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ヴェネツィア ときどき イタリア

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第66回 ヴェネツィア映画祭・2

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The Road *コンペティション部門
John Hillcoat監督、120’、米
出演 Charlize Theron, Viggo Mortensen, Kodi Smit-MacPhee ほか

(写真は公式HP www.labiennale.org より)

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サバイバル自然(厳寒&食糧難)編。
2007年にピューリッツァー賞を受賞している、Cormac MacCarthyの同名の原作は世界各国で翻訳されベストセラー、同映画も今回の映画祭でもっとも期待の高かったうちの1つらしいのだが・・・。
正直に言って、この手のストーリーは苦手。
世界の終わりかと思わせる絶望の中を、なにか悪とであれ、自然とであれ、それと闘ってサバイバルしていく、そういうストーリーの映画というのになじめない。アメリカってこういう映画がよっぽど好きなんだな~、と思う。私はと言うと全く共感できないから、楽しめない。別に、地球の反映は未来永劫、と信じているほど楽観主義ではないけど、それでもやっぱり、心のどこかで自分の生きている間は大丈夫、と思っているのかもしれない。
なんでここまでしなければいけないのか、「愛の映画」というけれども、ええ~っ、そうかな、単なるマゾイズムと思ってしまう。
私が配偶者も持たず、子どももいないからわからないんでしょ、と言われれば、はい、そうですか、とそれまで。ともかく苦手の一言につきる。
雨風にあたり、泥にまみれながら、最後まで子どもの毛糸の帽子がフワフワなのはなぜ!?

Life during the Wartime *コンペティション部門
Todd Solondz監督、96’、米
出演 Ciarán Hinds, Shirley Henderson, Allison Janney, Charlotte Rampling, Ally Sheedy, Michael Kenneth Williams ほか

(写真は公式HP www.labiennale.org より)

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薬物中毒、幼児・少年愛、離婚・再婚、自殺、家族や友人・隣人の干渉と放任。
“The Road” がありえない(と願う)未来の遠い話とすると、こちらは今現在、もし自分の身の上に起きていなければ、すぐお隣さんのことであってもおかしくない、リアルなお話。
スーパー・マンも、美男美女も(少なくとも役柄上は)1人も出てこない、登場人物それぞれがみな、どこか弱いところを抱えていたり、変な行動に走ってみたり。誰も完璧でなく、間違いも犯す。そしてそれがしばしば、取り返しのつかない結果を生むこともある。
悲しいかな、それが人間の現実。だからせめて、笑い飛ばして元気になるしかない、そんな映画。

Ehky ya Scherazade (Schelerazade, Tell Me a Story) *コンペ外
Yousry Nasrallar 監督、135’、エジプト
出演 Mona Zakki, Mahmoud Hemeida, Hassan el Raddad, Sawasan Badr

(写真は公式HP www.labiennale.org より)

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エジプト、カイロの超高級アパートでラブラブ新婚生活を送るHodaは、政治を含めた社会問題を鋭く小気味よく切るテレビ番組のメイン・キャスター。女性は髪や顔をベールやブルカで覆っているのが大半のエジプトで、つやつやの黒髪に大きな黒い瞳、真っ白に輝く肌にシャネルの赤い口紅を塗った唇を見せ、そしてミニスカートで色気たっぷりの足も惜しげなく人目にさらしている。
仕事に私生活に、人生を100%謳歌しているかに見えた彼女だったが、新聞記者である夫が上からの圧力を受け、自分の出世に差し支えるから、その番組をやめろと言い出す。
お互いの仕事には干渉しない、という約束だったのに、自分が夫のために犠牲になる!?

だが、これ、実は日本も大差ないのではないか。表向きは男女平等でも、とくに同じ、または近い職場で夫婦が仕事をしている場合に、年齢を重ねるにつれ、夫の出世のために妻がいろいろな制限を受けるという話を、実際に聞いたことがある。

一度は泣いてわめいて、ケンカしたHodaも、したたかさ、賢さは夫の数段上。番組の趣向を少し変更することに活路を見出そうとする。政治とはカンケイナイはずの、女性たちの話を聞く番組に。が、何をとっても、やっぱり生活と政治は切り離せない。

こうして劇中劇で、何人かの女性の問題や悩みがオムニバス形式で語られる。まだまだ女性の立場が弱いエジプトで、虐げられ、暴力をふるわれ、不条理な目にあう女性たち。
だが、(少なくともここに出てくる)女性たちは強い。はたして哀れな男たちは逆襲にあう。それも、取り返しのつかないところまで。彼女らの復讐は怖い。

全編、Hodaの美しさがやたら強調されているだけに、最後のシーンは強烈。
かの国の女性問題を取り上げつつ、映画として十分楽しめる。

Desert Flower *「作家の日」部門
Sherry Hormann監督、120’、独
出演 Liya Kebede, Sally Hawkins, Timothy Spall, Juliet Stevensonほか

(写真は、www.filmpressplus.com より)

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ただ、タイトルに惹かれて見たいと思った、Desert Flower(砂漠の花)。
広大なモノトーンの砂丘に、ふわっと登場する明るいピンク色。まるで花が開いたように見えるのは、少女の服。黄色、オレンジ・・・ひらり、ひらりと子どもたちの色鮮やかな服が翻る。
ソマリアの(おそらく)典型的な村落に暮らしていたはずの少女Warisが、ある日、着のみ着ままでロンドンの町の中にふっと登場する。言葉もわからず、お金も全く持たないまま。
1人の哀れな少女が、その強運と、たぐいまれな努力で、それでも何度も挫折や障害にぶつかりながら、ほんとうの友人や理解者の力もかりつつ、やがて世界でも一流のトップ・モデルになる。
それだけなら、単なるサクセス・ストーリー、面白くもなんともない。だが、合い間合い間に少しずつ、なぜロンドンに出てきたのか、その理由が明かされていく。

アフリカの多くの国で、すでに法律では禁止されているにも関わらず、迷信や古くからの慣習だからという理由で、女子割礼(FGM)がいまだに多く実行されている。
Waris Dirieは、世界で初めてその事実と実態を、公の場で語った勇気ある女性。
この儀式は、アッラーの教えでも何でもない、ただ、女性に精神的・身体的に大きな苦痛とダメージを与えるだけの、極めて非人道的でかつ、差別的な行為であると訴え、根絶のための活動を続けている。
Desert Flowerは、彼女の名前、Waris のソマリア語での意味。
1998年に同タイトルの本を出版しており、映画はそれを元にしている。

あまりにも重いテーマにどーんと打ちのめされるが、紆余曲折、七転び屋起きの人生が程よいテンポで語られるために、見ていて飽きないし、何よりもその「絵」の美しさにひきつけられる。
原作は読んでいないが、これは映像化して原作を上回る、そうではなくても、原作と違う魅力を持つ作品として成功したのではないかと思う。

3 settembre 2009
by fumieve | 2009-09-04 08:32 | 映画
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