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第71回ヴェネツィア映画祭・4〜孤独な男たち

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「生きる」ため、とはいえ、ここまで徒党を組む男たちばかりを見てきたせいか、孤独な男の登場と、そのカッコよさに唸った。



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1954年、アルジェリアの対フランス独立戦争中。
一言で言うならば、アラブ語を流暢に(たぶん)しゃべる白人と、フランス語を少し話すアルジェリア人との、予期せぬ砂漠冒険物語。2人は友人でも仕事仲間でもない。
一方は、砂漠の中にぽつんと建つ学校で、子どもたちにフランス語の読み書きを教える今教師、一方は、その彼に強引に押し付けられた、従兄弟を殺した疑いで逮捕された男。
町の警察までその男を連行してくれとの頼みを、教師は一旦は断るものの、やむを得ず、2人で砂漠の旅に出ることになる。・・・それも、徒歩で。
何事もなければ、1日で行って帰って来れる距離らしい、だが、ただでさえ厳しく激しい気候の砂漠、独立のための内戦中のかの地では、敵や障害が次々と現れる。
そして目の前で繰り広げられる、あまりにも不条理で唐突で、無駄な死の数々。
友情とまではいかない、だが、いつしか一種の「同じ釜の飯」的な感情が生まれる。
実は、家族を守るために、自分の死を覚悟してきたというムハメッドに、教師は強く声をかける。「生きろ!」と。彼もまた過去を背負って生きてきたのだった。

Loin des hommes、仏、110’
David Oelhoffen監督
Viggo Mortensen, Reda Kateb

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町の片隅の、錠前屋のおやじ。
泥臭く、わがままで頑固な老人を演じたのはアル・パチーノ。何十年も前に別れたらしい妻を今だに忘れられず、彼女の面影と思い出に埋もれて生きる姿は、狂人一歩手前。ビジネスで成功しているらしい息子とは、(お互いに)なるべく接することなく生きている。それにしても、やり手の息子はここでもまた、法に触れていることが露見するのはなぜだろう?世界中の金持ち=悪者、ではなんだかほんとに世の中やりきれない。堅気一本やりで汗水たらして働いて、一代で富を築き上げた苦労人、みたいな人はもはや、今の映画界ではあり得ないらしい。さらに、力強く親切な善人、なんて人が出てきたら、かえって新鮮なのではないだろうか?・・・あっそれを解決するために、スーパーヒーローが登場するのか・・・。
それはともかく、すっかりと老けたかつての「ゴッドファーザー」が演じる老人は、まるでアル・パチーノその人そのままのように見える。現実にはもちろん、同じ現役とはいえ映画俳優で、何十歳の若い彼女を連れた彼本人と、年金を受け取りに行く銀行で、窓口の女性を一生懸命くどく老人とは全く別人なのだろうけど。

Manglehorn、米、97’
David Gordon Green 監督
Al Pacino, Holly Hunter, Harmony Korine, Chris Messina

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アル・パチーノはもう1本、コンペ外で上映された「The Humbling 」(Barry Levinson監督)という作品でも登場した。残念ながらそちらは見逃してしまったのだが、会場近くを歩いていたら、たまたま、ちょうどご本人が空港からボートで到着するところに出くわした。
(背後から激写・・・)

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1° settembre 2014
by fumieve | 2014-09-01 14:07 | 映画
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