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今井由佳さん、買取賞受賞!第15回国際彫刻賞展

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カーザ・デル・パーネ、ミラノ
10月19日まで

XV° Premio Internazionale di scultura “Edgardo Mannucci”
Casa del Pane (Castello Ovesto di Porta Venezia), Milano
10-19 ottobre 2008

20世紀中盤、ヨーロッパの「アンフォルメル」(イタリア語で、Informale)派を代表する彫刻家の1人、エドガルド・マンヌッチ(1904-86)の名を冠した国際賞及びその入選作品展は、毎年、同氏が亡くなったアルチェヴィア市(中部マルケ州、アンコーナ県)で行われる。
第15回にあたる今年、ミラノ・ブレラ美術院在学および助手の今井由佳さんが、その中で最高賞の次にあたる「買取賞」を受賞した。
全国各地のアッカデミア(Accademia、美術院)関係者、すなわち、学生、卒業生や教員たちを含む多くの作品の中から、各・美術院の推薦を受けて出展された作品たち。学生だけでなく、すでに彫刻家として活躍する人々も参加できるのだから、その中で受賞はすごい!

今回のミラノでの展示は、その巡回展。

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建物の入口を入った階には、この展覧会のために新たに作成された、昨年の受賞者Sara Straolziniさん(ヴェネツィア)による作品が展示されている。小ぶりの彫像が複数、一方はツリーのようにぶらさがり、一方は建物そのものの円柱を囲むように並ぶ。さまざまな材料を組み合わせた不思議な物体たちはどれもなんだか愛らしく、この人はとても楽しげに作品を作っているのではないか、と思う。

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階段を上がって2階に上がると、今年の参加作品が並ぶ。それぞれ、そう広くない部屋だが、うまく部屋ごとにミラノ、ヴェネツィア、ペルージャ・・・という具合に、美術院ごとに展示されている。

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今井由佳さんについては、8月の合同展でも紹介したが、ここではまったく違った作品を展示している。

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2003年にミラノに来て以来ずっと追い続けてきたテーマ、L’arma dell’anima(魂の武器、または精神の武器)というタイトルの作品群で、今回がその集大成になる。
角や牙を持つ動物たち、トゲを持つ植物たちと違い、なぜ人間は自らを守るための武器を体に備えずに生まれてきたのか?・・・人間は心、精神の中に武器を持っているからではないか。それも、ほんとうの強さは、他人を殺すための武器ではなく、たとえば親が子供を守る力、ひとに対する思いやり、そういう強さ。そういう見えないものと、見えるものの境目はどこか。そして、それをどう「かたち」にするかを考えてきた、と言う。
動物の角や、植物のトゲの形、あるいはバレエ・ダンサーの緊迫した体の美しさをモチーフに得て作り上げたという作品たちの、たとえば先端の上昇する力など、その先、その「向こう」を見てほしい、と。
多くの個性的な作品の並ぶ彫刻展で、彼女の作品とそのコンセプトは、特に多くの人の関心と共感をよんだようだ。

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海外で、それもイタリア・ミラノのブレラ美術院での留学生活なんて、はたからみたら、なんだかやたらカッコいい。が、実際は、戦いの連続だったに違いない。日本にいたときには想像できなかったような不条理や、ばかばかしいような出来事。才能や能力がある人ほど、ときには周囲のやっかみやいじわるもあるだろう。また、若ければ若いほど、まわりに流されるのも簡単だ。
そんな中で、しっかりと自分を持って、信じていることを追求していくこと、そのためには自分を守る武器も必要になる。
このテーマを、ミラノに来る前からアイディアとして持っていたのかどうかはわからないが、こだわり続けてきたのもわかる気がする。
今回の集大成で一区切りつけて、今度はひょっとするとその武器に守られた内側が見られるのかもしれない。この先どうなっていくのか、ほんとうに楽しみに応援したい。

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会場は、ミラノ市内、大きなショッピング・ストリート、ブエノスアイレス通り(Corso Buenos AIres)のはじっこ、ポルタ・ヴェネツィア(Porta Venezia)にある、カーザ・デル・パーネ(Casa del Pane)。元・城門の建物だが、それにしては「パンの家」なんて変な名前・・・と思ったら、ミラノ・パン焼き職人協会が修復費用を負担したためらしい。

入場無料、期間が短いのでお早めに。

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9 ottobre 2008
by fumieve | 2008-10-10 08:02 | 見る・観る
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