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ヴェネツィア ときどき イタリア

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聖母被昇天の祭日、トルチェッロ島にて

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人口10数人、ふだんはひっそりと静かに、ときどき観光客を迎える程度のトルチェッロ島(Isola di Torcello)は、一年に一度、この8月15日に賑やかな日を迎える。
聖母被昇天の祭日の今日、そっくりそのまま、その名を掲げたサンタ・マリア・アッスンタ教会(Basilica di Santa Maria Assunta)に、散歩がてらお参りに行くのが、ヴァカンスに行かずこの時期ヴェネツィアに残っている人たちの習慣・・・なのかどうか、祝祭ミサのほか教会内でコンサートが開かれるのが恒例になっていて、住民たちや、知ってか知らずか、ガイド片手にやってきた観光客で教会がいっぱいになる。ちなみに私は、去年も来るつもりでいたのだが、食事をしているうちに間に合わなくなったので、今回は2年ぶり。
今年は、同教会のミレニアム(一千年紀)として、ミサも特別らしい。

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今でこそ、ヴェネツィア本島から遠く離れた過疎地のようになってしまったトルチェッロだが、もともと、このラグーナに人が定住し始めた、最初の拠点の1つだった。古くは、おそらくローマ時代のコロニーの1つであり、5-6世紀には人が暮らしていたことがわかっている。やがてヴェネツィアがヴェネツィア共和国として1000年以上続く、その起源がこのトルチェッロといえる。
したがって、サンタ・マリア・アッスンタ教会も、ヴェネツィア本島のサン・マルコ寺院より古い歴史を持つ。639年にラヴェンナ総督イザチオ(Isacio)の命により建立されたのが始まり。以後、824年に拡張された。
現在の構造は、1008年にトルチェッロ司教、オルソ・オルセオロ(Orso Orseolo)により改装された当時のもの。
ファサード前のナルテックス(拝廊)は、9世紀にさかのぼり、14世紀に増改築、さらに14-15世紀の間に、すぐ隣のサンタ・フォスカ教会(Chiesa di Santa Fosca)との間を結ぶ廊下となった。

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内部はシンプルな3廊式。側廊と中央を分ける円柱の柱頭、色大理石で幾何学模様を描いた床、壁の色大理石による装飾などは11世紀。

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聖職者席と信者席を分ける仕切りの、大理石の板(plutei)には、浅浮き彫りで、ライオンやクジャクなど象徴的な動物たちが形式化され、対象的に描かれている。これは10-11世紀のもの。
聖母と12使徒を描いたテンペラ画は15世紀初め、ヴェネト派の画家による。その上に乗っている、木造のキリスト磔刑図も同時期のもの。
後陣の半円蓋には、金地に浮かぶ聖母子像、その両脇の受胎告知は13世紀のモザイク、一方、下の段の12使徒は12世紀。
聖母と対面するようにある、後ろ正面の壁一面に描かれた最後の審判のモザイクは、典型的なヴェネト・ビザンチン様式で12-13世紀のもの。

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(Guida d’Italia, Venezia, Touring Club Italianoより)

最近、ビエンナーレで現代美術と、せいぜいそれを演出するルネサンス以降のお屋敷ばかり見ていたから、久々にじっくり見る大好きな中世のモザイクにちょっとどきどきする。
(このトルチェッロ含め、モザイクの旅シリーズを紹介したいと思っているのだが、いったいいつになることやら・・・。)

本日のプログラムは:
指揮 Riccardo Parravicini
ヴァイオリン Carlo Lazari
(オーケストラ 不明)

Antonio Vivaldi (1678-1741)
Sinfonia “Al Santo Sepolcro”

Baldassare Galuppi (1705-1785)
Sinfonia in Re maggiore no 1
Sinfonia in Re maggiore no 2

Antonio Vivalidi (1678- 1741)
Concerto i Do maggiore, per violino e orchiestra in due cori per la Santissima Assunzione di Maria

Franz Joseph Haydn (1732-1809)
Nel duecentesimo anniversario della morte
(Adagio- Presto, Andante, Minuetto, Finale-vivace)

ふと、12-3世紀の装飾に囲まれて聴くヴィヴァルディやガルッピ、そしてハイドンは、ロココ調のフェニーチェ劇場で聴く現在の作曲家の作品のようなものかな、と余計なことを思ったりした。
だが、不思議なことに、小編成のバロック・オーケストラ(と言っていいのだろうか?)の音は、決して大きすぎないこの聖堂にぴったりで、厚みのある合奏も、繊細なヴァイオリンやフルートのソロも、ちょうどよく耳に届いた。
事情により少し遅れていったので立ち見になってしまったのだが、やはり行ってよかった。

ちなみに隣のサンタ・フォスカ教会も建立は1100年ごろ、とあり、そろそろミレニアムを迎えるということになる。

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また、トルチェッロの最近のもう1つの話題は、「悪魔の橋(Ponte di Diavolo)」。運河にかかる、階段状の欄干のない橋が、長いこと工事中だったが、ようやく修復を終えて通れるようになった。といっても、渡った先は個人の農地が広がっているだけだったが・・・。

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なお、明日16日(日)も11:00から、ヴェネツィアのスコラ総大司教によるミサが執り行われるが、その様子は、RAI1で生中継される予定。内部の様子もじっくり映されるだろうと思うので、興味のある方はぜひ。

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15 agosto 2009
by fumieve | 2009-08-16 07:06 | ヴェネツィア
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