ピレネー山脈の聖堂壁画群がなんといっても圧倒的迫力を誇るロマネスク部門だが、見どころはそれだけではない。
(Majestat Batlló、作者不詳、12世紀中頃)
1つは、木彫群。ピレネーに限らず、山間部では教会の中の彫像や祭壇画も木彫りのものが多いが、どちらかというとかわいらしい、お人形風の「北方の」木彫とはずいぶん違っている。面長で長身のキリスト像は、壁画の中の人物像にも通ずるのだが、かなりデフォルメ感のある絵画ともまた異なり、 中でもシンプルですっきりとしたラインの彫像は、むしろモダンにさえ見える。
(Cerdanyaのキリスト、作者不詳、12世紀後半)
(Santa Maria de Taüllのキリスト降架、作者不詳、13世紀後半)
もう1つは、板絵。
(Seu d’Urgell または dels Apòstolsの祭壇前面パネル、作者不詳、カタルーニャ、Taller de la seu d’Urgell. 12世紀第2四半世紀)
こちらは、祭壇の前面を飾っていたもので、つまりこんな感じ。
(Tosesの天蓋、作者不詳、カタルーニャ、Taller de la seu d’Urgell、13世紀前半)
(Sant Romà de Vilaの祭壇前面パネル、作者不詳、カタルーニャ、Taller de la seu d’urgell del 1200. 13世紀前半)
祭壇パネルというとイタリアでは例えば、ミラノの聖アンブロージョ大聖堂のレリーフが有名だが、こちらはすべて板に彩色。ただしよく見ると縁の部分や、ものによっては絵の中も細かい浮き彫りになっていたりする。
(Cardetの祭壇前面パネル、Iohannes、Taller de la Ribagorça.13世紀後半)
繊細な細工以上に何と言っても印象的なのは、その色。強い赤を中心に青、黄、と原色の対比が鮮やか。
そしてこちらは・・・
未完???
(Giaの祭壇前面パネル、Iojammes- Taller de la Ribagorça. 13世紀後半)
中には、
エジプトのコプト織りと呼ばれる6世紀頃の織物も。
(Fragment de teixit copte amb paniske en un <
>、作者不詳、エジプト、6-7世紀)
・・・うううっしびれる・・・これはさすがに、トリノのエジプト博物館にはかなわないけど、まさか、こんなものまであるとは思っていなかっただけに、あらためてそのコレクションの幅広さにためいきをつく。
そしてもちろん、ロマネスク建築といえば・・・のおもしろ柱頭もあり。
(Camarasaの柱頭、作者不詳、12世紀第4四半期)
これはアダムとイヴが禁断の実を食べてしまった場面だと思うが、アダムの隣は何だろう・・・?
着ぐるみか獅子舞のように見えるのは、人が獣に食われている様子だと思われるが、その頭の上にさらに鷲が???
展示室最後は、工芸品。これらのエナメルの聖遺物箱などは、リモージュのものだった。
(Sant Esteve、作者不詳、リモージュ、1210-20年)
壁画も祭壇画も、独自のスタイルが発達したのは、山の中という立地条件のためもあるだろう。交流が困難な上に、使用できる材料も限られていたはず。だが、こうして持ち運びのできる貴重品は、フランス(フランク王国)から入ってきていたのかと思うと、それはそれで興味深い。聖遺物が、いかに貴重で大切なものであったかを示しているよう。
Museu Nacional d’Art de Catalunya
http://www.mnac.cat/
22 ottobre 2013