ヴェネツィア、アッカデミア美術館
2月26日まで
Omaggio a Lorenzo Lotto
I dipinti dell’Emitage alle Gallerie dell’Accademia
Venezia, Gallerie dell’Accademia
Fino al 26 feb 2012-02
16世紀ヴェネツィア派の画家の一人、ロレンツォ・ロットの企画展。
といっても、
昨年、ローマで開催された大規模なものとは違い、何年も前から改装工事中のアッカデミア美術館で、作品をいろいろ移転しているその隙間のスペースを利用して行われているミニマムな企画展。数年前からヴェネツィアでありがちな、企画展というよりは特別「一点見せ」に近い。
メインは、サンクトペテルブルグのエルミタージュ美術館所蔵「夫婦の肖像(ジョヴァニ・マリア・カッソッティとその妻ラウラ・アッソニカ?)」。
テーブルにかかったタピスリー(絨毯というべきか)をはじめとする、写真かと見まごうばかりの写実的な画面、それでいて何やらミステリアスな雰囲気に包まれ、実はさまざまなシンボルでいっぱいの、ロットの真骨頂と言ってよい肖像画。
女性の頭のドーナツ型の飾りはロンバルディア地方独特のもの、首にはもちろん乙女や新婚の女性のシンボル、真珠。左腕に抱える子犬ももちろん、貞淑のシンボル。より不思議なのは夫のほうで、左手には、”Homo num/quam”と書いた紙を持ち、もっともこれは結婚式で使われるキリストの言葉を短縮したものなのでいいとして、右手では、よく見るとテーブルの上で、両手で顔を覆ってうずくまるリスを指さしている。うーん、さすがロット。やっぱり変わっている。このリスの意味については、以前教わった気がするのだが、全く思い出せない・・・。(誰かご存知だったら教えてください。)
この絵は、ロットの作品の中で唯一、構図の素描が残っているものだそうで、写真が並べて展示されている。この素描の本物が同時に展示されていたら、展覧会の価値も跳ね上がったのだが・・・。
もう1つ興味深かったのは、彫刻家ヤコポ・サンソヴィーノとの関係。
残念ながら画像が見つからないのだが、1542-3年ごろ、ほとんど同じような構図で、ロットは板に油彩(ウィーン歴史博物館蔵)、サンソヴィーノはブロンズのレリーフ(フィレンツェ、バルジェッロ国立美術館蔵)で「救世主キリストの勝利」を描いている。どちらかがどちらかに影響しているのは間違いなく、だが、どっちが先か、特定できていないらしい。あるいは、共同で構図を考案したことも考えられる。
ローマからやってきて、ヴェネツィアにローマの端正なルネサンス建築・彫刻を持ちこんだサンソヴィーノと、常にシニカルで王道からは一歩も二歩も外れたロットと、その構図から見ると、どちらもそれらしく、と同時にどちらもそれらしくないように見えるから不思議。
お互いの能力を認め合っての共同作業だと想像すると楽しい。
(でもやっぱり、何かが「変」なロット・・・)
20 feb 2012