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デジデリオ・ダ・セッティニャーノ

デジデリオ・ダ・セッティニャーノ、ルネサンス彫刻における優美の発見
フィレンツェ、国立バルジェッロ美術館

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Desiderio da Settignano. La scoperta della grazia nella scultura del Rinascimento
Firenze
Museo Nazionale del Bargello
2007年2月22日-6月3日
http://www.desideriodasettignano2007.it/default.asp

15世紀中盤、建築ブームに沸くフィレンツェで装飾彫刻で最も評判の高かったのが、サンタ・トリニタ橋に工房を構えていた、デジデリオと、ジェリ兄弟。1461年にジェリ兄弟から独立するが、そのわずか3年後に36歳の若さで亡くなった。
初期ルネッサンス彫刻と言えばまずドナテッロが思い浮かぶが、デジデリオの修業時代は、ドナテッロの長いパドヴァ滞在と重なる。が、ドナテッロのフィレンツェ帰国後の1454-57年の間は、仕事をともにしたと思われる。特に、大理石彫刻を手がけなくなっていたドナテッロにとって、最も信頼できる後任者として、自分の仕事を任せられる相手だったらしい。
さて、そのドナテッロの作品はあくまでも正確で、ぶれのない精密で力強い線で構成されているとすれば、デジデリオの浮き彫りは、よく見ると多少荒削りの部分をうっすらと残し、それが微妙なぼかしを生み出している。
まさにパドヴァのマンテーニャ展でも見たように、ドナテッロを絵にしたのがマンテーニャであるならば、デジデリオは線が細くあくまでも優美で、その「聖母子像」は、ジョヴァンニ・ベッリーニを思わせる。ドナテッロが男性的、デジデリオが女性的だと言われるのも、こうして見るとなるほどとうなずける。おそらく1cmもない、わずか数ミリの彫りで描かれた聖母の流れるような衣装やベールの繊細さには思わずため息が出る。

いかにもちょっとなでてみたくなるような、いくつかの「幼児の頭部」像もすばらしいが、ベルリンから出展されている「マリエッタ・ストロッツィ肖像」(アットリビューション)もよかった。背筋を伸ばし、結い上げた髪と大きく添った額をベールで飾り、視線を軽く左に向けた顔は、正面から見ると、口元もきりりと屹然としている。が、横から見ると、その唇がわずかに上下に開いていて、今にもなにかしゃべり出しそうな親しみ深い表情に変わる。絵では決して表現できない、彫刻の醍醐味だろう。

デジデリオ・ダ・セッティニャーノ_a0091348_111627.jpg


作品数29点、と決して大きくはないが、見ごたえのある展覧会だった。
会場内の解説は全てイタリア語のみだが、入り口でもらったパンフレットには、全セクション、全作品の解説が、伊・英対訳で掲載されていたのには感心した。

5 marzo 2007
by fumieve | 2007-03-06 07:58 | 見る・観る
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