人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

ヴェネツィア ときどき イタリア

fumiemve.exblog.jp

アートとテクノロジー、テクノロジーとデザイン

アートとテクノロジー、テクノロジーとデザイン_a0091348_1931296.jpg


Tokyo Fiber ’09 Senseware
Trienale, Milano
22-27 aprile 2009
http://tokyofiber.com

何かの目的があって、それを実現するための技術開発もあるが、ときには、開発先にありきで、さて、いったいどう使ったらいいものか?というものもできてしまうらしい。

フオーリ・サローネ(fuori salone, サローネ外=詳細は昨年のブログhttp://fumiemve.exblog.jp/d2008-04-21をどうぞ)を回るのは、今回は時間がなくて無理とあきらめていたのだが、面白そうな展覧会をやっていると聞いて、帰りの電車を遅らせることにして寄ってみた。

アートとテクノロジー、テクノロジーとデザイン_a0091348_19461972.jpg


日本の最先端技術、というとついつい電子機器関連、今ならとくに精密なロボットなどを思い浮かべてしまう。だが、日々研究と実験を重ね、夢のような製品を生み出しているのは、電子機器部門だけではない。
日本を代表する繊維産業8社による、「最先端の」人工繊維。今までできなかった「何か」ができる素材。アーチストやデザイナーがそんな素材に出会ったときにそれをどう使うのか。

アートとテクノロジー、テクノロジーとデザイン_a0091348_19325287.jpg


まずは、入口の、水滴で書かれたタイトル画にみな目が釘付け。超・高撥水の黒い布の上を、水滴がSensewareという文字を構成しては、また滑っていく。

アートとテクノロジー、テクノロジーとデザイン_a0091348_19341559.jpg


夢のような素材を利用して、何かを作る。ただ、ここではあくまでも実用化は度外視して、その素材の特徴を生かした「作品」を作るよう、ディレクターの原研哉さんは各クリエーターにお願いしたらしい。

アートとテクノロジー、テクノロジーとデザイン_a0091348_19471848.jpg


高温成型が可能な不織布を使った、マスクを使ったオブジェ。手すきの和紙のような、純白の紙のような和しのような素材でできたゆりかごに眠る赤ちゃんと、パズルのように組み立てられた洋服をまとうマネキン。
作家の専門はさまざま。アーチスト、ファッション・デザイナー、建築家やアート・ディレクター。しかも、さりげなくイタリアでもよく知られた名前が並ぶ。
カーボンファイバーを使った極薄の椅子は、建築家の坂茂氏。やはり紙で作った、きのこのようなちょうちんのような物体が並ぶ作品は、nendo。

アートとテクノロジー、テクノロジーとデザイン_a0091348_1935454.jpg


一方、そうはいってもやはりいかにも実用化したら便利そうなのが、パナソニックのチームによる「フキトリムシ」。巨大なはんぺんのようなしろものが、尺取り虫のようにテーブルとイスの間を這っている。

アートとテクノロジー、テクノロジーとデザイン_a0091348_1936305.jpg


緑の苔の庭の下に隠された、バイオ分解する網も、すぐにでも実用化の需要があるだろう。

アートとテクノロジー、テクノロジーとデザイン_a0091348_19372346.jpg


一言に「繊維」といっても、その応用は多様だ。織物や不織布はもちろん、特殊な糸となって、編んだりくっつけたりして、ネットや一種のスポンジのような弾力性のあるものから、光を通すブロックにもなったりする。
だが、実は完成品を見ただけでは、その「すごさ」はきちんと伝わらない。作品の間をするすると歩いて、「へえ」「ふうん」で終わってしまい、結局のところあまり印象が残らないだろう。
この展覧会のいいところは、各作品の横のボードに、そこで使われた「最先端」繊維の特徴と、作品のコンセプト、実現の秘密などが、図や写真を使って、技術的なことも含めてわかりやすく説明してあること。イタリア語・英語で書かれたボードは、壁にはるのではなく、低めの位置に斜めに置くことによって、大人にも子供にも見やすくなっている。

アートとテクノロジー、テクノロジーとデザイン_a0091348_1939197.jpg


さらに、その説明のパンフレットがそれぞれ自由に持ち帰ることができるようおいてあるほか、作品で使った「材料」の見本が、自由に手で触ってみることができるように展示されている。
まずは「おもしろい!」「なんだろう?」と興味をひかせ、さらにもう少し突っ込んで満足させる、あるいは、あとで家族や友人に「こんなものを見たよ」と言える、そういう工夫がある。

アートとテクノロジー、テクノロジーとデザイン_a0091348_1940649.jpg


見かけ倒しのイタリア、パッと見はやたら立派だが、説明が足りなかったり、字がやたら読みづらかったり、そんな展示の多いイタリアの展覧会でもぜひ見習ってほしい。
・・・と、ここまで書きながら、ひょっとすると、これは日本では当たり前の展覧会なのかもしれない、と思ったりするのだが・・・。
決して技術だけではない、デザインやアートだけでもない、日本はどっちもいいでしょう?と言っているような、そんな気がした。

もう1つ、同じトリエンナーレ会場で、Japan Design Selection展もやっていた。こちらも、去年はいわゆるハイテク製品がガラスのケースに収まっていてなんとなく冷たい印象だたが、今年はふつうの日用品や実際にさわれるものが多く、より多くのビジターの関心を集めていた。

アートとテクノロジー、テクノロジーとデザイン_a0091348_19432643.jpg


いいぞ、ニッポン!!!

アートとテクノロジー、テクノロジーとデザイン_a0091348_19441475.jpg


25 aprile 2009
by fumieve | 2009-04-25 19:27 | 見る・観る
<< 極東映画祭、ウディネ ミラノ・サローネ 2009 >>