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ヴェネツィア ときどき イタリア

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「日本のデザイン 美意識がつくる未来」 原研哉・著

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「幸いなことに、日本には天然資源がない。そしてこの国を繁栄させてきた資源は別のところにある。それは繊細、丁寧、緻密、簡潔にものや環境をしつらえる知恵であり感性である。天然資源は今日その流動性が保障されている世界においては買うことができる。オーストラリアのアルミニウムも、ロシアの石油も、お金を払えば帰るのだ。しかし文化の根底で育まれてきた感覚資源はお金で買うことはできない。求められても輸出できない資源なのである。」

序文から、うんうん、と引き込まれるように読んだ。




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日本から見ると、イタリアというのは何やらカッコいい、モダン・デザインの強い国なのかもしれない。だが、デザインというとイタリアでは、むしろ日本のほうが「カッコいい」の先端を行っている。ただそれは、英語圏の人々が「クール」と呼ぶのとはちょっと違うような気もする。イタリア人にとっての日本のカッコよさは、うまく説明できないが、もっと地に足のついた、というのだろうか、もっと身近な感じがする。
実際、インテリアや建築雑誌などで、日本のデザイナー、建築家の名前が出ないことはほぼあり得ないし、ヴェネツィアで建築大学に通う学生に「好きな建築家は?」と尋ねれば、日本人の名前を挙げる人がかなり多いはず。
イタリアというよりもこれは国際レベルになるが、ヴェネツィアの建築ビエンナーレでは、昨年2010年が日本の妹島和世さんが総合ディレクターを務めたほか、毎回、入賞者や話題の人として、日本人の名前に事欠かないのはやはりその世界的な傾向の表れだろう。
「デザイン」という、ハードとソフトの間のような、その2つをつなぐような仕事において、日本という国は、たぶん日本の中にいて思っているよりもずっとずっと、注目されている。

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そして、デザインの過去を振り返るのではなく、未来を考えるデザイン。2000年から著者が行ってきた、未来を考え、提案し、想像させる日本のデザインの企画展が、パリ、ロンドン、そして北京と、次々と成功を収めているのは十分に想像できる。そのうちの1つが、2009年、ミラノで行われた”Tokyo Fiber ’09 Senseware”で、その企画から実現にいたるまでの紹介は、この展覧会が今でも忘れがたいものの1つであるだけに、とくに興味深く読んだ。

未曾有の被害をもたらした震災と津波、そして今なおまだ、原発事故という大きな不幸に直面している日本が、これからどう立ち直っていけるのか。いや、立ち直っていかなくてはならないのか。日本の未来に向けて著者は次々と提案を出す。
日本がやるべきことが何なのか、そういうと堅苦しくなってしまうが、これを読むと、今までの日本がなぜこういう発展を遂げてきたのか、そして実は、これまで通りにやっていけばいいんだ、ということがわかる。いままで通り、ただし、よく考えながら。

日本語を学ぶ、もはや自分の息子と言ってもいいお年頃の学生と話をする機会があった。なぜ日本語を選んだの?という質問に彼は、もともとまず語学が好きだから、と前置きをしたあと、「日本は唯一無二だから」。NYも、人種のるつぼであり、摩天楼が立ち並ぶという意味では唯一無二かもしれない、だが日本はそうではなくて、文化や歴史の深さといった点で何ものにも代えがたいものがある、と。
決して驕ることなく、だが、それはありがたい賛辞とそして力強い応援として、素直に受け止めることにしよう。

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1° dicembre 2011
by fumieve | 2011-12-02 06:40 | 読む
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