La festa di San Martino
11月11日、聖マルティーノの日。
むかしむかし、ある寒い冬の日。馬に乗った、裕福な家の青年マルティーノの前に現れた1人の物乞い。あいにく、恵んでやるものを持ち合わせなかったマルティーノは、せめて風しのぎにと、自分のマントを半分に切って与えた。すると、それまで寒くて凍えるようだったのに、急に日が出て暖かくなったのだという。寒さが本格的になり始めるこの11月に、数日間、太陽に恵まれた暖かい日が戻る、それをサン・マルティーノ日和と呼ぶのはそのため。
ヴェネツィアでは、この日は子供のお祭り。マントや冠をかぶった子供たちが、鍋のふたなどを楽器代わりに、叩いて鳴らしながら近所の家や店に入って、お菓子や小銭をせがむ。あれ?・・・そう、なんとなく、「ハロウィン」に似ている。時期も時期だし、どこかで何かが混ざったり取り入れられたりしているのだろう。サン・マルティーノのお祭りも、伝統的とは言うが、いったんは廃れたものを復活させたとも聞いたことがある。
おそらくふだんは、小学校や幼稚園で、サン・マルティーノの騎馬姿の絵を描かせたり、マントなどを作らせて一緒に近所を回ったりするのだろう。
今年は日曜日に重なったこともあり、サン・ジャコモ・デッロリオ広場(Campo San Giacomo dell’orio)で、いろいろ子供向けのイベントがあるらしい。と、市からのメルマガ週報に出ていたのでのぞきに行ってみた。
いつも、ふつうの住民が集ったりしゃべたりしているサン・ジャコモだが、さすがに人(子ども)がいっぱいいる。近づいてみると、子どもフリマ(?)あり、的当てボール投げあり、「君もサン・マルティーノになれる」(?顔のところの穴があいているもの)あり。
どれも手作り、手描きのもの。子どもたちが、サン・マルティーノのお菓子(後述)を作っているテーブルもある。
が、今日のメインは、「サン・マルティーノ」人形劇。かけ声がかかると、わーーーっと子供たちが集まった。幼稚園か、それ以下くらいの小さな子どもたち、広げられたビニール・シートの上に座る。このくらいの子どもたちは、こんなとき意外とお行儀がいい。・・・と思って感心して見ていたら、いっぱいになってから、トコトコと入ってきた女の子。
一番前の列、すっかり埋まっていたのに、しっかり男の子たちの間を開けさせ、ぐぐぐっと割り込んだ。さすが女!!!こうしてたくましく育っていくのね・・・。
そして、ここは相変わらずイタリア。子ども相手だろうが、待たせ時間が長ければ、前おきの話も長い。
ようやく始まった、「サン・マルティーノ物語」の人形劇。これがまた、舞台も人形もかたくななまでの手作り、ヘタウマ、というよりは、かなりヘタな人形も・・・。そして、バリバリのヴェネツィア弁。アイディアとしては悪くないのだが、録音された声&音楽は、かなり聞きづらい。
残念ながら、今日はサン・マルティーノはいないんじゃないか・・・というような、薄曇りだったが、それでも子どもたちは楽しい1日を過ごしたに違いない。
もう1つ、子どもたち(そして大人も・・・)にとってのこの日の楽しみは、「サン・マルティーノのお菓子」。毎年、だいたい11月に入ったくらいから、パン屋、お菓子屋、スーパー・・・とそれぞれの「サン・マルティーノ」を競う。ふつうのバター・クッキーの生地を、馬に乗った騎士の姿の型で抜いて焼き、その上をカラフルに飾ったもの、が定番。素朴(で地味)なお菓子の多いヴェネツィアで、一番派手なお菓子かも。
が、これもほんとうは、もともとはみんな、家で親子で作っていたものなのかもしれない、と気がついた。
11 novembre 2007