ミラノのポルディ・ペッツォーリ美術館は、さすが貴族の邸宅美術館だけあって、絵画コレクションもまた、いかにも貴族らしく上品で優美な作品が多い。
聖母のマントも青の無地に金糸の縁取りレースだけ、と、都会的で洗練されたスタイルを好んだ
ボッティチェッリだとすると、同時代の多くの画家は、生地の模様を精密に描きこみ、作品に豪華感を出すとともに、その写実性で自己の能力を示したところもあるのかもしれない。
「布」の扱いで言うとそのボッティチェッリに近いのが、
ピントゥリッキオ(Pinturicchio、またはピントリッオ、Pintoricchio)。イタリア中部のペルージャ生まれ、修業を積んだのも当時一世を風靡していたペルジーノの工房だったが、どちらかというとヴェネツィア派を思わす、深い色合いが特徴。
細かい部分の繊細な描きこみと構図のよさ、対比する色、補色を使いながらも落ち着いた雰囲気を醸し出すその全体のバランスと、私の大好きな画家の1人で、その中でもこの「聖母子と聖ヨハネ」は特に好きな作品の1つ。
円形の板絵は、言わずもがな当時のとくにフィレンツェの流行だった。
織物の豪華感を全面的に打ち出しているのが、ヴェネツィア出身の画家、ラッツァロ・バスティアーニの「音楽を奏でる天使と三位一体のある聖母子像」。 マンテーニャの影響が大きいが、初期のジョヴァンニ・ベッリーニにも近い。
この聖母のマントが、すごい。
2001年に修復されているそうだが、見れば見るほど、ほんとうに上等な深紅のビロードが貼り付けられてるのでは?と目を疑ってしまう。ビロードの毛羽のやわらかさ。その模様織りの複雑さ、そして立体感。いったいどうなっているのか・・・。
模様は、15世紀イタリアの高級織物で普及した「アザミの花」と呼ばれるモチーフ。手前にきている部分は、きゅっと詰まっているのでわかりづらいが、左肩の側を見ると、その「アザミ」の花の下に、首がにゅうるっ出ているタイプで、これは「グリッチャ(a griccia)」と呼ばれ、15世紀後半に流行した。
(下のビロードの写真は、http://www.thais.it から拝借。)
ご参考までに、以下はナポリ、カポディモンテ美術館の「聖セヴェリーノと聖人たち」。(たまたま以前写真を撮っていたもの。・・・超豪華(笑)!!!)
ポルディ・ペッツォーリ美術館には布のコレクションもあって、これに近いビロードもある。
(途中別記したものをのぞき、ポルディ・ペッツォーリ美術館内の写真はすべて、許可を得て撮影しています。)
ポルディ・ペッツォーリ美術館、ミラノ
http://www.museopoldipezzoli.it/
21 feb 2014