人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

ヴェネツィア ときどき イタリア

fumiemve.exblog.jp

抜け目のない未亡人

La Vedova Scaltra
Teatro Fenice

抜け目のない未亡人_a0091348_5181844.jpg


抜け目のない未亡人
台本 マリオ・ギズアルベルティ
(カルロ・ゴルドーニの原作による)
音楽 エルマンノ・ヴォルフ・フェッラーリ

フェニーチェ劇場

日本でいういわゆる「オペラ」は、イタリア語では「作品」という意味で、歌劇のみならずどんな音楽作品でも、また造形・美術作品もみなオペラ。「歌劇」は通常、opera lirica(オペラ・リリカ)という。それに対し、上演される数はぐっと少ないが、opera buffa(オペラ・ブッファ)というのは、喜劇のこと。Liricaはもともと古代ギリシャの抒情詩のことだし、一方、buffo(a)というと、「おかしな」とか「くだらない」といった意味の形容詞で、その違いなのだが、だいたい、「リリカ」「ブッファ」という音の違いが全てを表しているようにも思える。

ヴェネツィアの喜劇作家ゴルドーニ原作、エルマンノ・ヴォルフ・フェッラリ作曲という組み合わせは、昨年の”Quatro rustighi” (「4人の田舎もの」)に引き続き2回目。
どうやらフェニーチェ劇場は、このカルネヴァーレの時期に1つ「ブッファ」を上演することにしているらしい。昨年の作品の印象といえば全編これでもか!とヴェネツィア弁でやっていたことくらい。正直のところ特別に面白いとも思えなかったので、今晩も実は、あまり期待せずに出かけたところ、これが大当たり。

お話は単純。
若くて美しい未亡人。嫁いだ相手は70歳の資産家だったため、遺産を受けついてお金持ち。言い寄る4人の男達。英国の紳士、フランスのムッシュウ、スペイン・カスティリヤの王族、そして、イタリア人。それがまあ、見事に皆、ステレオタイプ化されている。物静かで余計なことは口にしないけど、少々慇懃無礼な英国人。美しきパリ、人生は恋、女性は全員大好きと歌い、おしゃれに気を使うフランス人。闘牛士とフラメンコダンサーをバックに、威風堂々と登場するスペイン人。お金も何もない、人1倍嫉妬深いイタリア人。いいの?そこまでやって?というくらい、デフォルメされている。
何がおかしいって、イタリアのオペラだから、全体はイタリア語なのだが、それぞれのしゃべるイタリア語が、これまた見事にお国なまりのイタリア語なこと。二重母音がわずらわしい英国人、音が鼻に抜けるフランス人。そして実は、それらを演じて(歌って)いるのはイタリア人で、イタリア人の役をやっていたのは英国人だったのだが、こちらはまた、まったく癖のない美しいイタリア語。
さらに、この1対4の人間関係のなかをするすると泳ぐのは、未亡人のおつきの若い尻軽フランス娘と、おっちょこちょいで間抜けなアレッキーノ(道化)。彼だけはベタベタのヴェネツィア弁で、お約束のように「二人の主人に仕えて、見事に失敗する」!

ツボにはまった。私は上演中ずっと笑いっぱなしで、周りがあんまりウケてないので困ったくらい。確かにこれは、まずイタリア語がわからないと全然わからないし(フェニーチェの字幕はイタリア語なので)、イタリア人でも、ふだんあまり外国人に接する機会がないとちょっとわからないかもしれない。

音楽には全く期待しないほうがいい。ここでは音楽は、あくまでも場を盛り上げるための効果音程度にあるようなもので、フラメンコからワルツ、モーツアルトからワグナーまで、ごった煮といった感じ。もっとも、音楽をよく知る人が聞くと、いかにいろんな要素を混ぜ込んでいるか・・・という辺りが面白いらしい。

で、さて、最後に見事、未亡人の心を射止めるのはいったい誰!?

客席にも仮装をした人がいて、カルネヴァーレにふさわしい夕べだった。

15 febbraio 2007
by fumieve | 2007-02-16 08:15 | 見る・観る
<< ヴィチェンツァ サン・ヴァレンティーノ >>