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ヴェネツィア ときどき イタリア

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勅使河原三郎KARAS + 庄司紗矢香、Lines @マリブラン劇場

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音を導き出すように、先に始まった男性ダンサーの「体」は、そう、水の中にたらりと落としたインクが、その中でゆらゆらとゆれる様を思わせた。無重力ではないけれど、重力に浮力が加わったような、軽やかでしなやかな動き。
そしてヴァイオリン。
人の息を使うから、より人の声に近い、温度を感じさせる管楽器と違い、弦楽器はやや無機質でそれでいて音階の決まっている管と違い、よりなめらかで、まさに流線型。
ダンスとヴァイオリンと、目で追っている動きと、耳に入ってくる音と、別々に知覚しているはずのものなのに、ヴァイオリニストの腕と弓の動き、ダンスの最小限なステップの音のためもあるだろう、それがニ重奏のようであり、ペアのダンスのようにも感じられる。舞台の上に、ずっと見えない帯が横になった8の字を描いているような。
音が消え、明かりが落ちて、その次は女性ダンサーとヴァイオリン。より滑らかに、より繊細に。だが、変に女性の色気をこびるものではない。
次は2人と1人の三重奏、さらにダンサー2人のみ。ここでの男女は、あくまでも対としての存在であり、王子様とお姫様のクラシック・バレエでのペアとは全く違う。(それはそれで好きなのだけど。)引いて押して、逃げて追って。決して触れあわず、だが同じグラスの水の中で揺れ動く2つのインク滴のように、同じ空気を共有し、空気を通じて呼応し合っている。
そしてまた、ヴァイオリンとともに。ここもまた、引いては返す波のように。






第9回国際現代ダンス祭、「ビエンナーレ・ダンツァ」が19日、開幕した。
これは、ヴェネツィア・ビエンナーレの1部門、コンテンポラリー・ダンス部門なのだが、「ビエンナーレ(biennale、1年おき)」と名乗っていながら、音楽、シアター部門同様、ここのとこ毎年開催されている。
中でもダンス部門は、まだ独立して今年9回目と若いこともあって、その内容から時期から、すべてがまだまだ実験的。ワークショップが中心の年もあったり、ダンスの「オークション」があったり、と、例年の行事の割に仕組みがわかりづらい難点はあるが、それだけに今年は何があるのだろう?と楽しみでもある。
ヴェネツィア市内の大小の劇場や、広場のあちこちでプログラムが組まれているほか、先日紹介した通り、今年は、建築ビエンナーレの会場内、アルセナーレにいくつかステージが作られていて、6月29日まではそこでも随時パフォーマンスがある。

オープニングを飾ったのは、日本のコンテンポラリー・ダンサーで振付家、勅使河原三郎さんのKARASと、ヴァイオリン奏者、庄司紗矢香さんという夢のようなユニット。
勅使河原さんは、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場でもオペラ「ディドーとエアネス」の演出を行なったこともあり、ここではすでにおなじみ。(この、ビエンナーレ・ダンツァにも以前にもいらしたことがあるような気もするのだが、未確認)
また、庄司紗矢香さんは、すでに国際的に活躍するヴァイオリニスタだが、なんといっても、イタリア一のヴァイオリン・コンクール、パガニーニ国際コンクールで1999年、史上最年少で優勝したこともあって、イタリアでも人気が高い。

そんな夢の競演による新作、Lines 。今回はワールド・プレミアムで昨晩のみの公演だったが、またどこかで再演されることを期待したい。

なお、ビエンナーレ期間中、勅使河原三郎/KARAS はもう1つ、Eyes Off という作品の公演あり。こちらも、ワールド・プレミアム、ヴェネツィアの画家ジョルジョーネの「裸婦像」に捧げた作品ということで、これまた興味深い。

Eye’s Off
Ca’ Giustinian/ Sala delle colonne
21, 22 giu h16.00, 17.00

Lines
Teatro Malibran
19 giu 2014

Biennale Danza 2014
mondo novo. gesto luogo comunità
19-29 giugno 2014
http://www.labiennale.org/it/danza/9-festival/index.html

20 giu 2014
by fumieve | 2014-06-20 17:04 | 見る・観る
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