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ヴェネツィア ときどき イタリア

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第66回 ヴェネツィア映画祭・5

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Capitalism: A Love Story *コンペティション部門
Michael Moore監督、米、120’


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昨年のリーマン・ブラザーズ破綻を発端に、あっという間に、世界中に広がった経済危機。
その諸悪の根源、リーマンという1企業の問題ではない、米国の金融システムの歪みと問題点を指摘する、ルポルタージュ
資本主義の美名の下に、1%の人間が、残り99%の弱みに付け込み、わずかな財を食い物にし、ますます自らの富を肥やしていく。
いつものマイケル・ムーア監督らしく、自らの足で歩き、家を失う家族にインタビューし、金融機関の超高層本社ビルに向かってはトップに会いたいと果敢に乗り込んで、あっさり追い返される。

資料映像や写真、表やグラフをふんだんに使ってわかりやすく説明している様子は、映画というよりは雑誌などのよくできた解説記事のよう。
深刻で笑えない内容だが、そこはさすがにムーア監督、そこここにユーモラスを散りばめて、楽しく話を聞けるようになっている。特に、最後のシーンは圧巻。


White Material *コンペティション部門
Claire Denis監督、仏、100’
出演 Isabelle Huppert, Nicolas Duvanchelle, Issach De Bankoléほか


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アフリカ。
コーヒー・プラントを経営する仏系白人マリアは、たわわに実ったコーヒーの、目前に迫った収穫を待っている。
そこへ、正規軍がやってくる、戦争になるから逃げろ、という情報。黒人たちはみな、家財道具を持てるだけもって、車やバイクに乗って、あるいは徒歩で住みなれた土地から離れていく。
収穫に人が必要だから、あと1週間だから、と引き止めるのもむなしく、使用人たちもみな続々と旅立っていく。「しょせん、コーヒーはコーヒー。命は命。」
アフリカの、国や地域は映画の中では特定されない。だが、かの地の現実、干ばつなど天災による飢饉以外にも、内戦という状況がまた、こうしてせっかくの実りをもだめにしてしまうこともある、という現実。
そして何よりもしんどいのは、年端のいかぬ、そう、小学生高学年からせいぜい中学生くらいの子どもたちのギャング軍。完全武装した彼らは、へたな大人たちよりずっと凶暴で残酷だ。
「戦争」を大義に、次々に人に裏切られていくマリア。彼女の絶望はまた、アフリカ大陸の嘆きそのものでもある。はたして、アフリカに救いはあるのか・・・。

(各映画の写真は、公式HP www.labiennale.org より拝借。)

黒澤明監督 生誕100周年記念シンポジウム

来年、2010年3月23日に生誕100周年を迎える黒澤明監督の偉業をあらためてしのぶ、シンポジウムが行われた。
世界のクロサワと呼ばれ、世界中であらゆる賞を受賞してきた黒澤監督だが、アキラ・クロサワの名を最初に世界に知らしめたのは、1951年、ヴェネツィア映画祭で「羅生門」が金獅子賞を受賞したとき。
だから、ヴェネツィア映画祭側は今でもそれが自慢だし、実際、そのあとも54年には「七人の侍」で銀獅子賞、そしてのちに82年には栄誉獅子賞を取っている。
こちらの黒澤研究の批評家などが名を連ね、正直のところあまりクロサワ映画を見ていない私はついていけるか心配だったが、むしろ、撮影裏話や、「羅生門」受賞時のエピソードなど、軽い思い出話に終始していたため、私でも十分理解できた。
とくに、スクリプターとして長く黒澤監督とともに仕事をしてきた野上照代さんもパネラーとしていらしていて、彼女のお話がやはりいろいろと面白かった。もっとも、そのほとんどは「天気待ち」という著作で書いていらっしゃるそうで、遅ればせながらぜひ読んでみたいと思った。

(写真下は、「天気待ち」の英訳版に野上さんのサインをもらってゴキゲンな塚本晋也監督。一番上は、その後のレセプションであいさつに立ち、再びそのサイン本を嬉しげに見せている同監督。)

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6 settembre 2009
by fumieve | 2009-09-07 14:39 | 映画
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