Dieci Inverni(十の冬)
監督 ヴァレリオ・ミエーリ(Valerio Mieli)
出演 イザベッラ・ラゴネーゼ(Isabella Ragonese)、ミケーレ・リオンディーノ(Michele Riondino)
www.dieciinverni.it
ヴェネツィアの冬。
サン・マルコ広場も、リアルト橋も出てこないヴェネツィア。
1999年、大学でロシア文学を学ぶために父親の住む家から出てきたカミッラ。リュックのほかに、なぜか柿の枝を抱えたシルヴェストロ。
今は9月中旬から慌ただしく始まるが、その年には確かにまだ、大学は11月から始まったはずで、ということは十分「冬」だったはず。
暗く寒い、ヴァポレット(水上バス)で「島」に移動中に出会う2人。ちょっと変わった出会い、気になる2人、だが何も起こらない。よくある学生生活。すれ違い。
今度こそ、が、うまくいかない。
そうして9回の冬が過ぎていく。
これを見たのが、ちょうどあの大雪の日で、途中に出てくる冬のモスクワも、雪に埋もれたロシアのどこかの村も、なぜか目になじみすぎて「寒そう!」な効果を与えないくらいだったのはご愛嬌。
ふだんのヴェネツィアの冬は、雪はめったに降らない。その冬を見せるのに、常夏の地、あるいはヴェネツィアの夏の「明」ではなく、ロシアの冬と対比させているのは絶妙。グレーを見せるのに、ヴィヴィッドな色ではなく白を背景においてみせるような味わいがある。
そういえばこの映画、そもそもほとんど青空が見えない。
気楽な学生生活を謳歌し始める彼。一方、高すぎた志の代償なのだろうか、大きな飛躍を試みたはずが、大きな傷と挫折を負う彼女。そしてちゃらんぽらんでいい加減なよくある男の子に見えた彼が、いつの間にか着々と人生を歩み始める。絶頂とどん底を繰り返す彼女と、糸がたぐりよせられるようで、なかなか寄せられない。
行き違い、再会、意地と、失敗することへの恐れ。もどかしい2人。
9月のヴェネツィア映画祭で上映されたのだが、残念ながら見逃した私は、ヴェネツィアの映画ということもあり、どうしても見たいと思っていた。
撮影には、以前紹介した
オステリア「ラ・ズッカ」も使われている。
評価は分かれるだろう。
はっとするほど美しい映像があるわけでもない、美男美女でもない普通の人の普通の生活の、心の機微を追った映画は、ばたばた劇や色気を全面に押し出すものばかりなイタリア映画の中では異色。フランスの映画ならありそうな感じで、私は好み。そんなフランス映画にはなさそうな結論も◎。
これもヴェネツィア。機会があったらぜひ見てみてほしい、と思う。
22 dicembre 2009