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ヴェネツィア ときどき イタリア

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ボローニャで狂言

teatro Kyogen
la pazza verità del mondo

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茂山狂言会の公演があるというので見に行きました。
欧州5カ国公演の一環で、イタリアはボローニャとローマと1日ずつ。
いつもの私ならまたローマに行ってしまうところですが、今回は、ボローニャは通常の公演の翌日、大学で「役者に会う会」というのもあるというので、そちらに決定。実は、狂言は昔から大好きで、日本にいたときは、一時、結構通い詰めたりしてたくらい。茂山狂言会の「本物」をイタリアで見られるなんて、めったにない機会。これは何があっても逃せない!と勢い勇んででかけました。
ボローニャの街中でも、まったくポスターの類も見かけないし、会場となるはずの劇場も、地図の範囲外でどこやら不明。夜9時からの公演だったのでやむなくタクシーを利用するものの、タクシーの運転手も劇場名を知らないどころか、ナビに住所を入れても出てこない!!!
迷いに迷ってようやく着いたものの、あまりにも人が少ない。・・・となんだか不安だらけ。開演時間になっても、会場内にすら入れてもらえないし、いったいどうなっているのか・・・。結局35分ほど遅れての開演。が、小さな劇場なのに観客の入りもさみしくて、せいぜい50人くらい。せっかくの公演なのに・・・もったいない。しかも、座席も、手書きで書き込まれたチケットを渡されたのに、真中がごっそり空席。どうせいっぱいにならないなら、自由席にしておけばいいのに。エライ人を招待などしてあったのに来なかったということかな~と邪推してみたり。
と、開始前まではともかく、不安・不満がいっぱいだったのですが、始まったとたんに、そこはさすがに、日本を代表する狂言役者さんたち。期待通り、いや、期待以上の演技で、もやもやをふっとばして、おおいに笑わせてくれました。

「棒縛り」と「濯ぎ川」。
どちらも、日本人にとっても初心者向きというのか、わかりやすい、とっつきやすい演目。とはいえ、こうして改めて見てみると、その表情や体の動き、声のトーンで、ずいぶんといろいろなことを表現しているということに、今更ながらびっくり。「日本人は無表情」だと思っている、西洋人から見ても、その豊かさに驚かされるのではないでしょうか。
原語、日本語による演技で、字幕・通訳はなし。それでも、要所要所ではしっかりと会場の笑いをとっていました。
プログラムには、あらすじと、とてもよくできた全訳が載っていたので、もちろん事前に目を通していれば、もともと難しい話ではないし、よく理解できたことでしょう。

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今日の、「役者さんに会う会」。ボローニャ大学、演劇専攻科(実践でなく理論の)の特別講演という形で行われた会には、若い学生を中心に15人からせいぜい20人の人が集まっていました。残念(というか、ちぐはぐ)なのは、学生たちは誰も昨夜の公演を見ていなかったこと。曰く「知らなかった」、「え?今日じゃないの?」「試験期間だから」・・・
ま、学生ってそんなものなんでしょうね。よく言えば「欲がない」し、悪く言えば「やる気がない」。根が欲張りな私は、あれも見たい、これも聞きたい、絶対に逃せない・・・と、精神的にいつもすごく忙しいけど。
というわけで、質問をしていたのも、主に先生方お二人。4人の役者さんが、基本的なこと、ちょっとした興味、今後の展開・・・などいろいろな質問に、丁寧に、でも、狂言役者らしく簡潔・明快に答えられていました。
面白かったのは、歌舞伎と違い、狂言役者の場合は、どの役も区別なく演じることができる、ということ。ある程度、体形や、役柄によるお互いの年齢など、あまり無理のある配役はしないそうですが、基本的にはどの役もできるように学んでいくとのこと。お互いにどちらの役柄・セリフも体に叩きこまれているからこそ、またお互いの、あ・うんの呼吸がぴったりと合っていくのかもしれません。そして、型が決まっているにも関わらず、実は、役者さんそれぞれの若々しさや熟練、個性などが、それぞれの役にしっかり個性を与え、より面白くなるのでしょう。もっともこれは、全ての演劇やダンスなどに共通することでしょうか。
今回の公演でも、ボローニャとローマでは役を入れ替えていくそう。ああ、ローマにも行くことにしとけばよかった!!!

12 aprile 2007
by fumieve | 2007-04-13 09:52 | 見る・観る
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