今回の映画祭で上映された邦画は、もちろん「風立ちぬ」、「キャプテン・ハーロック」とアニメーションだけではない。
コンペティション外、特別招待で上映された李相日監督の「許されざる者」は、クリント・イーストウッド監督の同名の映画(英題はUnforgiven、1992年)のリメイク。だからほんとうはもちろん、オリジナルを見ていた方がより楽しめることは間違いないのだが、オリジナルを知らなくても十分に、これはこれで新しい1本の映画として楽しめた。
それはまず何よりも、北海道の自然を背景にしていることが大きい。
アカデミー賞も受賞しているオリジナルは、典型的なアメリカ西部劇だったのを、同地の、近代日本の黎明期の開拓民たちのストーリーに置き換えた。息をのむほど美しい、圧倒的に雄大で、だが厳格でときに冷酷な自然の中で、愚かな人間たちの営みがいかに小さく、むなしいものに見えることか。
真っ赤な血も、恨みも憎しみもすべて、降り止まぬ純白な雪が覆い隠してゆく。アメリカ映画のリメイクとは思えない、極めて日本的な美学に満ちた映画だと思った。
もちろん、その「人間たち」も秀逸。まずはともかく、「人斬り十兵衛」の渡辺謙さんのカッコいいこと。苦悩と葛藤の末に「人斬り」に戻る十兵衛は最後まで、その葛藤を引きずっている。それが自らの運命だとあきらめつつ・・・。
十兵衛と対決する大石一蔵(佐藤浩市さん)、十兵衛を誘い出したにも関わらずなんだか情けない金吾(柄本明さん)、そしてアイヌと和人のハーフでごろつきみたいな五郎(柳楽優弥さん)の名演にも拍手喝采。女優さんたちもなかなかいい味を出していたけど、これはやっぱり男の映画。
公式上映の日、残念ながら佐藤浩市さんはみえなかったけど、渡辺謙さん、柄本さん、柳楽さんの揃ったレッド・カーペットはなかなか豪華。謙さん、柄本さんはそれぞれ、奥様の南果歩さん、角替和枝を同伴されていて、とてもすてきだった。
でも、やっぱり、とにもかくにも、謙さん、めちゃくちゃかっこいいーーー。
(ちなみに、日本の映画の場合、レッド・カーペッド前はそれほど混雑しないので、たいていは十分余裕で「生」の監督さん、俳優さんがおがめる。「ラスト・サムライ」などでイタリアでもよく知られている謙さんの場合は、さすがにファンがボードを持って立っていたりしたけど。)
(映画祭ディレクター、バルベラ氏とおしゃべりしながら入場する謙さん。何をしててもカッコイイ!)
(上映後の、みなさんの背中。)
許されざる者 (Unforgiven)
Sang-il Lee 監督、日本、119'
Ken Watanabe, Jun Kunimura, Yûra Yagira, Kôichi Satô, Akira Emoto, Shioni Kutsuna, Eiko Koike, Ken’ichi Takitô
http://wwws.warnerbros.co.jp/
13 settembre 2013