今回、唯一全く初めて行ったところ、というのを差っ引いても、この1週間の旅で、もっとも強烈な印象を受けたのはマテーラ(Matera)かもしれない。ちなみに、今回はプーリア(Puglia)州を中心に旅をしたのだが、このマテーラのみ、バジリカータ(Basilicata)州にある。
アルベロベッロから車で、約1時間くらい、といわれたが、実際は1時間半くらいかかっただろうか。最初のうちはよかったのだが、マテーラにそろそろ近づいてきたと思われたあたりから、道がかなり悪くなった。農道とかいうわけではない、舗装されている車道にも関わらず。
そうして、近づいてはいるはずなのに、一向にそれらしきものが見えない。かなりなだ~らかな、だが、イタリアの中部や北部の緑豊かな丘陵地帯とも違って、農地というよりは牧草地なのか、荒れ果てたような、打ち捨てられたような中を延々と走るのだが、その洞窟住居群なるものが、遠くから見えてもよさそうなものの、まったくそのカケラもない。
何も見えないのは、Matera市に入ったことを示す看板のところまできてもなおまだ同じ。
ようやくたどり着いたらしいところは、ごく普通の、中規模の町???・・・そこを通過して、ふっと視界が開けたと思ったら、その目の下に、いい具合に色のさびれた、まるで絵の中のような風景が広がっていた。
ドゥオーモ(大聖堂)を頂上にいだく、「サッシ」と呼ばれる旧市街一体は、思っていたほど「洞窟」な感じはせず、ペルージャやマチェラータなど、イタリア中部の町に似ている。丘の上に町があって、石造りで、坂道と階段が迷宮のように入り組んで・・・。ああ、でもやっぱり、石の色が南っぽい、か・・・。
そして、谷の底の川をはさんで反対側には、確かに「洞窟」らしい、穴がたくさん見えている。
「洞窟住居」というからには、全部ああいうところなのかと思っていたが、少なくとも、この町の側はそうではないらしい。ただ、表向きは、石造りの建物が丘にびっしり貼り付いているように見えているのだが、どうやら、洞窟を元に、まわりに(おそらく)そこから切り出した石を建材としてつけ足して、建物を作っていっているらしい。だから、ホテルもお店も、表からはわからないが、中の壁や天井は洞窟そのものだったりする。
正直、想像していたよりもずっと、むしろおしゃれでモダンで、いい意味で裏切られた。
町の風景をずっと眺めていたら、同じ石の色の上に、半円アーチや四角い形で切り取られた開口部が真っ黒に沈み、遠目にはちょうど、これもそのまま洞窟群のように見えてきた・・・。
29 ottobre 2012