ヴェネツィア派絵画の殿堂、アッカデミア美術館から、現代アート美術館であるグッゲンハイム・コレクションや、プンタ・デッラ・ドガーナへ向かう路地の途中にあるチーニ館(Palazzo Cini)。
ふだんは一般に公開されていないこの建物の前に、「金獅子賞」のニュースで行列ができた。
ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展、初参加のアンゴラ。
階段を上って会場に入り、まず誰もがあっと驚くのが、そこがすばらしいイタリア・ルネサンス美術コレクションを備えた邸宅であること。
見学はともかく、気が散る。なにしろ、
ピエロ・デッラ・フランチェスカや、
ジョットが、さりげなく壁にかかっていたりするから。
個人的にはさらに気になるこんなものも・・・。
美術館として、既に完全にできあがっているその空間の中に、シンプルな写真の、大きなプリントが積み上げられている。
人のいないベンチ。辛うじてもともとサッカーボールだったとわかる一塊のぼろ。朽ち果てた椅子。緑。片いっぽうの靴。
アンゴラの写真家、Edson Chagasが、ルアンダの町の中で撮った写真が、豪華すぎるインテリアの中で決して負けずに、といって強く主張するのではなく、静かにそこにいる。
ビエンナーレ全体の、総合テーマ「The Encyclopedic Palace(万物の館)」に合わせ、タイトルを「Luanda, Encyclopedic City(ルアンダ、万物の町)」としたキュレター、Paula Nascimentoは、これらの写真でルアンダの町のさまざまな表情を見せるのと同時に、ヴィジターがその中で好きな写真を持ち帰ることによって、またその人の「万物の館」ができること、そうやって「万物の館」が展示「館」を越えて外に出ることをイメージした、という。
ポスター大の写真を、好きなように持ち帰る「参加型」アートは、過去のヴェネツィア・ビエンナーレでもすでにいくつも登場している。
だが、印象的なその写真と、意外な会場の選定と、その全てが評価されたのだろう、もちろんちょっぴり、初参加というところも加算されたかもしれないが、金獅子賞にふさわしい、いい展示だと思う。
当初は、そのポスターを集めて持ち帰るための、赤い専用のファイルがあったのだが、受賞の翌朝、私が行ったときにはすでになくなってしまっていた。
たまたま、別の場所で持っていた女性を見かけたので、参考までに写真を・・・。
Partecipazione Nazionale Angola
Luanda, Encyclopedic City
Palazzo CIni, Dorsoduro 864(San Vio)
3 giugno 2013