(この原稿は、数年前にまとめたものに、加筆・訂正を加えています)
「モザイクの旅」シリーズ
第1回:
ラヴェンナ~春・1 サン・ヴィターレ教会
第2回:
ラヴェンナ~春・2 ガッラ・プラチディア廟
前回:
ラヴェンナ~春・3 サンタアポッリナーレ・イン・クラッセ
この町の大聖堂は残念ながら、そこに保存されたいくつかの石棺を除き、この時代の痕跡をとどめない。
だが、さすがモザイクの都、ラヴェンナはここにも、小さなモザイクの宝を残すことを忘れなかった。
司教区美術館の展示室を通りぬけてたどり着くのは、サンタンドレア(Sant’Andrea
、聖アンドレア)礼拝堂。
ピエトロという名の司教によって建てられたのだが、5世紀中盤から6世紀後半にかけて存在した3人のピエトロ司教のなかで、現在は、ピエトロ2世とする説が有力。彼は494年から59年まで、ここの司教であった。
正面アブシスには、青い空の中央に浮かぶ十字架と、それを囲む星。シンプルな十字架は、前回紹介したサンタポッリナーレ・イン・クラッセのアブシデと似ているが、濃い青に星が散りばめられた様子は、
ガッラ・プラチディア廟の天井も思い起こす。
アーチには、中央が若きキリスト。メダル型に両側に聖人たちが並ぶ。
天井は、IとXを重ねた、「イエス・キリスト」を意味する記号を支える4人の天使と、それを囲むように、4人の福音書家のシンボルである、ライオン、鷲、天使、牛が雲に浮かんでいる。
ドアの上にいるのは、「戦士キリスト」。鎧をまとい、手には十字架を持ち、両足で、ライオンとヘビを踏みつけている。翼のはえたライオンは、聖マルコのシンボルだが、ここでのライオンは「力」の象徴。ヘビは「悪」の象徴。
もともとは十字型の礼拝堂だったらしい。そういえば、ガッラ・プラチディアも十字型プランだ。
一辺の奥は、実が豊かに実った木に止まる鳩。
一方、天井は、金地を背景に、鳩、くじゃく、鴨・・・と、いろいろな種類の鳥たちが順不同・向き不同、といった感じに並んでいる。カワイイ・・・。
現在は修復工事中のため、残念ながら見学不可。
5 novembre 2009