛んで事態が変化するに従って、敵味方が次々入れ換わる。
もともとYasmina Rezaというフランス人作家による戯曲と聞いて納得。たった一部屋プラス・アルファで展開する、セリフと演技が命のこの内容は、確かにいかにも舞台らしいし、ぜひ舞台でも見てみたい。
映画はともかく、この4人の役者さんがズバリで最高!!!
ばかばかしく楽しい、こういう映画は大好き。




Saideke balai (Warriors of the Rainbow: Seediq Bale)
Wei Te-Sheng、中国、台湾、150’
Da-Ching, Umin Boya, Landy Wen, lo Mei-ling


大日本帝国占領下の台湾。
「文明化」「近代化」という名の下に行われた強制労働や日本語教育は、町だけでなく、山の中の少数民族らにも、当然のように及んだらしい。
厳しい制圧の中での彼らの屈辱と誇りが、もともとは反目しあっていた民族の違いを越えて一致団結し、ある日反乱を起こす。

意外に思われるかもしれないが、実は私の初の海外旅行は台湾だった。
日本のような大都会で、でも町の中には漢字のみの看板が並ぶ、やはり完全に中国な台北で、レコード屋(死語?)は日本のポップスやアイドルのレコードでいっぱいだった。一番人気は、確か中森明菜(古いっ!?)だと聞いた気がする。
中国本土と違って、およそ50年にわたる日本の支配は、台湾では比較的「いい」時代だったと言って、当時を知る世代でも親日派が多いこと、したがって若い世代でも、日本語を学ぶ人が多いと聞いて、ふーん、と思ったのだが、事実はそんなに甘くなかった、ということだろう。
自分の国のことなのにほとんど無知なことを恥じつつ、映画としては、うーーーん・・・。これは完全に好みの問題なのだが、どうも中国やアジアの歴史、伝説ものが苦手。なんというか壮大すぎるというのか、それでいて妙にファンタジーっぽく、かつCGの多様が目立ちすぎるというか・・・。うーん。

Un été brûlant
Philippe Garrel、仏、伊、スイス、 95’
Monica Bellucci, Louis Garrel, Cèline Sallette, Jérôme Robart


フランス映画は、好きなものはすごく好きなのに、なぜかこの映画祭では毎年のようにビックリするくらい退屈なフランス映画がお約束のようにコンペに登場する。
イタリアの誇る(?)お色気女優、モニカ・ベッルッチが出産直後のヌードを披露したというので期待を集めたこの映画、ほんとに話題といえばそれだけかも・・・。


A Dangerous Method
David Cronenberg、独、カナダ、 99’
Keira Knightley, VIggo Mortensen, Micheal Fassbender, Vincent Cassel


フロイトとユング。20世紀初めの偉大な精神医学者、心理学者の、二人の交流の物語かと勝手に思い込んでいたら少々違って、ユングとその元・患者で弟子となったサブリーナという女性との愛の物語だった。もちろんその中には、若きユングがフロイトを師匠として慕い、長く深い交流の末、最後は考え方の違いで決裂するところまでが伏線として描かれているのだが。
核心に触れる部分は省くが、内容は深く重い。だが、見ていてずっしりと気が滅入らないのは、その映像の美しさのため。ユングの勤めるチューリヒの湖のほとりの病院。その湖のはかない光の中を行くヨット。ウィーンのフロイトの書斎。一緒に歩く公園。カフェ。やりとりされる手紙の数々。遠景もアップも、どちらも完璧で、だから重いはずのストーリーが、あたかも美しい物語のように提供される。
それがまた、映画の楽しみの一つ。途中、ストーリーのキーになるワグナーをはじめ、音楽も◎。

02 settembre 2011
by fumieve | 2011-09-03 06:26 | 映画
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