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ヴェネツィア ときどき イタリア

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カナレット - ブルストロン、ドージェの祝祭

Canaletto - Brustolon, Feste Ducali
Rami e Stampe dalle collezioni di Museo Correr
カナレット - ブルストロン、ドージェの祝祭_a0091348_9163133.jpg

Museo Ca' Rezzonico
Fino al 11 dicembre
http://www.museiciviciveneziani.it/frame.asp?musid=124&sezione=mostre

カナレット - ブルストロン、ドージェの祝祭
コッレール美術館所蔵品より、銅板と版画
12月11日まで

18世紀、英国の良家の子弟たちは成人になる頃、その教育の仕上げとしてグランド・ツアーと称して欧州大陸、特にイタリアへ見聞旅行へ出かけた。ローマ、ナポリ、フィレンツェ、そしてヴェネツィア。
現代の観光客が、その記念に絵葉書を買うように、写真がなかった時代、彼らが国へ持ち帰ったのが精密な風景画だった。特に、ヴェネツィアの画家、カナレットのそれは、よき仲介者(宣伝者)を得たこともあり、飛ぶように売れた。今でも、英国内の美術館に多く作品が残るのはそのためだ。
油彩画の複製廉価版、あるいは油彩画を発注するためのカタログとしても普及したのが、銅版画だった。
自ら筆をとってオリジナルな作品を生み出すカナレットが画家(芸術家)ならば、その下絵をもとに版を起こすブルストロンは本来は職人というカテゴリーに入るだろう。が、下絵にいかに忠実に、かついかに銅版の特徴を生かしつつそれを実現するかは、芸術的な職人技と呼んでいいだろう。
カナレット - ブルストロン、ドージェの祝祭_a0091348_9181612.jpg
今回の、非常にめずらしい展覧会では、銅版の「版」と、版画を合わせて展示している。もともとなら日の目を見ることがないはずの「版」だが、そこには職人の手の跡が直に残っている。それにしても、なんという細かさであろうか。カナレットの下絵もかなり細密にわたったものらしいが、銅版に先に細い鉄筆で彫っていく作業は、水彩の筆とはずいぶん違う。まさに気が遠くなる作業だ。
描かれている内容も興味深い。ヴェネツィアの新ドージェ(総督)の選出後の、一連の祝祭の様子を12枚の版画にまとめている。サン・マルコ広場やサルーテ教会といったお得意の風景のほか、サン・マルコ大聖堂、パラッツォ・ドゥカーレ(総督館)など建物内部の詳細な描写の中に、それぞれの行事が描かれている。
カナレットの多くの絵画が「風景画写真」なら、これは「報道写真」といったらいいだろうか。風景画では、人々はあくまでもその風景の一部だが、ここでは風景はあくまでも背景で、絵の中心はドージェとそれを囲む「人々」だ。もっとも、そのドージェは目を凝らして気をつけてみないと見つからないくらい小さく、祝祭の祝祭はあくまでも一般の人々、といったところも面白い。
大英博物館をはじめ、各地に残るというカナレットの下絵、また影響されて描かれたというルーヴル美術館他に残るフランチェスコ・グアルディの油彩なども合わせて見ることができたら、と思うのは無理難題というものだろうか。が、これだけでもたっぷりと楽しめた。

7 dicembre 2006
by fumieve | 2006-12-08 09:29 | 見る・観る
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