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ヴェネツィア ときどき イタリア

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「カルラの小さな花たち」アルド・グラッツィ展

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ギャラリー カテリーナ・トニョン・アルテ・コンテンポラネア
2月27日まで

i fiorellini di Carla
Aldo Grazzi
Caterina Tognon Arte Contemporanea
San Marco 2746 (campo San Maurizio)
Tel. 041 5207859
www.caterinatognon.com
13 dicembre 09 – 27 febbraio 2010

ギャラリーの個展オープニングに行くのは、実はあまり得意な方ではない。
いや、これがもし仕事なら、完全にお仕事モードに切り替えられるし、あまり余計なことも考えず、むしろ、作家やギャラリスト、キュレターに直接会えたり、話を聞けたりするのは絶好の機会だし、いくらでも積極的に出かけたいくらい。だが、ヴェネツィア内のギャラリーのオープニング・・・となると、地元の関係者ばかり、お互いに全員知り合い同士、みたいな中で、その中にほとんど知人のいない私は、とても居心地が悪い。
気が重いなりにこうして誘われていくつか行くと、見たような顔のひともちらほらいるのだが、お互いに初対面一発で覚えられるほどのインパクトもなく、なんだかかえってぎこちなくなってしまうことすらある。
それでも誘われれば、行ってみようか・・・と思うのは、その友人に会いたいという不純な動機と、何か面白いもの(作品)に出会えるかもしれないという期待と、半々くらいかもしれない。

招待状の写真を見ても、さっぱりわからなかったアルド・グラッツィ氏の作品には、いい意味で軽く裏切られた。





サン・マウリツィオ広場(Campo S.Maurizio)広場から直接入る路地にある建物の3階(2° piano)。まず、路面に面していないギャラリーというのも意外だったが、入ると、ヴェネツィアの建物の路面ではあり得ない、天井の高い部屋。白い壁、左右に作品が並ぶ。
半透明のナイロン糸に、ガラスのビーズを十字に交差させ、それが無数にくしゃくしゃとなった束が、1本の釘にひっかかって垂れ下がっている。

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あるところは1色のビーズだけを使い、あるところは多色使い、またあるところは同系色でまとめ・・・と、束によって色が異なっているために、全体では明るく軽やかな印象を与えている。
細長~い円錐形の白い束に、十字とも花とも見えるビーズが散る様子は、ちょうど季節柄もあって、クリスマス・ツリーのようにも見える。
それにしても細かい仕事だ。数ミリ単位の小さなビーズに、2本の糸が通り、しかも動かないようにその糸で結んで留めてある。どんな思いで、どれだけの手間をかけてこの仕事をしたのだろう・・・座って1つ1つビーズをつけていくのは、たとえば魚とりの網を編むような作業なのかと思ったが、そうではなくて、これは織物の原理を利用して作られているそう。
なるほどそういえば、その先の部屋には、ビーズの「織物」を作品にしたものもあった。

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「カルラの小さな花」、と名付けられたこの作品群、幻想的でかれんで、同行の友人が「日本人の若い美大生の作品と言われても驚かない」とコメントしていたが、確かに、非常に「今日的」な作品であり、1954年生まれの男性アーチストの作品というのはやや意外。
だが、このアルド氏は、若いころからシンプルで小さなモジュールから生まれるなぞとき・予言的なものを好んできたらしい。80-90年代の作品は、なつかしインベーダー・ゲームのような絵が多かった。
その、キャンバスに自分の手で描いていく均質の四角や三角から、ビーズという、色は豊富でほぼ均質な大きさを持つ媒体を見つけたときに、アーチストとしての表現力に、ひとつまた大きな可能性を加えることになったのだろう。

写真はすべてギャラリーのHPから。
ただしこれ、写真ではなかなか本来の姿が伝わらず、もどかしい。

12 dic 2009
by fumieve | 2009-12-13 11:01 | 見る・観る
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