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ヴェネツィア ときどき イタリア

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第66回 ヴェネツィア映画祭・10

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(写真上:2011年完成へ向け、映画祭会場新館ただいま工事中)

A Single Man *コンペティション部門
Tom Ford監督、米、99’
出演 Colin Firth, Julianne Moore, Matthew Goodeほか


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1ミーハーとしてちょっと楽しみにしていたのが、グッチなどのデザイナーを経て、現在は自分の名前のブランドを持つトム・フォード氏による初監督作品。

カルフォルニア郊外の、いかにもそれらしいファミリー仕様の家の並ぶ住宅街の中に立つ、木とガラスのモダンな家。
1mmの乱れもなく白いワイシャツがぴしゃーっと並んだ引き出しから、その1枚を取りだし、身につけ、ネクタイを締める。すでにピカピカの黒靴に、さらにブラシをしゅっ、しゅっとかけ、車で出勤する。彼はかつて愛したパートナー、ジムを交通事故で突然失ったショックから立ち直れず、自らも生きる価値を見失っていた。
黒ぶち眼鏡で神経質なまでに完全防備した英国人教授、過去をひきずる彼の暗さが、カルフォルニアの明るい日差しの下では不釣り合いで、こっけいに見えてしまうほど。だが、その「絵」1つ1つ、ほんとうに1カット1カットがさすが、うなるほど、見事に美しい。

自らもゲイであることを公言するトム・フォード氏が、20年近く前に読んだ同名の原作を映画化した。
説明くさい部分が一切なく、せりふも少ない。背景や雰囲気、表情がコトバとなって語っていく、ミステリーではないのだが、まるで心理サスペンスのような作りが印象的。

Le Danse – Le Ballet de l’Opéra de Paris *オリゾンティ・イヴェント部門
Frederick Wiseman監督、米、159’


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心身ともに疲労がたまってきて、最低限、コンペの作品以外の映画を見る時間も気力もなくなっていたのだが、これはどうしても見ておきたいと思った。
アメリカン・バレー・シアターなど、バレエ、舞台の撮影で知られる、Frederick Wiseman監督による、パリ・オペラ座バレエ団のドキュメンタリー。
世界でも有数なバレエ・カンパニーの1つ、オペラ座の舞台裏をくまなく見せる。ダンサーたちの、アップの時間から、ダンス、それもソロからペア、そして群舞の練習風景。リハーサル、ゲネプロ。だが、バレエの舞台を作り上げるのはダンサーだけではない。衣装や道具係、照明や音楽はもちろん、事務方、そして劇場の清掃係だってその1人。
全部で140時間撮影したそうだが、その140時間のあいだに、「くるみ割り人形」からピナ・バウシュの作品まで、実にいくつもの作品の練習と組み立てが同時に行われているのに感心する。さすが巨大カンパニー。

フィクションがほとんどの映画を見続けている中で、「作った」部分のないドキュメンタリー映像は新鮮に目に映るのと同時に、ほとんどが具体的・リアルな表現である映画に対して、体のみで「言葉」を使わない、ダンスという一歩抽象的な表現もまた、非常に新鮮に見える。
これはやはり、生で見たい・・・。

3カ月かけて撮影した140時間のフィルムから、編集には1年かかったという。どこを切り取っても、バレエ好きな人にはたまらないお宝映像だろう。

上映後、監督やバレエ団長など同席した関係者の、あいさつと簡単な質疑応答があった。

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(各映画の写真は、公式HP www.labiennale.org より拝借。)

11 settembre 2009
by fumieve | 2009-09-12 08:30 | 映画
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