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ヴェネツィア ときどき イタリア

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第70回ヴェネツィア映画祭・8〜閉幕、受賞作品紹介

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(写真は公式サイトより拝借)

2013年のヴェネツィア映画祭は9月7日(土)、15年ぶりに地元イタリアに金獅子賞をもたらして閉幕した。最優秀作品賞である同賞に輝いたのは、先日紹介した「サクロ・グラ(Sacro GRA)」
また、イタリアとしては最優秀女優賞に「カステッラーナ・バンディエラ通り(Via Castellana Bandiera)」のエレナ・コッタ(Elena Cotta)が選ばれた。舞台でキャリアの長い彼女は、なんと82歳。



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銀獅子賞、すなわち最優秀監督賞を受賞したのは、ギリシャのアレクサンドロス・アブラナス監督(Alexandros Avranas)の「ミス・ヴァイオレンス(Miss Violence)」。

冒頭、家族で11歳の誕生日を祝う少女が、なんとなくうかない顔をしているのが気になる・・・と思っていたら、そのパーティーのさなかに飛び降り自殺をしてしまう。
学校での成績もよく、いじめもなかった、登校拒否や何か不審な行動もなかった、とソーシャル・ワーカーに応える父親。だが、少しずつ少しずつ、その家庭の恐るべき事実が明らかになっていく。1つだけでも十分衝撃なのに、1つではない、たたみかけるように迫る真実に、胃がひっくり返りそうになる。
見たくない、考えたくない内容の後味のものすごく悪い映画、だが、あまりにも重いテーマはもちろんのもと、にも関わらず淡々と、まるでミステリーのように種があかされていく展開もまた印象的で、いろいろな意味で今回一番心にひっかかった映画だった。
主演のテミス・パヌ(Themis Panou)が、最優秀男優賞も受賞した。

Miss Violence
Alexandros Avranas監督、ギリシャ、99'
Themis Panou, Eleni Roussinou

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今回新設された「審査員大賞」は、ツァイ・ミンリャン(Ming-liang Tsai)監督の「ストレイ・ドッグズ(Stray Dogs)」に。
・・・これは実は、138分の上映時間中、うかつにもおそらく2時間近く爆睡してしまった者としては(すみません・・・)コメントする資格ゼロ。それはまず最初に、暗い部屋の中で家族がぐーぐー寝息をたてて寝ているシーンが長かったせいでもあるのだが、聞くところによると女性が壁に向かって立ち尽くすシーンが15分とか、ほとんどがそういう感じの、かなり「芸術的な」映画だったらしい。
受賞後の監督の言葉によると、先や結果を急ぐ現代社会へのアンチテーゼでもあったようで、まったくついていけなかった自分を深く反省。

Jiaoyou (Stray Dogs)
Ming-liang Tsai監督、台湾、仏、138'
Lee Kang-sheng, Lu Yi-ching, Lee Yi-cheng, Lee Yi-chieh, Chen Shiang-chyi

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さらに、特別審査員賞は、ドイツのフィリップ・グレーニング監督「Die Frau des Polizisten(警察官の妻)」。
一見、シアワセに暮らしているように見える若い夫婦と1人娘。まじめな警察官らしき男は、家庭でもよき夫、よき父親であるように、見える。
ところがその、シアワセに見える家が実は、DV(家庭内暴力)の舞台だった。過酷でストレスの多い仕事が原因?現代社会のひずみ?・・・いや、なんであろうと、家庭で男性が女性に暴力をふるうことは決して許されることではない。

イタリアでは最近、DV殺人が驚くほど増えている。(元)夫が(元)妻を、または(元)彼が(元)彼女を、殺める。あまりの多さに最近、DV対策法ができたにも関わらず、そんな法律制度をあざ笑うかのように事件は一向に減らない。
別れ話を持ち出されて、頭にきて突然ぶすっ、とか、バキューン、みたいな例もあるのだろうが、この作品のように、何かと日頃からパートナーに暴力をふるう男も多いのだろう。にも関わらず、まるで波の満ち引きのように、暴力の合間に見せる夫の甘い、弱い部分にだまされ、そこにすがる妻に、正直のところまったく同情もできない。が、やはりそういう例はきっとたくさんあるに違いない。
だがこの作品、その重い内容よりも、第1章、第2章・・・と紙芝居のように区切りを入れ、なんと60章近くに切り刻んだところが、より話題になった。

Die Frau des Polizisten
Philip Gröning監督、ドイツ、175'
Alexandra Finder, David Zimmerschied, Pia Kleemann, Chiara Kleemann, Horst Rehberg, Katharina Susewind, Lars Rudolph

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快活なユーモアあり、ところどころに涙ほろりあり、美しい映像にわかりやすいストーリー。映画館で見てごくふつうに映画として楽しめる、もっとも映画らしい映画といえる「あなたを抱きしめるまで(Pilomena)」。未婚で妊娠し、修道院に実質捨てられ、そこで産んだ子供を強制的に養子に出されてしまったフィロメーナ。50年経って、その実の息子を探す旅に出る。その伴をするのは、元記者、このお話で一気再生を狙うマーティン。美しいストーリーのはずが、肝心のフィロメーナは結構頑固で身勝手で、ごくふつうのおばあちゃんらしいところがかえって人間的で好ましい。軽いジョークやユーモアで難しい局面で観ている側に息抜きを与えるマーティンも◎。
映画祭期間中ずっと、評価は圧倒的独走で高かったが、映画館で観て楽しい映画らしい映画は、映画祭のコンペでは残念ながらあまり好まれない。大方の予想通り、脚本賞にとどまった。

Philomena di Stephen Frears - Regno Unito, 94'
v.o. inglese - s/t italiano
Judi Dench, Steve Coogan

最後に、新人俳優賞は、「ジョー(Joe)」のタイ・シェリダン(Tye Sheridan)に。これはほかに、新人らしき新人があまりいなかったこともあり、順当。
このリンクの一番上の写真の向かって右の少年)

(作品紹介はもう少し続きます)

9 settembre 2013
by fumieve | 2013-09-09 15:32 | 映画
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