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エドヴァルド・ムンク展、ジェノヴァ

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ノルウェーの画家の生誕150周年記念の企画展。
「叫び」があまりにも有名だが、その「叫び」以前、以後の彼の作品を丁寧に紹介する。



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まずは若年期。地元ノルウェーの自然主義や、パリで出会った印象派の影響を受けた作品は色使いも明るく光に満ちていて、あの「叫び」を暗示するものは何もないように思われる。だが、同じ部屋の自画像は、顔と襟首を残して周りが真っ黒に塗りつぶされているのが、とくに若い画家の自画像としては異質に思われる。

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その「予感」は次の部屋ですぐに「実感」に変わる。若い女が、うつぶせになった男の首に吸い付く「吸血鬼」。これはもともと画家は「愛と痛み」というタイトルをつけていたそうで、なるほどというのか、何というのか・・・ある意味、本物の吸血鬼よりもさらに恐ろしい。
そして、「病床の少女」のシリーズ。ベッドの脇に嘆く母親が付き添っているものと、少女の横顔だけのもの、いずれも悲嘆と暗雲に満ちているが、渦巻く怨念的なものとは無縁。
さらに「マドンナ」のヴァリエーション2枚。

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リトグラフと木版と、版画という手法を好んだのもこの画家の特徴で、面白いのは、例えば「橋の上の女たち」などでは、その両方を一度に使っているらしい。「橋」はもちろん、「叫び」と共通するモチーフである。

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その中で、はっと目を引いたのが「水浴をする人々」。曲線によるあいまいな輪郭で立つ一人は「叫び」を思わせなくもないし、輪になって座る人々はお互いに解け合って、表情はおろか体の輪郭すら怪しい。彼らは皆、裸のようだからもちろん夏なのだろう、だが、いかにも北の海らしい濃い深い青が水の冷たさを物語っている。「叫び」の不安感をここに見ることもできるのかもしれないが、私はむしろ、おだやかで平和な、とても美しい絵だと思った。パンフレットやポスターなどのヴィジュアル・イメージに使われていたが、印刷もインターネット上でも残念ながら全く本物の色が伝わっていない。

また、彼の作品のコレクターであったリンデ医師のコレクション。彼や妻、子ども達のに家、と、まさに家族全体の肖像をたくさん描いているが、繊細だが神経質というよりは暖かみも感じられ、まるで別の画家の作品のよう。全く知らなかったが、ムンクはそうして、多くの肖像画の依頼も受けていたらしい。

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また、オスロ大学の教室の壁画なども描いたそうで、その下絵はまるで絵本の挿絵のよう。これは実物がまだ存在するのだろうか?だとしたらぜひ見てみたいものだと思う。

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最後は、「ウォーホルから見たムンク」。すでに過去の著名な作品をいじっていたアンディ・ウォーホルが、1980年代にギャラリーの依頼で描いたらしい。100年近く経ってもまだ気になる、いや、100年経たずしてすでに歴史に残る傑作だったということだろう。

(下の2枚をのぞいて、作品画像はすべて http://www.ilsole24ore.com/ から拝借した。)

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Edvard Munch
Palazzo Ducale, Genova
6 nov 2013 - 27 aprile 2014
www.mostramunch.it

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22 gen 2014
by fumieve | 2014-01-22 23:29 | 見る・観る
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